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コロシヤ-あなたの自殺手伝います-  作者: asit
リーマン賛歌-飛び降り自殺-
3/74

第2話

「そんなのはもう決まっている」


少年はやけに自信ありげに言った。

そんな少年の姿を見て女性は呆れたようだった。

そして何事もなかったように朝食を再開させる。


「はいはい。朝御飯食べちゃお」


「おい。素敵な素敵な自殺プランをどうして聞こうとしない」


少年は不機嫌そうに言う。

しかし女性は少年のそんな言葉をあそ。と言って流し1人で美味し~。と大袈裟にリアクションしながら食べ進める。

そんな女性を見て羨ましそうにする少年。

それを見かねた女性が少年に救いの声をかける。


「ほら。食べなって」


「い、いらん!」


少年は聞いてくれなかったことへの反抗心か少年自身が持つ変なプライドがあるようで女性の救いの声を払いのける。涙目で。


「そんなになるぐらいだったら食べればいいのに」


「別にお腹すいてないし」


少年は涙目をしながら必死に女性の言葉を否定する。



そんな朝御飯から6時間程度の時間が過ぎた。

外は夕日で照らされ始め学生たちが賑やかに町を歩いている。

そんな中をすり抜けて商店街にある八百屋と魚屋の間の奥へ行くと“シニタガリ”と書かれた木でできた看板らしきものが見える。

その前に少年と女性は来ていた。


「ここに来るの久しぶりだな」


「どれぐらいぶりだっけ?」


その店構えはどこか不気味でただでさえ店と店の間にあって客入りが少ないであろうにその店から出る禍々しいオーラでさらに客入りが減っている気がする。

なのに潰れないのには訳があった。


「ま、そんなことより早く中に入るか」


「そんなことって何よ。確かにそんなことだけどさ」


女性はぶつぶつと文句を言いながら少年が入るのに続いて入る。

入ると店の中はいたって普通だ。内装だけは。

ただ問題があるとするならば確実にコレだろう。


「いらっしゃ~い♪ようこそ殺人・自殺グッズ専門店シニタガリへ」


「よ、久しぶり」


「お久しぶりです。商人」


女性から商人と呼ばれたその人はレジの内側に座っていた。

見た目は女性か男性かわからない程に中性的で声と話し方だけ聞けば女性と思ってしまうが商人いわく男性らしい。

そしてそんな商人のお店の中の商品はいろいろな殺傷グッズで棚が埋め尽くされている。

これが客が少ない原因の一つになっているのは間違いない。


「あー!ボクちゃんだ。本当に久しぶりだね」


「誰がボクちゃんだ!俺は見た目通りれっきとした大人だ」


そんなやり取りを見て女性がお約束なように必死に笑いをこらえる。

そして少年はそんな女性に対してまたまたお約束なようなことを言う。


「後で覚えていろよ」


「まぁまぁ。落ち着いてボクちゃん」


「だーかーら」


少年のそんな言葉をよそに商人はレジ下からごそっと何か大きいものを取り出す。


「ほら。せっかく用意してあげたのにいらないのかな?」


商人が小悪魔的な表情をしながら少年に問うと少年は今までの態度を180度変えてレジ前で土下座する。


「スンマセンした!それめっちゃ欲しいです!」


商人はイタズラっぽく笑いながら答えた。

そんな商人の姿は男性と知っていても惚れてしまう程かわいかった。

もちろん少年もそんな中の1人で顔を赤くし目線を商人からそらす。


「はい。じゃあこれ結構したからいつもよりは多めに払ってもらうからね」


「いつも値段はバラバラだろう」


「あれぇ、そうだっけ?」


商人はそれはもう可愛くとぼけてみせる。

こんなことをしてもあざとく見えないのは商人が男だからだろう。


「はい。ちょうどいただきました」


「ちょうどいただかれました」


商品はもうすでに用意されてあったはずなのにここまでたどり着くのに結構な時間がかかった。

その間、会話にも参加せずにいた日性は店に並んでいるいろいろな殺傷グッズをなぜか羨ましく見ている。


「そんじゃ帰るわ。またな商人」


「うん!またねー」


そんな会話を商人と少年がしていても女性の殺傷グッズにたいする集中は途切れなかった。

なので少年が女性の頭を一発軽く叩く。


「ほら。帰んぞ」


「あ、ちょっと待って」


頭を叩かれてやっと集中が途切れて少年の存在に気付く女性。


「またねー」


そう言って2人は店から出て行った。

外に出ると夕日はすでに沈みかわりに外を照らしていたのは月だった。

そんな月を眺めながら少年は誰にも聞こえない声で言う。


「汚物が」


月を眺めている少年の眼にはなぜだが知らないが確かに憎悪がうつし出されていた。



少年と女性が雑居ビルにある“コロシヤ”に戻ってくるとドアの前に見知らぬ主婦らしき女性が立っていた。


「おい。こんな夜遅くになんかうちに用でもあんのか?」


少年は主婦に話しかける。

話しかけられた主婦は急に後ろから声をかけられ驚いてビクッと体をたてに揺らす。


「わ、私のことでしょうか」


主婦は恐る恐る少年の姿が見えるように首から上を180度回転させる。

そして少年を見たときの主婦の顔はいろいろと複雑な表情だった。


