ワイヤーアクション
白虎の加速力が赤い光線の回避運動に回されて、雷音の予測値より遥かに下がっている。このままでは、白い球体を捕まえることは出来ないと、時雨と、状況を地上から観測していた雷音・デルタは気づく。
だから、
「デルタ!?バンプレートのアンカーを!」
『カアアァハアアアアア!もう死に撃ってるぜえええドラ野郎うううううう!』
以心伝心した時雨のヘルメットに、背後から迫る高速物体、バンプレートの放ったアンカーの表示。
そして、
「2秒後に右側だ!掴めよ!?腐れトラ野郎!」
「俺はトラ野郎じゃねぇ!〔真白工務店〕の馬鹿息子、軽トラの白虎だああああああ!」
時雨の横をバンプレートから放たれたワイヤー付きのアンカーが通過した瞬間、甲殻装甲に覆われた白虎の右手がそれを掴む。白虎の右脚の甲殻装甲に着弾。装甲が一部破砕。
しかし、
グンッ!
放たれたアンカーの先端重量に引かれて、それを掴んだ白虎と時雨が無理やり前方へと加速する。空中という足場のない環境で不自然な加速をした2人を謎の攻撃者は一瞬見失い、赤い光線の軌跡が滅茶苦茶に放たれる。
だが、白虎が撃たれたことでアンカーの軌道がやや白い球体からは逸れており、時雨と白虎も否応なく、球体のやや上空を通過してしまう。
だから、
「デルタああああああああ!」
『カアアアァハアアアアアアアア!』
地上で、雷音・デルタの乗る黒い巨人が、その両脚を踏ん張って、右腕から射出されたアンカーを引く。白虎と時雨の加速が、強制停止。白虎が圧倒的な握力でそれに耐え、ワイヤーと少年の手の中で火花が上がる。ワイヤーの先端、アンカーへと辿り着き、瞬間的に2人の少年が中空で停止。
そして、
「イイイヤッホオオオオオオオオウ!」
バンプレートが、ワイヤーを引いた。その結果、停止していた時雨と白虎が一転して逆方向に超加速。最新鋭の〔O.F.〕が軌道を量子演算・修正し、曲線を描くワイヤーによって白い球体へ導く。
そして、
バシィ!
「おおし!到着だあああああ!」
「捕まえ、たぞ!?腐れ野郎!」
『カアアアァハアアアア!』
時雨と白虎が、落下する白い球体に着地した。
しかし、
「何!?」
「やっべ!?」
時雨の足元、白い球体の側面に赤い光線、先程とは比べ物にならない野太いそれが着弾。咄嗟に時雨を庇った白虎の全身の甲殻装甲に、白い球面に反射・散乱した無数の破壊の散弾がぶち当たる。衝撃で、圧倒的な能力を誇示した少年の身体が中空に投げ出される。
「白虎ぉおおお!?」
蒼い瞳を見開いた時雨の前で、無残に白い装甲を散らしながら、飛行能力の大半を損失した白虎が落下する。