第3話
その日が来た。
黒髪さんが一家無理心中をする日が。
「なんか久々だな。こんな緊張する依頼は」
「そうだね。ボクもこんな依頼はあの日ぶりだから」
「確かにそうかもな」
少年はコロシヤに来ていた商人とソファーに座り話していた。
「で、その黒髪さんは?」
「多分、もうすぐ来るよ」
「……道具に指紋も糸くずも何もかもついてないね。よし」
「今回ばっかりはちゃんとしないとな。あの日の二の舞になっちまう」
「本当にあの日はもう九死に一生だったよ。だって」
商人が何かを言おうとした時だったドアからノック音が聞こえてきた。
女性が「はいはーい」と言いながらドアに向かいドアを開けるとそこには予想通り黒髪さんがいる。
「失礼します。約束の日だったので」
「おう。待ってたぜ」
黒髪さんがソファーに座っている少年と商人のところまで来ると深々と頭を下げる。
「今回の件。本当にご助力の方有難う御座います。私一人では実現できずに一人死んでいたことだと思いますので」
「なんだ、急に?」
「そうだよ。こんな子供相手にそんなにならなくていいんだよ」
「………商人。それマジかよ。そんなこと思ってたの?」
「あ、………思ってないよ!」
「今の間が何よりの証拠だと思うよ」
二人がそんな傍から見たら姉弟のなんの取り留めのない会話をしていると黒髪さんがくすっと口元を隠しながら静かに笑う。
「やっぱり、あなたたちは可笑しいですね。けどこの状況でそれだの余裕があるのは凄いです」
黒髪さんはどこか羨ましそうに少年と商人を見る。
そんな黒髪さんに少年と商人は何も言わずソファーから立ち上がり奥から商人がそれらしいアタッシュケースを一つ持ってくる。
「そんなうれしいことを言ってくれるあなたにプレゼントだよ」
「これって」
「今日、使う自殺道具だ。いいか、家に着いて自殺するって言うときにあけろよ。それまでは絶対にあけるなよ」
少年のその言葉を受けまじまじとそのアタッシュケースを見る黒髪さん。
「この中に入っているんですね。わかりました。直前まで開けません」
「あんがと。じゃあ、さようならだな」
「そうだね」
そう少年と商人が言うと黒髪さんはこくっとうなずき笑顔になった。
「本当にありがとうございました。お金は後日指定されたところに」
そう言って黒髪さんは少年や商人の返事を聞かずにそのまま振り返りもせず部屋を後にした。
「……ふぅ。これでボクたちの仕事はひと段落だね」
「そうだな。後はあのお客さんしだいだな」
少年と商人はまたソファーに座りドアを見つめながらそう呟くように言った。
自分たちの役目は終わったと。
黒髪さんはコロシヤを出た後、寄り道せず真っ直ぐに家へ帰って行った。
無駄に外に長くいては疑われるしこのアタッシュケースに関しても何を言われるかわからない。しかし早く帰ってきさえすればこの家族は黒髪さんに対して一切の興味を示さない。
普段はそれが辛くてしょうがなかった。しかし今日にかぎってはそれが功をそうしたと言っても過言ではないだろう。普段、外でもそんなに目にすることのないであろう立派過ぎるアタッシュケースを何の説明もなく家に持ち帰ることに普通だったらなにそれ?と、どんな相手だろうと興味を示すだろう。けどこの家族は相手に興味がなかったらその持っているもの話していること生きていること死んでいることすべてに興味を示さないのだ。
「ただいま」
形だけのあいさつを済ませ自分の部屋へと戻る黒髪さん。
家は割かし金を持っている方だったので部屋はだいぶ広くある程度の家電と生活必需品は部屋の中にそろっていた。
つまり、部屋から黒髪さんが半日や1日出なくても生きられるので不思議に思わなかったし、黒髪さんは休日はだいぶ引きこもっていた身なのでそれも重なりすぐに部屋に戻ることに関しても疑がいなど何一つなかった。
「………夜になったら殺そう」
黒髪さんはアタッシュケースを床に置くと同時に誰にも聞こえない声でそうつぶやいた。
