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腐れ異名は〔英雄探偵〕

 そして、



「構うなあああ!俺は、死亡予告(フラグ)を超える男!正義超人、サイクロンジャスティスだあああ!」



 グッと右手の親指を立てた白虎が、スラムの街光の中に落ちていった。どうやら時雨の乗る白い楕円球体は待ち伏せていた狙撃者にも光線を跳ね返したらしく、追撃はない。球体を狙っていたらしい狙撃者が途中から球体への攻撃を躊躇していた理由を時雨は理解し、そして、



「だから、俺はああああ・・・!」



 少年は、激しい後悔に襲われる。

 現状、飛行能力のない自分の命のほうが、おそらく落下の衝撃に耐えきるだろう頑強な白虎よりも危機的状況だというのに、そう叫ぶ。

 自分の目的、〔両親と大切な仲間を探す〕という妄執で、仲間を〔また〕傷つけたことに慟哭する。

 だからこそ、



「なぜお前はここにいる!?なぜ今、また俺にそうさせるんだ!?」



 時雨の怒りは、足元の白い球体に向かう。それが責任転嫁の怒りであること、単なる八つ当たりにしかなっていないことが自分が未熟であることをはっきりと示し、時雨をさらに苛立たせる。

 そして、



「お前は、何だ!?答えろ腐れ野郎!」



 時雨は左手の薬指から漆黒の指輪を抜き放ち、球体の表面に叩きつける。

 真実を求める手を、伸ばす。

 瞬間、



『だ・・・れ・・・?』



 空間に広がった時雨の魂と空気中の〔界子〕が反応、発現した〔心を読む症状〕が、球体の中にいるらしい弱弱しい少女の心の声を聞く。

 だから時雨は名乗りを上げる。



「俺は天出雲時雨(あまいずもしぐれ)!師より与えられし腐れ異名は、〔英雄探偵〕だ!」



 目的のため、他人を他人と割り切って冷徹でいようとして失敗した。そんな甘さを持つ自分。人を他人と割り切れない、身の程知らずにも多くを掬い取ろうとする、今の自分にピッタリな英雄気取り。自分で自分を傷つける、不服の異名を堂々名乗る。

 そして、



『〔英雄、探偵〕・・・天、出雲・・・』



 白い球体の表面が、時雨の手の下で脈打つ。大地が迫る恐怖と戦いながら、しかし時雨は恐怖に歯を食いしばって耐える。ただ、翼のようにフワリと広がっていく球体を掴み、中を睨む。

 そこには、



「お前は・・・」



 ウェーブのかかる、長い銀色の髪の少女が、そこにいた。

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