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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第8話:夢から覚めたら

.

「知ってる天井だ……」


 目を覚ますとそれは寝ていた楠葉家に有る部屋のベッドの上であり、卦韻は覚醒したばかりの頭でキョロキョロと見回してみた。


「矢っ張りあれは夢だったのか? だけど頭には痛みが有るな……たん瘤は無さそうなんだけど」


 卦韻が頭を触ってみて、それでもたん瘤は無かったけど確かな痛みを感じる、あれが夢か現つか矢張りどうにも判らないから悩ましい。


「試してみるか」


 木剣は無いけど普通に剣道なんかで使う木刀は持っている為、卦韻は部屋の隅に置かれてあった自身の木刀を持って少し降ってみた。


 ブンブンと風切り音が耳を衝く。


「重たくない、体幹のブレも矢っ張り無いよな」


 確りとした体幹と軽い身体では、木刀を揮うのに充分なものである。


 唐竹割り、袈裟斬り、右薙ぎ、右斬上げ、逆風、左斬上げ、左薙ぎ、逆袈裟、最後に刺突つを放った。


「ふぅ……寧ろ身体が軽いな」


 卦韻は木刀の切っ先を床に付き、ちょっと小さく溜息を吐いた。


 階下に降りると、母である楠葉理央が朝食を準備してくれる。


「おはよう、母さん」


「卦韻おはよう、朝御飯はもう出来ていますよ」


「判った、戴きます」


 席に着いて、テーブルに置かれた目玉焼きにサラダに珈琲にと、極々一般的な朝御飯を食べる。


 卦韻の母親は四十路に見えないくらい若々しい姿をしており、しかも冒険者をしていて運動を確り遣っているからだろうか? 一児の母とは思えないくらいのスタイルで、卦韻の父親たる楠葉慎吾で無くとも可成りモテるのではなかろうか?


 卦韻自身は家での母しか知らないのだけれど。


(とはいえ、モテる母さんは余り見たくないな)


 両親のモテっ振りなど、見たくも無いのは子供の心理か?


 或いは虚栄心の塊なら親のモテっ振りを、まるで我が事の如く自慢したのかも知れないが……


「御馳走様」


「はい、御粗末様」


 美人で料理上手で気立ても良い、父の楠葉慎吾ならずとも欲する筈。


「卦韻は私や慎吾さんのお仕事を知ったのね?」


「え、うん」


「ならもう誤魔化す必要は無いわね。冒険者として私は慎吾さんと一四年間仕事をしてきたわね」


「一四年間? 確か俺が生まれた頃にダンジョンが顕れたって」


「私は一七年前に卦韻を身籠っていたんだもの。当然ながら一六年前に卦韻を出産、体力を回復させるのに一年と修練に一年を掛けたの」


「それで一四年なんだ」


 どうやら、自分の母親は冒険者を結構な時間を掛けてしてたらしい。


 仮に数えで一六歳に冒険者に成ったとしても、三〇年は体力的にも続けられないであろう。


 というより、四〇歳というのも厳しいかもだ。


 何しろ激しく動かねばならない、闘いというのは他の仕事とは一線を画する程のものだから。


 スポーツだってそうなのだから、戦闘なんて更に輪を掛けている。


「慎吾さんとは大学時代に知り合ってね、卒業と同時に結婚をしたのよ。お義父様が資金を出して下さらなかったらもっと遅くなったわね」


「そうなんだ……」


 何が悲しくて両親の恋愛事情を聴かねばならないのか? 卦韻は頬を引き攣らせながら楠葉理央から馴れ初めから婚姻に至るまでの恋物語を聴かされ、苦笑いを浮かべながら耳を塞ぐ事も出来ずにいた。


 二三歳で結婚、直ぐに卦韻を授かって翌年には出産、二六歳に成ってから二歳の卦韻を祖父母の家に預けてダンジョン探索の仕事に就く。


 璽来、一四年間は卦韻を育てながらダンジョン探索で稼いでいたのだと母親は自慢気に語った。


「そうそう、卦韻もダンジョン探索に行くのなら気を付けなさい」


「え、何を?」


「ダンジョンは入った時点での人間のデータを持つわ。だから死ねばダンジョンに入った時の肉体に回帰させて入口に戻すの。だから若しダンジョン内で肉体欠損が起きたら、死ぬ方がマシかも知れないわね。だけどね、死は中々に過酷よ?」


 生きてペッされるから、端から視れば安全とか思えそうだけど死に方次第ではトラウマものだ、生きた侭で魔物の牙に掛かって痛みと恐怖と絶望を味わいながら、生命を落としてしまうから。


 そして持ち物も装備も取得物も、その一切合切がダンジョンに奪われ喪われて真っ裸にされる。


「因みにダンジョン入口へ死に戻りさせられてしまうと、一時的な能力値ダウンしてしまうのよ」


(どっかのMMOーRPGか!?)


