始まり2
「ありがとうございました!!」
俺は店を出た。
さすがに刀をそのまま持ち歩くわけにもいかないから、袋に入れている。黒い布で作られており、白い紐で結ばれている。
刀の手入れは大変だ。俺も出来るには出来るが、やっぱりできるだけ専門家に任せたほうがいい。こいつも喜んでいるだろうよ。今の時代、刀なんか鑑賞用にしか使われなくなった。本来の目的である「斬る」ということが出来なくなって、こいつはどう思ってんのかな?
「さーて。さっさと帰って、じいちゃんの様子でも見とくか」
なんか様子変だったしな…
じいちゃんもついにボケてきたか??………じいちゃんには言わないようにしよ…殺されるな…
そういや、じいちゃんと暮らし始めてから随分たったな…
俺には両親はいない。4歳の時に出張に行った帰りの飛行機が墜落して、帰らぬ人となった。そのあとじいちゃんが俺を引き取ってくれたのだ。元気のなかった俺に、「強くなれ、秋人」と声をかけてくれたおかげで今の俺がいる、と思っている。だからじいちゃんは俺にとって尊敬する人であり、信頼をおく人であり、家族。そんな存在だ。
さっきは変なこと言ってたけど、まだじいちゃんに勝ててないのにどっこも行けるかっての。
「っ!?…うぐっ…」
なんだっ!?
痛い…頭が割れそうだっ……
っ!?
「ぐ、うぅ…う、うがぁぁぁぁああああ!!!!!!!」
「明日が暗い」
「つまらない世界」
「明るい明日を」
「どうか私に」
「見せてくれませんか?」
薄れていく意識の中でそんな声が聞こえた。