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コロシヤ-あなたの自殺手伝います-  作者: asit
神主聖歌-入水-
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第1話

とあるビル群の奥にある雑貨ビルの4階にあるドア

そのドアにはカタカナで“コロシヤ”と書かれた紙が乱雑に貼ってある

そのドアを開け中に入ると少年と女性がいつものようにいる


「なお今回の件に関しましては」


少年は部屋の真ん中にあるソファーに座ってだるそうにニュースを見ている

ニュースではある学校で起きた大胆な首吊り自殺をした女子をなんの躊躇もなく流していた

今はその女子の両親が涙を流しながら母親が倒れこみ父親が目の前のマスコミの質問に苦しみながらもこたえているインタビュー映像が流れている


「よく泣くねぇ。実際は死んでラッキーとか思ってるくせによ」


「なんでそんなこと言っちゃうかな。本当に泣いてるかもしれないのに」


「あー。さいですね」


女性は洗濯物がたまったカゴを持って屋上に行くところだった


「あ、ついでにこれもよろ」


そう言って少年が女性に投げ渡したのはある契約書みたいな紙だった


「あれ?これってこないだの」


「あぁ。なんかめんどかったし」


そう言い終わった少年はまたテレビを静かに見だす


「捨てろってことか。わかったわよ」


女性もそう言って屋上に行ってしまった

部屋にいるのは少年1人

酷く違和感のある空間になってしまった

そんな時だった

ドアからノック音が聞こえてきた


「はいは~い。今行きますよっと」


少年はソファーからけだるそうに立ち上がりドアに向かって歩き出す

そしてドアの前につきドアを開けると


「ここは“コロシヤ”であっているでしょうか?」


神主の服装をした60代前半の男だった


「宗教団体へと勧誘はお断りしています」


そう言って少年は勢いよくドアを閉めた


「ふぅ。近頃はこうゆうのが多いな」


「ちょっ!?待ってくださいよ」


ドアから激しいノック音が聞こえる

完全にドアをたたきつけている音だ


「しつけぇな」


少年はそう言ってドアを再びあける

そこには息を切らしたただの老人が膝に手をついていた


「お前なんなんだよ」


なぜか笑顔になった神主らしき初老の男は勢いよく答える


「自殺志願者です!」


「あのな。そんな笑顔で言われて信じられると思うか?」


少年ははぁ。と額に手をあて呆れていた

そんな少年の様子を見て初老は何かを悟ったように落ち込む


「ま、一応は話聞くから中にはいれ」


「いいんですか!?」


「次その言葉いったら入れさせない」


少年の静かな怒りを感じた神主もどきな老人がだまって中に入る

中に入り老人をソファーに座らせ少年はいつもの机の椅子に座る

これが少年にとっての仕事スタイル


「で、神主もどき様が自殺志願とはどういったことだ」


「もどきじゃなくて本物です」


老人改め神主のそんな言葉に少年は目を大きく見開く

少年の中では完全に目の前の神主がコスプレした老人と勝手に決めていたらしい


「マジかよ」


「マジです」


「でもよ。神主って自殺なんか考えんのかよ」


「考えますよ。所詮は人ですから」


「でも神主ってこう自害みたいな感じで喉もとをぐいっとナイフで刺したり腹切り御免とか言って切りつけて死ぬのかと」


「なんですかそのイメージは」


今さっきとは全く別の立場になっているように神主が少年の勝手なイメージに呆れていた

少年はふむふむ。と言いながら机の上にあったノートに

神主も自殺する。

とメモしていた


「よし。じゃあなんで死にたいのか教えてくれ」


切り替えの早い少年になぜか完璧に適応する神主はその理由を話し始めた


「そうですね。きっかけは3ヶ月ほど前ですかね」



神主はそこそこデカい神社に使えていた

そこはよくテレビにも出ていており国内でも知られた神社だった

地元から愛され日本から愛され

そんな最高な神社だった

何にも不自由もなく普通に幸せな生活を送っていた神主はそこである少女と出会う

少女は中学生ぐらいだった

その少女はある日から毎日神社に通い何も願いもせずただ社を眺めて帰る

そんな日々が1ヶ月続いた

そして1ヶ月と1日目

神主は少女に声をかける

毎日来てただ社を眺めて帰るだけの少女に


「毎日来て飽きないのかい?」


少女は不思議そうに神主を見る


「あなたは誰?」


少女その大人びた口調は神主に何かを思わせたらしくつい微笑みながら答えてしまう


「ここに住んでるただのおっさんだよ」


「それって神主ってこと」


「ま、そうだな」


神主と少女はこの日を境に毎日少しだが話すようになっていた

そして時はさらに流れ2か月がたったある日

少女は神主にあることを伝える


「私ね。家が燃えちゃって今一人ぼっちなんだ」


「それって」


「家族はね家ごと燃えちゃったんだ」


少女は静かに優しく陽に照らされながら話し出す


「だから私はその次の日から神さまを呪うために近くにあったこの神社に来たってわけ」


少女は眺めていたわけではなく毎日神社に来て神様を呪うために睨みつけていたらしい


「でも神主さんとこんな風に話すようになっちゃってなんかもうどうでもいいかなって思うようになってさ」


神主は黙って少女の話を聞く


「私ね自殺しようと思ってるんだ」


「そうか」


少女は不思議そうに神主を見る


「あれ?こんな時って普通止めるんじゃないの」


「止めやしないさ。だってそれが君の出した答えなんだろ」


「神主さんってなんか変わってるね」


少女は笑いながら涙を目に溜めていて今にも零れ落ちそうだった

そんな少女は神主にあることを聞く


「ねぇ。神主さんって今生きてて楽しい?」


少女はそれだけを言い残し神社を去った

翌日少女は神社には来なかった



「ってことがありまして」


「え?今のどこに自殺要素が」


「そのあと考えたんです。自分の人生はどうだったかって」


神主は床を見つめ遠い目をしている


「その少女と話していた時はきっと楽しかった。でもそれ以外は」


「本当には楽しめてなかった」


「はい。で、そう考えていくうちに本当は少女と過ごした時間でさえも楽しめてなかったんじゃないかって」


「そう思うと自分は生きている意味なんかないじゃないかってことか」


「そうです」


神主は涙を流しながら微笑みながら


「だからもういっそのこと死んじゃおうかなと」


その言葉を言った


「よしわかった。なら1週間後またここに来い」


「1週間後ですか?」


「この1週間考えてこい。自分の人生を。それで死にたくなくなったら来なくていい」


少年は静かに伝える


「考えても死にたいと思うのならここに来い。アンタにとって最高で素敵な最期を迎えさせてやる」


少年のその言葉に神主は静かにうなずき帰って行った

神主は帰り際に


「きっと自分はまたここに来ると思いますよ」


そう言って出て行った

少年はそんな神主をただじっと見つめ静かに笑った


「あれ?なんか今」


女性がタイミングよく屋上から帰ってきた


「今回の依頼主だよ」


少年はそう言って部屋の中へともどって行った

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