 割りと有りそうな設定だと考え、卦韻は理央の説明を聴いてしまい両手で頭を抱えてしまう。


「それじゃ、行ってらっしゃい」


「行って来ます」


 鞘に納められた聖霊剣クリスタリオンを腰へと佩くと、準備をしていた愛坂玲也から譲って貰っていた革の鎧を装備すると家を出た。


「ヤホー、ケイン!」


「ミスティ……」


「あれ? 配信用の名前で呼んでくれるんだね」


「あ、いや……その……」


 思わず『ミスティ』と、配信用の名前だけではなく“彼方側(夢の中)”の彼女の名前を呼んでしまった。


「でも流石にハズいから、道端では呼ばないで」


「ああ、悪かったな」


「まぁ、良いんだけどね」


 美衣奈はどうやら、道端で呼ばれるのは少しだが恥ずかしかったらしいが、それでも笑顔を浮かべながら頷くと杖をクルクル回している。


 彼女の装備は昨日と変わらない装備品だった。


「そうだ、槍太と璃亜ってどうしているかな?」


「槍太と璃亜? 北海道旅行じゃなかったっけ」


「そ、そうだったよな」


 矢張りというか、火祭槍太もだけど火祭璃亜も北海道に旅行中。


 親戚が北海道在住だった筈。


「とはいえ、二人も春休みが明ければ晴れて愛坂学園に入学だからね。私達に後れは取りたく無いからって、北海道の初心者ダンジョンに籠っている可能性は高いんだよね」


「北海道にも在るのか、初心者ダンジョンって」


「初心者ダンジョンって要するに、ダンジョンの中の魔素が極めて薄いって事だからね。各地にはそんなダンジョンが結構在るんだよ」


 火祭槍太も妹の火祭璃亜も愛坂学園の生徒証は既に有り、必要な手続きさえ踏めば入ダン自体は可能だったから二人も頑張っていそう。


(槍太も璃亜も此処には居ない。VRか何かも疑ったんだが、やっぱり夢オチだったって事かな?)


 モヤッとはするものの、考え過ぎても仕方が無いだろうと諦める。


 再び愛坂学園の裏山に存在する初心者ダンジョンに入ダン、その入口となるダンジョンの一階で配信用ドローンのスイッチを入れた。


 卦韻と美衣奈はそれぞれにスマートフォンにて配信開始、すると【Crystal Chronicle Ch】へとリスナー達がどんどん入ってくる。


〔おお、今日も配信乙!〕


〔やって来した、ケイン君とミスティちゃん!〕


〔やっぱ見た事無いな~、ケイン君の剣ってさ〕


 基本的にダンジョン用の武器防具は数打ちで、鍛造品ではなく半鍛造で鋳造品を鍛った代物だ。


 それだけに、本当の鍛造品では無く鋳造をしていただけの物だけに、形は基本的に同一ばかり。


 メーカーによって鞘や刃や柄や鍔などに色々と差違は有るが、その各メーカーは商品化で量産をしている関係から形状を変えていない。


 一番古いメーカーで【AISAKA】の一六年前からの老舗、名前から判る通りで愛坂惣元が若い頃に創業をして一代で大きくした会社だ。


 【AISAKA】の冒険部武装課とは一六年前に新設をされた部署、冒険者の為に出来得る限りは安くしようと頑張って色々と営業をした。


 他のメーカーより若干安く、若干だけど性能が良い武具となる。


 それでも他のメーカーと変わらない造りだし、鋳造された物を鍛えている形で量産をしていた。


 そんな武器に詳しいリスナーも居たみたいで、どう視ても鍔や刃の形は全く知らないらしい。


〔それ、何処のメーカー?〕


「ケインの剣は一応完全受注品みたいな物だね」


〔マジ!?〕


「鍔の造りが凝ってるのも、その影響なんだよ」


 リスナーからの質問にミスティからの答えは、虚実を織り交ぜた嘘とも真実とも付かないモノで塗り固めた内容であったと云う。



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