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俺だけを見てろよ!

「凛名!」



 見る間にスラムとヨロズの灰色の外殻、オオゾラクジラの描く背景の中に小さくなっていく凛名に、さらに加速した時雨は右手を伸ばして直下へ飛翔する。同時に、自らの状況に困惑していた凛名が、それでも両肩から銀色の翼を展開。墜落死を免れようと、能力を展開しようとした。

 しかし、



「嘘!?ふうひいいいいいい!?」

「何!?」



 翼を広げた凛名は、高空に吹きすさぶ風に煽られて錐もみ落下。絡まったパラシュートのように銀色の翼を歪ませて、クルクルと墜落していく。その光景に、時雨は状況を理解する。

 つまり、



「俺が〔反射〕の根源、〔ミールナールの魂〕を借りているからか!」



 時雨が〔月虹竜の魂〕の力を借りている今、その能力を貸している凛名はそれを使えなかったのだ。ならばと、時雨はミールナールとの魂の繋がり、それを僅か緩めようとして、



『ダメです!時雨さん!』

「凛名!?なぜだ!?」



 魂の繋がりを介して思念の声を飛ばしてきた凛名に、



『今繋がりを緩めたら、罅の入った時雨さんの魂が今度こそ壊れます!僅かでもミールとの繋がりを断ってはダメなんです!』

「く、そ!」



 1度死んだ、魂がバラバラに砕け、それを強引に繋げられている不安定な存在である少年は、突き付けられた事実に歯噛みする。

 その上、



「しぃいいいいいぐれえええええええええええ!」

「うる、せぇえええええええええええええええ!」



 時雨に直進してきたミサイル、その上で本来の逆手弐刀を構えた大和が、絡みつくように時雨に肉薄。このままでは墜落死を免れぬ凛名に直行したい時雨の道を妨害する。

さらには、



「私を見ろ!時雨ええええええええ!」



 そう叫んだ大和の弐刀を中心に、膨大な量の黒く色づいた〔界子〕が収束。鍔のない2本の業物に絡みつき、その質量と体積をグングンと増加させる。

 そして、



「私と、殺り逢ええええええええええええええええ!」



 刀身全長50m、横幅10m、厚さ3m。質量10数トンを超えた黒い巨刀を変わらぬ神速で振りかざす黒の少女が、殺意の暴風となって遠大な殺傷圏を作り出す。もはや、凛名を追うのみならず、自らを守ることすら危うい状況に陥り、あくまで借り物である白虎と凛名の能力の行使に苦戦している時雨は未熟な我が身に歯ぎしりする。

 だから、



『・・・時雨さん』

「くそ!どけ!どけよ!」

『時雨さん』

「くっそ!くそ!」

『時雨さん!』

「!?」



 右から左から、下から上から空を裂いて振り回される大和の黒い巨刀に気を取られていた時雨は、かちあげられた弐刀を〔反射〕で抑え込もうとして動きを止めた時、凛名の声にようやっと気づいた。

 そして、



『いいんです』

「りん・・・」

『私、時雨さんが生きててくれれば・・・』



 大和の剛力と拮抗しながら、時雨は凛名がそう言うのを聞いた。

 彼女は、笑っていた。

 ほんの数十秒の後。

 その僅かな時間の果てに訪れるであろう死を前にして。

 少女は。

 だから、


「っるせぇええ!この腐れお澄ましがあああああああああ!」

『ふ、ひっ!?』



 時雨は、



「いいか!?今からそこに行く!そしてお前の〔真実(ほんとう)〕を暴いてやるよ!だからいいか!?」



 心の底から湧き上がる灼熱の憤怒を、



「ただ、お前らは!俺だけを見てろよ!」

『・・・時雨さん』

「ああ嗚呼!私は最初から、そのつもりだああああああああああああああああ!」



 落ち行く銀色の少女と、向かいくる漆黒の凶戦士にぶつける。


 

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