呪うといい。お前をトドメる、この俺を!
隣接したビルからヘリの前へとドゴンと音を立てて着地した影、背中に2つゴルフバックを背負った東全獅の姿を燃えるようなオレンジ髪を見て、波崎は苛立った声でそう命じる。
ゴズン!
ドドン!
スタン!
3つの着地音が自分を包囲するように響いた時も、東全獅の橙色の眼は凛名と波崎を乗せて飛び立つヘリから離れなかった。青年は状況を視覚で精査し、脳で判断。次いで、懐から取り出したタバコに火をつけて紫煙を吐く。
そして、
「おいおい、ダリィなおい~。隠し玉、多すぎじゃね?」
男は無造作に両脇の下から抜き放った二挺拳銃で、周囲を囲む無数の実働員、落下してきた3人の新手を無視して、ヘリに向かって連続した発砲。機関部、燃料タンク、操縦室や尾翼を狙った精確無比な銃弾の群れが、たとえヘリが爆発しようとも竜の守護で凛名は無事だろうと予想した全獅の手によって、容赦なく放たれる。
しかし、
ガガガガガガガガガガガガ!
金属がその衝撃を殺される異音が、全獅の耳に届いた。同時に青年の視界には、次第に高度を上げるヘリの直前で、〔空気の塊にぶつかってへしゃげた銃弾〕が見えている。
つまり、
「な~る~。全滅させなきゃ通さない、ってか~?」
全獅はそう零して、周囲を取り囲む敵意の群れ、その中に加わった背中から〔界子〕の結晶を生やした新手の3人の〔崩壊者〕、その中で細い右手を背後に掲げ、長い紫の髪を揺らす女を見つける。女の右手から先の空間が歪み、どうやら銃弾を貫通させない程度の強度を持つ空気の膜を展開していることに、青年はすぐに気づく。
さらには、
「そんで俺を閉じ込めて、その間にスタコラトンズラ、ついでの俺も殺しとけってことかぁ」
全獅はにじり寄る無数の実働員と、女と同じように背中から〔界子〕の結晶を生やした鮫と同質の肌の大男と、両手両足から融合したチェーンソーとペンチを生やしたひょろ長い男が近づく。
だから、
「もう知らねぇぞ?」
急に声音を尖らせた全獅の身体に、
「〔増殖・拡大・並列融合〕・〔殲滅仕様〕」
背中に背負ったゴルフバック、その中身が、ズルリとバッグを破って男の体内に侵入。融合する。さらには全獅の肌の色が見る間に鉄色の硬質へと変わり、その全身に両手から融合した拳銃の銃口が無数に覗く。次いで両腕が、背中に背負っていたゴルフバックの中身、ミニバルカン砲と同じ6つの砲身と、しかし同じく背負っていたロケットランチャーと同じ大口径を備えた、異形の砲塔へと変化する。
つまり、
「これが〔AVADON〕の6番手、東全獅お得意の絨毯爆撃融合砲だ」
〔融合型〕の感染者である男は、そう笑って、
「呪うといい。お前を止メる、この俺を!」
精密さなど在りえない、無差別破壊の権化へと変貌する。