第3話
外は暗く街灯が1,2本しか点いていない
いかにも怪奇現象がおきそうなとあるビル群の奥の雑貨ビル
その4階のドアの前に三つ編みメガネの女子が制服姿で立っていた
「おぉ。来たか」
「来るに決まってるじゃない」
ドアが開き中から少年が出てくる
夜になると少年の髪は昼間比べ余計に神聖おびた髪になる
「いきなりくって掻かんなって」
「どうかした―?」
ドアの奥から女性の声が聞こえてくる
なにやら準備をしているようだ
「いやなんでもないからお前は早くもってこい」
「わかってるよ」
女性は焦って外へと出てくる
そんな女性は実に大きな荷物を持っていた
昨夜に少年と商人が作った特別な自殺専用ロープにテントとかを固定させるような杭がそのまま大きくなったようなものに市販されているものよりも2回り程大きなトンカチ
それらを覆い隠すようにかぶせている某有名アトラクションパークの袋
女性ははたから見ればただの某有名アトラクションパーク帰りの人にしか見えなくなっている
「何その荷物」
「まぁ。見た通りに荷物だな」
「私のことバカにしてるでしょ」
「そりゃもちろん」
少年は顔全体で笑い女子を馬鹿にした
「なんで私死ぬ前に誰かからバカにされなきゃならないの?」
「さぁ?」
少年と女子がそんなやり取りをしていると女性が限界といった様子になっていた
「もう無理。早く行こうよ」
涙目になっていた女性は涙声で訴える
「あぁ。そうだったな」
「え?もう移動するの」
「当たり前だろ。時間は常に前にしか進まないからな」
「あれ?そういえば私ここに来いって言われただけでここから移動するとか聞いてなかったのにこの状況に適応しちゃってるの?」
「そんなの知るかよ」
女子の自問自答に近い質問を少年は軽く返す
う~ん。と古典的に女子は考える
「ほら。早く行くぞ」
そんなことをしていたら少年と女性は先に階段を下りていた
「あれ?ちょっと待ってよ」
「次おくれたらこの話チャラだから」
「それだけは嫌だからー」
女子は勢いよく階段を下る
そして下り終わると階段の前に1台の車が止まっていた
「待たせたな」
少年がその車の運転席らしき場所の窓に声をかけると窓が開いた
「大丈夫だよ。それよりも早く荷物つまないの?」
運転席に座っていたのは一人のガチムチな屈強な男だった
「誰この人?」
女子は若干引き気味に運転席の男を指さしながら少年に聞く
「コイツは今から俺たちをお前の自殺場所へと連れっててくれる運び屋だ」
「因みに“インドウ”と検索すると奥の方でヒットするぜ」
そんな運び屋は綺麗に親指を立てて白い歯を見せつけてくるかのようにニコッとし女子を完全に引かせる
「荷物載せ終わったよー」
女性がちょうど良いタイミングで荷物を載せ終わったので少年と女子と女性は運び屋の車に乗る
「よし。じゃあ今日も自殺志願者を死に近い場所へと運びますか」
「そんなの言ってなくていいから早く車出せよ」
少年がさめきった言葉を運び屋に言ったが運び屋は気にすることなくマイペースに車を出した
「そういえば私は今からどこに連れていかれるの?」
「おい。その言葉は聞き捨てならないぞ」
車が走り出してすぐのことだった
女子はふとした疑問を口にする
それに少年は反応するがその反応する場所が女子の求めていた箇所とは違っていた
そのため
「え?何が」
「何がって。今のじゃまるで俺たちがお前なんかを拉致ったことになるじゃん」
「お前なんかって何よ!」
「お前なんかは前なんかだよ」
こういった食い違いがそらに食い違いを引き起こす
まるでどこかの子供の口ケンカのようだ
その口ケンカを女性が止めようと割って入る
「もう。2人ともストップ」
その女性の優しい言葉がなぜか2人には効いたみたいですぐに収まる
「自殺し終わったら呪ってやる」
「やってみな」
2人は最後に捨て台詞的なことを言った
そして2人の口げんかは意外と長かったらしく車がある建物の前で止まる
「ほら。着いたぞ」
運び屋が満足そうにそう言う
「こ、ここが私の死に場所」
「そうだ。いい場所だろ?」
