第2.5話
わたしの人生は面白くはなかった
考えてみればただここの家に生まれてそのまま成り行きで神主になり
それからはあの少女に出会うまでは特にこれといった特別なこともない
この人生で好きになった人は一人もいないしこの神社を潰さないためにも跡取りを作らなければいけなかったのにそんなこともせず
わたしが死んだらこの神社はどうなってしまうのだろうと“コロシヤ”から帰ってきた後に気付いた
「わたしの人生が楽しかった時は」
神主はいつもと同じように神社の前を箒で掃いている
“コロシヤ”から帰ってきて神社の中で誰もいないことをいいことにゴロゴロしていたらそのゴロゴロに飽きて何をしようか悩んだ結果今に至る
「やっぱりあの少女と話していた時か」
風がよく吹く今日は掃いても掃いても葉っぱが落ちてくる
「もしかしてわたしって俗にいうロリコンだったのか」
神主はとんでもないことをつぶやく
「ロリコン神主か。地元の警察や学校のPTAなんかに文句言われるんだろうな」
神主は笑いながらそう言う
もし神主が本当にロリコンだったら
それを公表してしまったらメディアが騒ぎ立てるだろう
そして何もしていないのにとんでもない罪を着せられ警察いきだ
しかし明日死ぬつもりの神主にはそんなことは関係ない
「こんなことしてるけど明日はわたしの命日になるんだよな」
神主の命日
神主が死んだら少なくともメディアは騒ぐだろう
日本でも有数の神社の神主が突如消えたと
「できるならそんなに騒がないでほしいな。最後ぐらい静かに死にたい」
神主はどこか寂しげに言う
「明日“コロシヤ”に言ってみるか」
神主は掃くのをやめ神社の中へと入って行く
「明日死ぬんだ。今日ぐらい怠惰な生活を送ろう」
そう言って神社の敷地内にある自分の家へと帰って行った
「さて。溜めこんでいたマンガやゲームを思う存分しようじゃないか」
そう言って神主はTV前に座り最新のゲーム機やらマンガと
テーブルの上には炭酸とジュースとスナック菓子
そして神主の服装がカジュアルになっていた
どうやら外出時や神社にいる時以外
つまり家の中にいるときは神主の服装はしない
気付いてみれば当たり前なのだが
神主も一人の人間だ
オシャレだってゲームだって犯罪だって何でもする
「生まれて初めてかもな。こんな生活は」
そう言ってゲームをプレイする神主の表情はまるで子供の様だった