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真実ノ御旗

「そもそも朧の存在や先に言った暴走は、彼女を確保した政府が全力で隠蔽していました。なぜなら〔純竜種〕とはそれほどに危険で、しかし利用出来れば単体で前時代の核兵器のような抑止力を持つからです。だからこそ、政府は〔月虹竜〕に〔大災厄〕のような悪いイメージをつけたくなかったし、朧の精神が成長することによってその力を制御できると予想しました」



 時雨は凛名の言葉に、非感染者である桜夜にもわかるように補足を加える。



「感染者の発揮する能力は、魂と〔界子〕が反応して起きる現象だ。魂が不安定で能力も変化しやすい若年期よりも、最低18歳程度、魂が安定した時期ならば、たいていは最大出力状態の能力を制御出来る」

「そう、なんだ・・・」



 凛名の過去を知り、緊張を増したらしい桜夜の表情は、まだかなり固い。それでも、役目を終えたとはいえ、〔事務所の所員であると言ってしまった桜夜〕を時雨の都合で退室させるわけにはいかない。

 だから、



「ですが、朧の存在を突き止めた人間がいました。特別隔離施設の管理局に、内偵がいたようです。彼らは、〔朧を殺すことで、自らの組織の力、抑止力になりうる感染者の無能さを示そうとした〕。〔感染者は、汚染から魂を守る界子を無為に消費するだけの害悪であると示そうとした〕。そして、その組織とは感染者排斥を謳う〔自然派組織〕の中でも、武力による過激なテロ活動で有名な一団。国際指名手配犯を17人幹部として擁す・・・」



 時雨は、〔やはり友人を事件に巻き込むべきではなかったのだ〕と、後悔する。

 なぜなら、



「待て!」

「おい、水を差すなよ」

「うるさい、いいから黙れ」


 大和の声が凛名の言葉を制止させ、抗議した時雨をすら刃の眼光で黙らせる。超級の戦闘者である黒の少女の全身から立ち上った異様な気配に、倉庫には不気味な沈黙が広がる。

 そして、



 ビビビビ、ガガガガ。



「なん、だ?」

「館内、放送・・・?」



 時雨の疑問に、同じく怪訝な様子の熊切がその異音の正体を推察。ガリガリと金属をこするような音を立てる電子音に、倉庫内の全員が耳を澄ませる。

 同時、



 タタタタン!タタタタン!



 倉庫の外から、今度は明確に連続した音が響く。それを聞いた時雨の背には、悪寒。

 つまりそれは、



「銃声、だと!?」

「一体・・・!?」



 時雨は隣に座る凛名を庇うように立ち上がり、同じく熊切が桜夜の側に立って懐から黒い中型自動拳銃を抜く。ただ、大和だけが、動揺もなく、自然体のまま立ち上がって無表情を貫く。

 そして、ついに、



『・・・我々ハ、無益ナ争いヲ望まない』



 館内に設置されたスピーカーから、肉声を隠すために合成された電子音声が響く。



『・・・ただし我々ハ、1つだけ君達カラ奪う。館内ニいるはずノ〔AVADON(アヴァドン)〕実働員、その命ヲ貰う』



 声は、ただ淡々と、宣言する。時雨に背を見せて立つ大和の命を奪うことを宣言する。



『・・・我々ハ、〔真実ノ御旗(トゥルーフラッグ)〕。繰り返す。我々ハ、〔真実ノ御旗(トゥルーフラッグ)〕』

「まさ、か・・・?」



 勘付いた時雨は振り返って緊張に身を強張らせた少女、凛名を見る。少女の震える唇、時雨に告げる。



「か、彼らが・・・朧凛名を狙う〔自然派〕、です」



 そう、彼らこそが、凛名を狙い、〔AVADON〕と争い、熊切が実働員とヨロズに搬入されたはずの武装から足取りを追っていた者達。



「・・・〔真実ノ御旗(トゥルーフラッグ)〕」



 日本を拠点とする組織の中でも最悪の大組織の名前を自ら口にした時雨は、それの襲撃を事実として受け止めるしかない。


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