「えーっと」


さすがにこの状況を見てられなくなった女性が主婦に話しかける。


「ココに何か御用ですか?」


女性は“コロシヤ”と書かれた紙が貼られたドアを指さしながら言う。

そして女性が話しかけた途端主婦の表情があからさまに明るくなった。

そんな状況に黙っていられないのが少年であるけど


「おい。なん」


「一回中に入りますか?」


少年の訴えは呆気なく女性によってかき消される。

そして主婦までもが少年の訴えを聞いてないフリをして女性だけの話を聞いて女性の問いに答える。


「はい!入れるのなら」


そして少年と女性と主婦は部屋の中へと入って行く。

少年のテンションと機嫌が駄々下がりなのは女性と主婦の間での暗黙の了解と今さっき目線会話で決めた。

そんな中主婦を部屋のど真ん中においてあるソファーに座ってもらった。

女性は普段少年が座っている椅子に座り、少年は1人おとなしくいつも女性が座っている椅子に座った。


「それではお聞きします。あなたはなぜここに来たんですか?」


朝の男性は例外だが基本的にまずは何しに来たのを聞くのが“コロシヤ”のルール。

たまに本当の殺し屋と勘違いしてやってくる金持ちや政治家やらが噂頼りに来ることがある。

なので最初に相手がどんな人であろうと何をしにやってきたのかを聞かなければ後々面倒くさいことになる。

そして目の前にいる主婦もまた勘違いをしてきた客だった。


「実は今、夫と離婚協議中でして今度やることになった裁判での弁護をお願いしたいなと思いまして」


どうやら噂は本当の殺し屋だけではなくて新たな職業の弁護士にまでなっていたらしい。

さすがに女性は戸惑った。

本当の殺し屋に間違われることは店名からしてよくあることだったが弁護士に間違われたのは初めてだった。

そしていろいろ考えた女性はやっと話し始める。


「あのお客様。当店は弁護士事務所ではないですよ」


主婦が女性よりも長く無言になる。

その時間は5分程度で開ける。

もちろん主婦は驚きと焦りと恥ずかしさでおかしくなる。


「あ・・・いやなんかそのえっと」


「お客様。落ち着いて」


女性が主婦に何を話しかけても無駄な状態までに主婦はパニくっていた。

その後主婦はしばらくパニくっていたが何とか少し冷静さを取り戻した。


「では今日をありがとうございました」


「えっ!?ちょっと」


主婦は冷静さを取り戻した途端に女性の言葉にも耳を傾けず勢いよく部屋から出て行ってしまった。

流石に女性は呆気にとられていたが主婦が出てってしばらくしてから事の顛末をしっかりみていた少年が茶化してきた。


「わー。お客様が逃げってたー」


「う、うるさい!」


あからさまな棒読みの茶化しに女性は泣きたい気分だった。



「ってなことが昨日ありましてね」


時は進み今日は目の前に座っているスーツの男性の自殺結構日。

つまりは昨日からしたら明日。明日からしたら昨日。今日からしたら今日。そんなややこしいいつも通りの日。

けどそんないつも通りの日に今目の前に座っているスーツの男性が死ぬ。

誰かが死ぬことはいつものことだが目の前の人が死ぬのはいつも通りではない非日常。

しかしそんな非日常も少年と女性からしたら日常光景なのだ。


「人生最後の日に良い痴話話が聞けたよ。ありがとう」


男性は冗談交じりに愉快に話す。

なぜか男性は自分の命日になる日だっていうのにずっと笑顔だ。

少年もそんな男性につられて笑う。


「で、今日俺はどうやって死ねるんだ?」


男性は何の前触れもなく話の話題を変えてきた。

それは早く死にたい気持ちの表れのようだった。


「そんなに知りたいですか?」


少年は男性を茶化すように聞く

そんな状況でも男性はさっきから笑顔を崩さない

今はそれがとてつもなく恐怖を醸し出している


「もちろん」


その一言一言から男性の刑が恐怖が喜びが伝わってくる。

それにくづいた少年は男性の自殺手段を男性に話す。


「飛び降りです」



「飛び降り」


「そう。ビルの上から綱なしバンジー」


少年はニヤッと人差し指を上に向け空気をなぞるようにゆっくりと下へとおろす。

そんな少年を男性は指の動きを目で追うわけでもなくただただ少年の眼を見て少年と同じような表情をしていた。


「そしてお客様には死ぬ前にたまっていたらでいいので怒り、嫉妬、願いなどがあったらビルの屋上から叫んでもらおうかと」


「それは最高なデスプランだ」


「気にいってもらえて何より」


少年と男性は今とてつもなく狂喜に満ちた表情で自分がまさかこんな表情をしているだなんて想像もつかないだろうし思わないだろう。

今、少年と男性の表情は狂っているほどに笑っていた。

そんな中でも今日の夜についての話は進む。


「ではこれよりお客様の自殺についてより詳しく話しましょう」



それから4時間程度の時間が過ぎた

少年と男性は頤今回の自殺プランを最高な自殺と称し男性から悔いが残らないことを確認した。

確認するときも男性はまだ笑っていた。

そしてそんな自殺プランが始まった。

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