第2話
「で、今回の依頼主さんは偉いえらい神主さんってことね」
「そうだよ」
少年は目の前にいる商人に話していた
それと
「何度見てもここは安っぽいよな」
全く話を聞かない運び屋
この3人が珍しくカラオケにいる
因みに女性は諸事情で来ていない
「くそ。なんで女が一人もいないんだよ」
運び屋がマイク越しに叫ぶ
少年はそんな運び屋をからかう
「女ならここにいるじゃないか」
「どこにだよ?」
少年は商人を指さす
「え?ボクぅ」
商人は実に可愛く返事をする
ほっぺに手を当て首をちょっとだけ右に傾ける
実に可愛い商人だ
そんな商人は見て運び屋は
「確かに可愛いけど!確かに商人となら一夜の間違いおこせるけどさ」
「じゃあ。おこしてみる?」
商人は運び屋をからかうように問いかける
艶美に近づき甘い蜜のような声を耳元で聴かせ運び屋を誘う
「ごくりっ!」
「って冗談だよ」
少し本気になっていた運び屋を見て商人はすぐに運び屋のもとを離れ元のところに戻り座る
「てか運び屋さ。ごくりって言葉に出して言うやつ初めて見たぞ」
少年は少し笑いながら運び屋のあの反応について聞く
「いや。そんなこと言ってなぜ」
運び屋は思いっきり目をそらし語尾が裏声になりつつ否定した
見事なまでに嘘をついていることがバレバレである
「よし!そんなことより歌おうぜ」
運び屋はいきなり話の話題を捻じ曲げる
「ウソつくのヘタだな」
「よし!曲入れたからな」
少年を完全無視して運び屋は歌いだす
「お~とこを磨く」
少年と商人がなんでその曲なの?と欺瞞しかない表情を出しまくっているが運び屋はそれすらも気づいてはいるが気付いていないふりをして歌い続ける
「ある日~届いたあの梅は~」
少年と商人はしばらく運び屋の地味な美声に耳をかたむけてはいたが30秒もしないうちに飽きて今回の少年が受けた依頼について話し出す
「そう言えば今回の依頼さどうして受けたの?」
「さぁ。俺自身まだわかっていないんだ」
「え?」
「だってさ。今回の依頼者は神主だぜ。昔風に言えば神の使い」
「そう言えばそうだね」
商人が少し照れながらえへへ。とする
少年はなぜに今?といった疑問が生まれたが商人がかわいすぎるのでそんな疑問がすぐになくなった
そして何事もなかったように話を進める
「そんな人が死にたいって正直最初は疑いと疑問しかなかった。けど理由を聞いて、なんか死なせてやりたいって素直に思ったんだよね」
「わぁ。詩人だねぇ」
「ど、どこがだよ!?」
商人は少年に静かに優しい笑顔を向ける
肘をテーブルに着け右手を頬に添えるようにして
そしてそんな商人は実に可愛い
「そう言えば今回ボクに頼みたいことってあるの?」
「仕事に関してはないが個人的にはあるな」
「ふぁに~」
商人はジュースを飲みながら少年に聞く
ジュースはぶくぶくと泡を立てていた
「商人のビキニ姿が見たいです」
「男によくそんなことを簡単に言えるよねぇ」
ジュースを飲むのをわざわざやめて全力で引いているオーラを出す商人
しかし今回の少年はやけにしぶとかった
「お願いします」
テーブルに顔をつけ両手を載せている
よくマンガとかで見る懇願のポーズだ
「女装じゃないからな~」
商人はちらっちらっと少年を見るものの顔と視線は常に右斜め上だ
「最新のウィッグを差し上げます」
少年も少年で先程から姿勢を変えずに懇願する
「水着も新しいのを用意します」
「でもな~」
「プライベートビーチを準備しています」
少年は席を離れついに土下座をした
男にビキニを着てと懇願する男
そんな少年は社会的に終わっている気がした
「もう。しょうがないなぁ」
商人は必死に笑いをこらえながら答える
少年は何かがあってか顔を上げることはない
その少年の横で無視されていることに気づきながらも必死に涙を流しながら歌いつづける運び屋
いろんな意味でこの部屋はパニックルームだ
ドッキリを誰かに仕掛けるには丁度良いパニックルーム
「でさ。そんな神主さんをどんなふうに死なせるの?」
「入水だな」
いつの間にか少年は何事もなかったかのように椅子に座っていた
そんな少年の額が少し赤みがかかっていた
「あ~入水」
「流石は商人。入水と聞いてすぐに入水とわかるとは」
「えへへ~」
「なんか正しくは入水と言うらしいぞ。まぁどっちでもいいんだけどな」
「意味は一緒だしね」
少年と商人は話している内容が違ければとてもほほえましかっただろう
そう。会話の中身さえ変えてしまえば
「あ、そうそう話変わるけどさ」
「どうしたのぉ」
「最近さ歩いているとやけに人に見られるんだけど」
「わぁ。すごく自意識過剰」
どうやら今日の商人はSっ気が入っているらしい
あと少しで見た目だけではなく会話の内容もほほえましくなったのに
「商人。それツラい」
「何がぁ」
少年が若干涙をためていることに商人は気付きつつもそれを気にせず話を進める
「で、どうしたの?」
「今さっきなんだけど女子高生が俺を見てキャーキャー言ってくれた」
「で?」
「とてもうれしかったです」
少年は完全に話す気をなくした
そんな横で運び屋はレミオとロメンの粉になりそうになる雪を歌いだしていた
「粉~にな~るよ」
やはり地味なその美声は誰の心にも届かずにまた無視をされる
「なぁ商人」
話す気を結構早く取り戻した少年は商人に話しかける
「こんなこと言えるの商人ぐらいなんだけどさ」
「なに?」
「明日ちゃんと死なせてやれるよな」
「君が考えたことならきっとうまくいくよ」
商人はいつものようにボクちゃんと呼ばずに少年のことを君と呼ぶ
それだけでも商人が真剣に答えてくれているんだなとわかる
「ありがとう」
そしてタイミングよく時間終了のコールがかかってきた
少年と商人と運び屋は会計へと向かう
「じゃよろしくな運び屋」
「よろしくねぇ」
「ちょっおま」
少年と商人は会計を運び屋に押し付けて外に出る
そして少年はつぶやく
「明日は頑張ろう」