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ダンダンダンダンダンダンダンダンダン!

「ぬ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!」



 時雨は持ち得る限りの膂力で、浮遊する自らの身体を単車に引き寄せ、脚で車体を挟み、顎ですり寄って、無理やり跨る。次に、左手の鎖、浮遊する少女を時雨は引き寄せる。右手を一瞬ハンドルから離し、少女の右肩に手を回して回転させながら、自分の前に横座りにする。



「は、は、ふうい!?」



 事態に目を回す少女に構わず、ガデティウスの〔自動操縦〕の技術では逃げ切れないと判断した時雨は、



「掴まってうぶ!掴まってうぶおろおおおおおおおおおおおおお!」



 顔面に混乱する少女の翼の羽ばたきによる殴打を受けながら、車体を左へと倒す。アスファルトすれすれを時雨の膝が掠り、起き上がった単車は大通りへと逃避行の舞台を移す。




「待たんか貴様ああああああああああああああああああああああ!?」



 恐るべき怒号が届く。角を曲がって、黒髪の少女が出現。迷うことなく時雨達の後を追い縋る。構わず、時雨はアクセル全開。停止の赤信号も無視して、右折。背後のクラクションと衝突音をすら無視して、スピン寸前まで後輪を滑らせる単車を力ずくで制御する。

 そして、



「待つかボォケえええええええええええええええええええええええ!」



 ガデティウスが、地面との摩擦を回復。白煙と爆音と噴射炎を撒き散らして、交通量の多い大通り、多層構造を持つ炎点都市ヨロズ第2層、瀑布川(ばくふがわ)へ向かう道を直進する。

 人型汎用重機である〔O.F.〕を積載した白いトラックを交わし、ガデティウスと同じハイスペックな人造意志を積んだ薄くて車高の低い赤のスポーツカーを置き去る。左手の視界では、高速道路の奔る頭上の高架橋のコンクリ柱が何本も背後へと去り、右手では、白い漆喰や全面ミラーで構成されたビルが過ぎ去る。

行き交うスーツ姿や制服姿、私服姿の老若男女が単車の上げる爆音に向けてくる奇異の視線を、時雨は額の汗と共に右手で振り切る。

ミラーに影。時雨の蒼い瞳が、振り返る。

 そこには、



「なんだよ!それは!?」



 ダンダンダンダンダンダンダンダンダン!



 そんな音を立てて、一歩ごとに車のルーフを踏み跳び走る黒髪の少女の姿があった。そのスピードは、先程アスファルトの上を走行していた時とさして変わらぬ加速を見せつけ、さらには元々走っている車から跳ぶことで車のスピードも疾走に加えている。見る間に、黒い瞳を笑みにした少女の姿が近づく。



「ふむ、なんだか面白くなってきたぞ!なあ!?天出雲時雨(あまいずもしぐれ)!?」

「コイツ、クソっ、なんで!?」



 時雨はなぜ自分の名前を黒髪の少女が知っているのか怪訝に思いつつも、とにかく襲撃者と距離を開けようと車体を左へ。高速道路に繋がる上り坂へと単車を飛ばす。ETCが反応する限界速度を超えて侵入。停止バーが跳ね上がる前に、車体を寝かして横滑りさせる。停止バーが時雨の濃紺の髪の先を掠め、次の瞬間には路面と火花を散らしていた車体を元に戻す。胸の中で翼ごと小さく縮こまっている少女に危害が及ばぬよう注意しつつ、交通量の少ない、瀑布川(ばくふがわ)を横断するルートを選択。障害物(くるま)が少ないため、抑えていたガデティウスの機動力がいかんなく発揮され、時雨と凛名を乗せた単車は、あっという間にビルの林立する街区を通過。川幅1kmを超える瀑布川の白く輝く水面を眼下に納める。

 しかし、



「ふむ。面白かったが、そろそろ終わりにしよう」



 時雨の背後、上空から声。

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