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絶薙大和の名に懸けて!

 だから、



「死ぬか腐れボォケェええええええええ!」



 その声を聞き咎めた叫びが、白濁した水柱から上がる。同時、水柱から、推進剤の噴射で水面を蹴立てて飛び出す青黒い影。それは鏃のような形状で、しかし座席に座る少女の背から左右に白銀の翼を伸ばす異形の天馬。

 そして、



「ハッ!お前の負けだ!ホットパッツン腐れ前髪!」



 蒼い瞳のライダーは、不敵な笑みで口汚く罵る。




「貴様、あの貴様!?!今なんと、私の撫子(なでしこ)が切った前髪をなんと言ったかああああああ!?」



 勝利の笑みを浮かべていた時雨の顔が、その怒号を聞いて瞬時に引きつる。嫌な予感が背筋を駆け、ずぶ濡れになった制服の下を脂汗が流れる。

撫子という人物が誰なのかはわからないが、わかることが1つある。それは今この瞬間、時雨は黒髪の襲撃者のパッツン地雷を踏んだのだ。

 そして、



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 雄叫びを上げて、両手で逆手に持った刀を躍らせ、パッツン襲撃者が橋の欄干から跳んだ。

橋からドンドンと遠ざかる時雨が見たのは、頭を下にして空気抵抗を減らし、落下速度を最大にした小さな影が水面に向かう姿。さらには長い黒髪が、超高速回転を始めた少女の身体に張り付き、代わりというように回転する少女の両腕が風車のように落下の先端で刀を回す。

 つまり、



絶薙流(たえなぎりゅう)逆手弐刀(さかてにとう)!〔蜷局華(とぐろばな)〕!」

「なんっ・・・!?」



 時雨の視界の先で、川が渦を巻いて割れた。遅れて、時雨の頬に爆風。思わず閉じた目を時雨が開いた時には、遠方で、高速回転を止めた黒の少女が、中空に両腕を広げて仁王立ちする姿が見える。重力が逆転したように黒髪を上方に靡かせ、まさに怒髪天を突くといった威容の少女の周囲には、渦を巻く水の帯が立ち昇っている。

 つまり、



「敵対象ハ、人工的ナ竜巻ヲ生成、強イ上昇気流ヲ発生サセ、落下ノ衝撃ヲ相殺シタ模様」

「馬鹿、げてる」

「私モ、コレホドノ使イ手ハ、見タコトガアリマセン」

「くっそ!来やがる!」

「行くぞお!絶薙大和(たえなぎやまと)の名に懸けて!貴様のその前髪、ギザギザにしてくれるわああああ」




 時雨の勝利は、〔水面を疾走〕して追跡を再開した黒い影、絶薙大和に呑まれかける。


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