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どお、りゃあああああああああああああああああああああああああ!

「この、貴様、こんな状況で、ドサクサに紛れて!?」

「シ、シーくん!?アナタ、手も早いし手当たりで常に手持ち無沙汰なの!?」

「しししし時雨!?やっぱりそれくらいがいいの!?控えめな掌サイズがベストフィット!?」

「うるさい腐れ黙れボケお前らゴラあああああああああ!」



 凛名から身を離した時雨に殺到する、女性陣の軽蔑と侮蔑の視線と言葉。あまりにも混乱した状況が、この場にいた全員から一時的に理性を失わせ、そもそも次に自分が何をすべきかを見失わせていた。

 そんな中で、



『ナンダ、コイツラ・・・?』



 時雨の背後、完全に取り残されていた襲撃者が、ポツリと声を上げて後ずさる。しかし次の瞬間には彼は自分の任務を思い出し、軽機関銃の銃口を大和へと向ける。

 それを契機として、



「そうか、やっと理解が追いついた。つまり・・・」



 大和が、両手の弐刀を構え直し、時雨に支えられて身を起こした凛名、襲撃者を直線の視界に納めて言う。



「私は朧を確保、そして敵と、英雄探偵を斬れば良いのだ」

「ハッ!単細胞はイチイチ口に出さなきゃ状況も把握出来ないらしいな?」

「ちょ、ちょっと待って!?アナタ達・・・!?」



 大和と時雨、見下ろす黒い少女と見上げる蒼い少年の気配に動揺した熊切が叫びを上げ、奥にいる襲撃者に中型自動拳銃を向ける。

しかし、まだ残っている〔自然派〕の撃退、〔AVADON〕への協力、どうやら朧凛名を確保していたらしい裏切り者・時雨の説得、傍らにいる市民である桜夜や白虎達の保護と、熊切には優先すべき選択肢が多すぎた。

 だから、



「アンタはアンタの仕事をしろよ、熊切さん」

「シー、くん」



 時雨は、熊切にそう促す。その間、両手に持った弐刀を中心に莫大な〔界子〕を収束させて風を起こす黒の少女、大和から片時も目を離すことはない。

 そして、



「お前らも、だ。自分のために、動け」



時雨は左右に陣取った白虎と雷音にそう言った。かたや白い甲殻装甲に覆われた拳を握り、かたやパーカーの帽子から現れた蜘蛛のような機械獣(オートペット)・〔リトル・バンプレート〕を腕に装着して攻性防犯機能を展開、細い右腕にバチバチと唸る紫電を纏う。

それは、時雨の望まなかった友の意志。

危険な自分に寄り添い共闘することを選んだ姿だった。

 だからこそ、時雨の極限の集中状態の中に、一筋の亀裂、罪悪感と嫌悪感が割り込み。

 瞬間、



「ぐ、ぶ・・・!?」

「おお!?」

「時雨くん!?」

「時雨さん!?」



 叫ぶ白虎と雷音、支えた凛名の間で、時雨は思い出したように破れた肺から血を吐く。同時に、集中することで意識外に追いやっていた、今は不必要な他人の思考が雪崩を打って少年を襲う。

 それを、



「無様に、死ね!」



 見逃す大和ではない。

 時雨が顔を上げた時、目の前には刃を振りかぶった黒の少女が飛翔している。

 咄嗟に拳を繰り出す白虎の反撃も、雷音の放った人口の雷も、翼で庇おうとした凛名の防御も、先手を打った大和はことごとく弾き飛ばす。時雨の喉と大和の刃の間には、もはや何もない。達人たる時雨と大和は、この数瞬が生死を分けることを知っている。

 だから、



「どお、りゃあああああああああああああああああああああああああ!」

「な!?この貴様!?」

「桜夜!?」



 時雨と大和は、全くの素人である桜夜が黒の少女に繰り出したタックルを見て、驚きに目を見開く。


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