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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
6/13

第6話:これは転移か転生か?

.

 未だに眠たい朝っぱら……


「ちょっと、起きなよ!」


「ふわっ!?」


 誰かの声と揺さぶられる感覚に目を覚ました。


「んん? 朝? って、何で璃亜が部屋に!?」


 俺の目の前にはやや背丈が低めでありながら胸部装甲が御立派で、焔の如く赤毛をショートカットにした紅玉の様な瞳を持った少女が立って、ふんす! と両手を腰に据えている。


「りあ? 何の事? ケインってば、親友の双子の妹の事を寝惚けて忘れちゃったのかな?」


「いや、だから璃亜だろ?」


「そりゃ、確かにボクの名前の一部を取ればリアにも成るけど、ケインはいつもスピアって呼ぶじゃん!」


「はぁ? スピアって……」


 俺はこいつを、そんな名前で呼んだ事は無い。


 彼女の名前は火祭璃亜、一応は親友で慣らしている火祭槍太の双子の妹だから彼女も友人に違いは無く、普通に名前で璃亜と呼んでいた。


 俺はふと気が付いてキョロキョロと見回すが、よく考えてみると寝ていた筈の部屋じゃない。


 確か昨夜は美衣奈とのダンジョン探索に配信で疲弊もしてたし、夕飯を食べて風呂に入ってさっさとベッドに入って眠っていた筈だ。


 それなのに、今は何故か見覚えの無いボロボロな部屋。


 だけど誘拐説は有り得ない。


 目の前に璃亜――本人曰くスピアらしい――がこの場所に居る訳だし、若し誘拐だったら璃亜が誘拐した犯人って事になるんだろうから。


 って言うか、璃亜? スピア? の着ている服は布地も縫製も見るからに現代人の物じゃ無さそうだし、俺も着ていた寝間着じゃない。


 何だこれ? まさか学芸会な筈も無いしな?


 いや、それに抑々が槍太と璃亜は確か春休みに北海道へ家族で旅行に行っているんじゃ!?


「ちょっと、スピア!」


 バタンと扉を開けて入ってきたのは美衣奈?


「今朝は私が起こすって言ってあったよね!」


「ベーッ、早い者勝ち!」


「へぇ? 私にそんな口を利くんだ? それだったら良いんだよ~、お菓子を作って上げないんだから」


「え、ずっこい!」


 美衣奈はお菓子作りが得意だし、璃亜はそんな美衣奈からお菓子で餌付けをされてたからな~。


 数年前の話だけどさ。


 そういや、美衣奈も何だか服装がおかしいな?


「言い争いは良いから、服を着替えたいし出てってくれよ!」


「あ、ごめんねケイン」


「うん、そうするよ」


 割りかし素直に出て行く二人を見送った俺は、ベッドのすぐ近くの服やズボンに着替えた。


 そしてやっぱり知らない服だ。


 着替えの間の僅かな時間で考えてみたんだが、下手な考えは休むに似たりとはよく言ったもの。


 碌な事が考えられなかった。


 ラノベ脳やゲーム脳で往くなら、異世界転生や異世界転移とか有りがちで鉄板なんだろうけど、だとしたら美衣奈と璃亜……恐らく槍太も居る筈のこの状況には些か合っていない気もするよな。


