そして眠りは浅く深く
銀色の髪の少女が身に纏う白いワンピースからは、白く細い手足が伸びている。小柄な少女の背から伸びた翼、球体の形になっていたそれから放たれる銀光に照らされて艶やかな煌きを放つ。
そして、
「お前は親父の何なんだよ!?」
「アナタが、時定、さんの・・・?」
時雨の前で、ゆっくりと、長い睫に縁どられた瞼が開く。大きな紫水晶の色をした瞳が時雨を見つめ、薔薇の花弁を思わせる小さな唇が茫洋とした言葉を放つ。やはりこの少女は父親のことを知っていると時雨が確信した瞬間、蒼穹の瞳と紫水晶の瞳が直線となって見つめ合う。
少女が、ゆっくりと動く。
ドクン!
時雨の心臓が、大きく1つ鼓動を打つ。
時雨に、理由はわからない。
確かに、目の前の少女は、可憐だった。
確かに、視界の端に、もう地上が迫っていた。
確かに、少女の瞳は、行方の知れない母と同じ色だった。
これは、自分のこの反応は、〔運命の相手〕との出会いに本能が歓喜しているからなのだとしても、時雨にはその確信が持てない。
そして、
「なん、て・・・」
なんて冷たい、手なんだろうか。
時雨は、少女からゆっくりと伸ばされ、自分の右頬に添えられた手を、そう評す。
なぜこんなにも少女の身体は、染み込んでくる心は冷え切っているのだろうかと。
なぜ、
「そう、なら、もう少し・・・」
なぜ、少女が悲しげに眉尻を下げ、笑っているのかわからない。
「お前・・・?」
時雨の手を、翼を負った少女が掴む。地上へと激突する直前、時雨はフワリと重力の軽減を感じ、両脚がゆっくりと地面に着いたことに気づく。重力を無視したように、翼を広げて浮く少女を、その威容を敬虔な信者のように少年は見上げる。
「熱い・・・」
少女は握った時雨の汗ばんだ手、真実を求めて伸ばされた手をそう評す。
そして、
「もう少しだけ、いいです、よね?」
少女の翼が粒子となって消失、時雨の腕に気を失った華奢な肢体が飛び込んだ。
さらに、
『グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウ!』
「なっ!?」
時雨の魂に、威嚇の咆哮が響く。さらには精神を殴られるという、奇妙な衝撃。昏倒する寸前、時雨の脳を過ぎったのは、攻撃者の姿。少女を守ろうとしている生物のイメージ。
それは、
「銀の、竜・・・?」
倒れた時雨は、雷音と白虎が、ガデティウスが合流するまで深い眠りに落ちた。
一応、これで第一章終了という感じでしょうか。
まだまだ続きますが、ここまででも楽しんで頂ければ幸いです。
次回からは第二章、冒頭からキャラにはグイグイ動いていただきましょう。
新規読者様、既読者様、つまり現在私の小説を読んでくださっているおよそ60名様の週間ユニーク総数な神々のために。
そして気づいたらお気に入り登録してくれたお神様がいるではありませんか!?なんだろう、鼻から熱い粘液が!わかってます、耳鼻科ですね!?
本当に感謝でいっぱいです。読者の皆様、まことにありがとうございます。