それから時は過ぎお風呂に入り、なぜか家族全員そろっての夕飯を食べ、各自自分の好きなことをやっていた。
そしてさらに時間は過ぎ普段家族が寝る時間になった。
この時にはすでに両親は深い眠りに入り、姉と兄は子作りに励み、人殺しの妹はがりがりと自分の指を延々と噛み、売春の運営のようなことをする妹はゲスい顔で売春で得た金を数えていた。
「今しかない」
黒髪さんがそう言ってアタッシュケースを開く。すると中には銃が一丁に小太刀のようなものが一つ入っていた。
「これでか」
そう呟きつつも銃と小太刀を手に取り両親が寝ておる部屋向かう。
黒髪さんの部屋を出て右方向にある階段を下りそのまま、まっすぐ行くとある部屋がある。そこが両親の就寝場所だ。
「……これで解放されるんだ」
黒髪さんが呟きながらドアを開け敷布団で寝ている父の上にまたぐ。
そして銃をポッケにしまい小太刀を両手で持ち大きく振り上げる。
「死ね。クソが」
黒髪さんはそう言って父親の喉元にゴリッキュっと音が鳴るほどに勢いよく木立を振り落した。
人は刺されるとマンガみたいにずぶっとはいかないんだなと、黒髪さんは小太刀を左右に動かしながら思ってた。
「……もう、うるさいわよ」
すると隣で寝ていた母親が寝ぼけつつも起きてしまった。
黒髪さんはそんな母親にどうすることもできずに銃を迷いなく撃った。
「……いっ」
銃を撃つことが初めての黒髪さんになぜここまでの正確性が生まれたのだろうと思うくらいに母親の脳を一発で打ち抜いた。
銃の音は音を軽減するものがついていたらしく音はまったくもって無音に近い状態だった。
「まずは一人。そして」
父親ののどに刺さっていた小太刀を右に勢いよく動かしまずは半分を切り落としそのまま勢いよくダリに動かし胴体から首を切断する。
「二人目。後は四人」
黒髪さんのその場を後にし階段を再びのぼり今度は自分の部屋の隣である兄の部屋にいく。
するとドアが少し空いていて中の様子が見えてしまった。
それは吐き気を模様すような光景だった。
こんな光景は早く消したい。そう思い黒髪さんはドアをけり大袈裟に中に入る。
「……え? そ、そのぽたぽた垂れてるのって何?」
「おいおい、まさか」
姉と兄をすぐに子作りをやめそして、比較的冷静に状況を確認し動揺し焦る。
そんな姉と兄を躊躇なく切り殺した。
今度は胸部を横に切り裂き心臓と思われるところを確実に狙った。
もちろんその分、血の量が尋常ではなかったが黒髪さんは満足していた。
そして残るはあの妹二人である。
「………」
黒髪さんはすでにもう何もしゃべらなくなりただ人を、家族を殺すためだけに動いていると言っても過言ではない状態だった。
そんな黒髪さんが妹二人の部屋に着き中に入ると売春の妹はただその場で硬直し人殺しの妹はなぜか血を見るなりニヤニヤとしだした。
「おね、おね、え? お姉ちゃん? なにそれ」
「刃物と銃」
「いや、そんなことわかってるよ。問題は今この状況だよ! なんで銃を私に向けてるの?」
黒髪さんは売春の妹の問いに少し間をおき答える。
「………殺すから」
そう言って黒髪さんは銃を撃ち売春の妹の頭部に銃弾が当たる。これが俗にいうビギナーズラックなのかもしれない。
そしてもう一人の人ごろぢの妹はと言えば、
「私、人に殺されるんだ」
なぜか今にも殺してくれと言わんばかりに興奮していたのでそれにこたえるように黒髪さんは小太刀で頭部を切り裂いた。
「うれ、うれ………」
人殺しの妹はそう言って床に倒れて行った。
家族全員を殺し残るはただ一人。
黒髪さん本人だけとなった。
「なんかあさっりしちゃってるな」
一人リビングの真ん中に座る黒髪さん。
「………なにやってるんだろうな。私は」
黒髪さんが涙を流しながらそう言い。銃を口に入れそのまま銃を自分に向けて撃った。
そのまま力なく後ろに倒れていく。
そうしてこの家族全員がやっと死亡した。