「だとしたら、寝ていたんだから詰まりは夢オチってやつか?」


 声に出すとスッキリした。


「そうか、夢か! 明晰夢ってやつなんだろう」


 ストンと胸に落ち着いた感じになって撫で下ろすと、俺はさっさとよく知りはしない服を着替えると、美衣奈と璃亜? が待つ外へ出る。


「おっそ~い!」


「悪い悪い」


 ぶー垂れる璃亜に俺は軽く謝ると近付いた。


 正直、普通に都会に生きてきた俺が突如としてド田舎にワープした心境、はっきり云えば小さな村ってレベルの過疎地だろうこれは。


 緑豊かと言えば聞こえは良さそうだけどな~。


「おう、やっと起きたかケイン。寝坊とはな」


「槍太……」


 紛う事無き隣人にして親友であり璃亜の双子の兄貴、火祭槍太に間違いない……筈なんだけど。


「そーたとは何だよ?」


「兄さんにもなんだ」


「どういう事だ? スピア」


「ケインってばね、起こしに行ったボクを視て“りあ”とか呼ぶんだ」


「りあ? 確かにお前の名前はスピアーリアだ。愛称とするならリアも確かにアリっちゃアリか」


 槍太? が何か言っている。


 二人を視ていたら服の袖を引っ張られる感触に振り返ると……


「若しかして、ケインは私の名前も忘れちゃったのかな?」


 切なそうな目で言ってきた。


「美衣奈」


 俺が知る筈の名前で呼んでみたらショックを受けたらしい、あからさまに『ガーン』ってな表情に成って両手で頬を押さえている。


「おいおい、処置無しだな」


「これは流石にね~」


 何故か二人が呆れ返っていた。


「しゃーねぇな、昨日はあのクソ野郎に頭を打たれていたし、記憶の混濁でも有るのかもだし」


「ああ、アイツか」


 表情からして、どうやら俺は二人が嫌う誰かに殴られたらしい。


「取り敢えず、マヌケっぽいが自己紹介からか。俺はランスィード・マズルス、通称はランスだ」


「ボクはスピアーリア・マズルス、スピアだね」


 赤毛の双子――ランスとスピアが自ら名乗る、どうやら俺の知ってる名前じゃ無かったらしい。


「しょうがないね。私はミスティ・ヴィナーシュだから。みいなとやらじゃないから注意してよ」


「わ、判ったよ」


 凄い剣幕に驚いたのは事実、だけど本当に驚いたのは彼女の名前、ミスティ・ヴィナーシュとは美衣奈が配信の時に名乗った配信ネーム。


「ケイン・ユラナス?」


「そう、ケインの名前だね」


 矢っ張り配信ネームが俺の名前だったらしく、呟いてみると美衣奈――ミスティが我が意を得たりと謂わんばかりに満足気に頷いている。


 夢? 夢オチなんだろうか?


 だけど俺や美衣奈の配信ネームは知っていたから判るが、槍太と璃亜がダンジョン探索をしているかは兎も角っして、配信をして配信ネームなんて仮に持っていても俺は聴いた事すらも無いな。


 夢に出る筈も無いんだが……


 取り敢えず、夢の中では配信ネームで往くか。


「じゃあ、俺はケインで。そっちはミスティとランスとスピアだな」


「構わないよ」


「ボクも」


「俺もそれで良いさ」


 三人は頷いてくれた。


 処で、さっきランスが言ってた『あのクソ野郎』とはいったい?


「よぉぉ、無能野郎!」


 何だか知らんが、ニヤニヤしながらやって来たのはガキ大将か? みたいな男と、取り巻きか?


 小学生ならまだしも、見るからに高校生っぽい年齢で、コイツら恥ずかしくは無いんだろうか?


 まぁ、恥ずかしくないから遣ってんだろうね。


 この無能ムーヴをさ。


 ニヤニヤが止まらないソイツらは木剣を肩に担いでいる。


「おら、今日も俺らと模擬戦をするんだぜぇ!」


「模擬戦?」


 意味が解らないからランスに訊ねてみると……


「剣士なのに剣が上手く扱えないから、どうにも奴ら遣り過ぎレベルで殴り掛かってきたからな」


 小声で教えてくれたが居るよな、こういう奴。


「おら、無能! 俺と今日も殺り合おうぜぃ!」


「朝御飯も食べてないのにやる訳が無いだろう」


「なっ!?」


 取り敢えずだが、起き抜けで空腹な俺は断ってしまう。


 とは云っても結局は模擬戦はする羽目に成るのだろうから、こんな断りなんかどう考えても僅かな時間稼ぎくらいにしか成りそうに無い。


 朝食は黒パンに山菜で出汁を取った塩スープ、スープにパンを浸して食べるのが普通な様だ。


 味は不味くは無いけど、日本の一般的な食事に慣れた俺には美味しく感じるなんてどだい無理。


 空腹こそ最高の調味料であると、そう言い聞かせながら必死に口へと詰め込んで咀嚼をした。


 学校は青空教室かとも思ったが、きちんとした掘っ建て小屋に生徒と教師で普通に勉強をする。


 思い過ごしで良かった。


 そして運命の放課後、矢張りというか名前も知らない無能ムーヴ君に再び絡まれると云う訳だ。


 午前中の勉強は日本で云えば国語と算数と社会と道徳、文字を覚えて四則演算をして歴史や地図を覚えて人としての在り方を学ぶ。


 小学一年生~三年生くらいの内容だったから、流石に高校生の俺からしたら割かし容易かった。


 文字もちゃんと読めたしな。


 昼は給食として黒パンに野菜を挟んだサンドイッチであり、これも余り美味しくはなかったけど食えないレベルじゃないのが救いだろう。


 午後の勉強は体育?


 術師は魔法を勉強するのが主で、剣士や槍士などは模擬戦をするのが主な活動と成るらしい。


 大概はランスやスピアが相手をしてくれるが、組合わせを変えていくとどうしても奴に当たる。


「仕方が無いか」


「けっけっけっ!」


 正に、無能ムーヴ君との対戦だったと云う。


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