そう言って車から全員が下りるとそこは女子が通う学校だった
女子は学校をただ眺めていた
「ほら。何をぼさっと立っている。さっさと中に入るぞ」
「え?あ、うん」
女子は急いで少年といつの間にか車から荷物を出していた女性の後について行く
運び屋は来るまで待っているようだ
「一緒に来ないんだ?」
「運び屋のことか?来てほしいんだったら自分からお願いするんだな」
「来てほしくないからいいや」
「じゃあ気にするな」
そう言って少年と女性と女子の3人はなぜか開いた校門を難なく通り校内へと入って行く
「ココのセキュリティーって」
「地元の三流高校ならこんなもんだろ」
校内は昼間と違いとてつもなく不気味だった
この学校は定時制とも共有しており夜もさほど不気味さを感じないが時間帯が時間帯なのでさすがに学校独特の不気味さが校内のいたるところからにじみ出ている
「私夜の学校はじめて」
「俺もだよ」
女性はなぜかテンションが高くなっていた
そんな状況でも着実に目的の場所へと向かっている
「ねぇ。本当にここであってるの?」
「なぜに疑う」
「だって学校だよ。不法侵入だよ」
「今から死ぬ人間が犯罪とか気にしてどうする」
そんなことを少年に言われつつ目的の場所へと着いた
そこは夜風が冷たく吹き何もない学校周辺を見渡せる唯一の場所
「屋上」
「ココがお前の死に場所だ」
この屋上にロープを設置し首吊り
まずはロープを設置しその後に女子の首にちょうどよくロープを巻き少年と女性は帰る
そして朝を迎えてそこから飛び降りるようにバンジーをする
命綱がほかのバンジーとは違い首に巻きつけてあるだけのいたってシンプルな自殺
「どうだ?朝になれば登校してくる生徒や教師を文字通り見下しながら死ねるぜ」
「そうだね」
「なんだ。ここにきて怖気づいたか」
少年がに皮肉交じりに女子に聞くと
「そうかも」
女子は意外な答えを返した
その言葉を聞き少年の表情が一気に変わる
「やめるなら今だけだ。どうする」
さっきまでの少年とは違い表情は冷たくなっている
それに女子は
「やめないよ。けど私ここで死ぬのかって思うと」
「場所が嫌なら今すぐに変えるぞ」
「それも大丈夫」
「なら何が」
「う~ん。今は一人になりたいかも」
女子のその表情は迷った笑いをしていた
それを見た少年は予定よりも早く準備を済ませその場から女性を連れ車に戻りその場から帰った
「はぁ。一人になっちゃった」
首にロープを巻きつけた少女は屋上に寝転び夜空を仰ぐ
「私って本当はバカだったんだな」
女子は思い出す
怠惰が変わった親や偽物の友達
それに楽しかった思い出と苦しかった思い出
それらを思いだし女子の目からは涙が流れていた
「私が死んで泣いてくれたり悲しんでくれたりする人はいるかな?」
そう言って女子は目を閉じた
女子が目を覚ましたのは部活の朝練の子たちの声がした時だった
ポケットの中にある自分のケータイで時間を確認する
AM6:50
まだ少し早かった
「もう一回ねよっかな」
女子はそう言って寝ぼけた頭をかきながらまた眠った
次に目を覚ましたのはそれから1時間がたった時だった
程よい二度寝に女子は若干の満足感を抱きつつもこれから自分が好ぬ現実を噛みしめていた
「自分で決めたことだしもう仕方ないか」
AM8:00
女子が起き上がり屋上の端まで行く
学校の正面にある時計の真上
そこが今女子が立っている所だった
女子がそこに立つと数人がそれに気づきそれが周りにも伝わり
下ではすぐに騒ぎ始める
「うるさいな」
女子の言葉もそんな騒ぎによってかき消される
「よし。死ぬか」
下に人が地面を隠すほどに集まった
いよいよ女子が死ぬ
今まであれだけ少年にくってかかっていたいた女子も今は静かだ
「クズ共が」
そう言って女子はそこから降りた
「バ―――――カッ!!」
女子は叫んだ
ロープとともに下降しながら
勢いよくロープは下降していたが時計の真ん中で下降するのをやめる
そして女子は首の骨を折り一瞬で死んだ
その時の女子の表情は笑いながら涙を流していた