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天地闊法

「腐れ失せろ!」



 低い疾走で3人の男達の中に飛び込んだ時雨は、獣のように唸った。言葉をすら置き去りにしようとでも言うように、少年のしなる右足の先端が霞む。正面に立ったスーツの中年男が、徒手格闘(ボクシング)の心得でもあるのか間一髪のところで上体をスウェーイングしてそれをかわす。さらには男の指に連なった指環のような凶器、左腕のナックルダスターが金色の軌跡を描いてカウンターを打つ。

 しかし、



「〔攻脚〕・〔風邪車(かざぐるま)〕!」



 空を切った時雨の右脚に続いて、軸足だったはずの左脚が宙に浮く。腰を支点に回転したそれが、打ちこまれた男の左カウンターを覆うように、反撃の浴びせ蹴りクロスカウンターとなる。

 さらには、



「るらあああああああああああああああああ!」



 男の右側頭部を捉えた時雨の左脚の踵は、そこで止まらない。回転が持つ慣性力を最大限に発揮し、時雨は男の側頭部にひっかけた左脚を押し込む。変則の踵落しとなった時雨の連携技は、最初の一撃で朦朧としていた男の顔面をアスファルトへぶち込み、沈黙させる。

 そして、



「〔(せめ)〕・・・〔(あし)〕!」



 腰を軸にした時雨の回転は、まだ止まっていない。左脚を振り下ろす際に溜めていた右脚が、天を裂く勢いで弧を描き、時雨の左側から迫っていたデブ男に襲来。着火した火炎瓶を2本掲げて自爆防御したデブ男の脳天を打ち抜く。同時に時雨の蹴り脚に燃焼する高濃度のアルコールが引火。瞬時に少年の右脚が紅蓮に包まれる。

 しかし、



「〔焔脚(ほむらあし)〕!」



 時雨が止まらない。左脚で意識が切れる寸前のデブ火炎瓶の豊満な腹を蹴って強引に棒高跳びでもするような姿勢で少年が跳躍。反対側に構えていた痩せぎすの包丁男へ、頭から突っ込む。天地を自在に闊歩する時雨の驚異的な戦闘機動に、包丁男は反射的に一歩を退く。

 それでも、



「〔天動刹(てんどうせつ)〕!」



 時雨の動きは淀まない。背を逸らして両腕で大地を捉え、逆立ちから両腕の筋肉を軋ませて飛翔。連動して鍛え上げた体幹を捻って横回転。月面宙返りの軌道から太陽のごとく紅蓮に燃える右脚が放たれ、一気に距離を詰めた包丁男の横っ腹に叩き込む。

 そして、



「さあ!?誰から地球に抱かれたい!?」



 時雨は燃える右脚のスラックスを破り捨て、迫る狂気へ吠える。


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