銀歯の下に地獄が眠っとったんやけど…決着ついたんや!──歯医者嫌いが地獄を封印した日──
数カ月前、ワシの銀歯が欠けた。
治療が終わったその時や――
“地獄の門”が開いたんや……
そっからや。
毎日、地獄が傍若無人に暴れだし、火花が飛びちるたびに「うぅ……」ってのたうち回る。
まるで“地獄の門番”が、ワシの銀歯をド突いてくるみたいやった。
ほんま、日々が拷問やった……
ワシ、覚悟を決めて、もう一度あの歯医者の門をくぐった。
まるでラスボス戦に挑む前の勇者や。
剣のかわりに歯ブラシ。
盾のかわりに診察券。
ポーションのかわりに保険証。
そして勇気を握りしめて――
装備は完璧。
けど、心はガクガク。
「今日こそ決着つけたる!」
そう心の中で叫びながら、診察台に腰を下ろした。
キュイーン――
あの音が響いた瞬間、魂が一瞬、逃げかけた。
けどワシ、踏ん張った。
指もパーやなくて、グーにして気合いを入れた。
再診したあの時や……
先生の心の声が聞こえた気がした。
――銀歯の下、ちょっと炎症起きてたみたいやね〜
「ほら見ろ! やっぱり地獄、眠っとったんや!」
ワシの歯ぐきが腫れとる。
それが“地獄の残り火”や!
火の用心はしとっても、一度火ついたら止められへん。
歯医者の門を再びくぐるまで――
地獄の硝煙燃え盛る、まさに修羅の道やったぞ!
神経の処置をしてもろて、薬もギュッと詰めて、新しい銀歯をピッタリはめてもろた瞬間――
……静寂。
しみへん。痛ない。
冷たいもんも熱いもんも、ぜんぶ平気。
歯がグルメやなくなった!
たこ焼きも、ミックスジュースも怖ない!
ワシの口の中に、春が来たんや!
帰り道、思わず笑ろてもうた。
歯医者のBGMがサスペンスやなくて、エンディングテーマに聞こえたんや。
――いや、正直言うと、水戸黄門に聞こえたんや。
「じ〜んせい らくありゃ く〜もあるさ〜♪」って、脳内で鳴っとった。
あの地獄、ようやく封印した。
ワシの歯、勝ったんや。
――でもな、人生はまだ続く。
次の銀歯が欠ける日まで、この平穏を噛みしめるんや。
歯との戦いは終わらん。
けど今日だけは、勝者の気分でええやろ?
ありがとう、歯医者。
ありがとう、ワシの勇気。
ありがとう、応援のみんな。
そして――さようなら、銀歯の地獄。
今日の勝利を、心の奥まで噛みしめて――
眠りにつくんや。
【了】
※ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
この短編は『銀歯の下に地獄が眠っとるんや!』の続編です。
よろしければ、前編も合わせてご覧いただけると、さらに楽しんでいただけると思います。 天音空




