表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインの兄に転生して  作者: 月星 星成


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/18

後始末

「二人とも、反省は?」

「「ごめんなさい」」


 あの後、俺は……いや、俺たちは母親に怒られていた。


「いくら周りに人がいないからってやりすぎでしょ! 特に、電撃のせいで、地面がめちゃくちゃになったじゃない」

「うっ……」

「ほら、シス。言われてるぞ」

「お父さんも! いくら闘気があるからって、あそこまで全力を出さないでいいでしょ! シスはまだ幼いんだよ!」

「はい……」

「まったく……二人とも似た者同士なんだから」


 母さんはため息をつきながら、俺と父さんを交互に睨む。その視線は鋭いのに、どこか呆れたような、でも心配しているような――そんな複雑な色が混ざっていた。


 でも――


「お父さんとは似てない。こんな理不尽の権化と一緒にしないで」

「あのな……理不尽っていうけど、シスの魔法も理不尽なんだぞ。特に、俺でも苦戦するほどの速さなんて、どうやって出してるんだよ!?」

「反省してない?」

「「すみません」」


 なるほど、この家で一番強いのは父親じゃなくて、母親だったんだ。次は、母親に勝つことを目標にしよう。……勝てるォがしないけど。


「リリア、お兄ちゃんみたいにならないでよ」

「だー!」

「えっ?」

「……シスにはこれが一番効くんだな」


 妹の小さな手が俺の頬をぺちぺち叩く。

 痛くはない。けど、妙に心に刺さる。妹に嫌われるのは、死の次くらいには辛い。


(でも、実際にやりすぎだったから、何も言えないや)


 父親と俺の戦った場所は、かなり荒れていて、特に俺の影魔法や魔石を使った雷撃が深刻なダメージを与えていた。

 え? これを直さないといけないのか? 土魔法なんて使えないぞ。


「お母さん、これ……」

「もちろん、わたしは手伝わないわよ。土魔法を使うことは出来るどね」

「なぁ、もしかして俺も直さないといけないのか……? 俺は魔法すら使えないぞ」

「冒険者時代に鍛えた闘気があるでしょ。甘えないで」


 うん、仕方ないか。

 俺の影魔法でも、これはどうしようもないから、地道に直すしかないんだけどね。


 そうして、俺たちはシャベルで穴が出来たところを埋めていく。

 今の俺は魔力が切れかけていて、電気による身体強化も使えないせいで、こんな単純な動作も、かなりの負担になっていた。


「なぁ」


 そんな時、一緒に地面を直していた父親が話しかけてきた。


「俺と戦ってどう思った?」


 そんなの、一つに決まってる。


「まだまだ、この程度だと全然足りない」


 逆に、この程度で足りると思ったのなら、どうしてそう思ったのか教えてほしい。


「なんでだ? 自分で言ってはあれだけど、俺って冒険者の中でもかなり強い方なんだぞ」

「あのね、僕の戦い方は、お父さんの戦い方に対して相性がいいの。ほら、お父さんの得意なのって、正面からの切り合いでしょ。それに、普段使ってた武器は、木剣なんかじゃなくて、大剣だろうし」

「なんだ、そんなとこまでわかってたのか」


 互いの相性などを考慮するならば、俺はもっとスムーズに勝たないといけなかった。

……少なくとも、切り札を使った時点で俺の負けだ。


「でも、勝ちは勝ちだろ」

「それだけじゃないよ。僕はお父さんに勝つために、癖や戦い方をしっかり研究していたし、魔石っていう武器も用意してたんだ。あれって、準備するのに一週間以上かかるからね。手軽に作れるものじゃないんだ」


 使った魔石は合計で七個。しかも、そのうちの四つは粉々になって、もう二度と使えない。

 これで俺の勝ちだとは、到底言えなかった。


 でも、父親の考えは違った。


「あのな、それもシスの強さなんだぞ。まず、俺はそこまで相手のことを分析できない。お母さんは、分析できるタイプだけど、シスほどじゃない。それに、あのカウンターをする魔法とか、自動操作する魔法って、本来の用途は相手の力を分析するための魔法なんだろ? 自分の強みをしっかり伸ばしている。だから、誇れ」

「でも、お父さんに勝つためだけの魔法もあって……」

「そもそも、魔法って簡単に作れるものじゃないんだよ。だから、自分を否定するのはよせ。分析力と対応力、その二つでシスを超える人なんて、見たことねぇよ!」


 そう言って、父親は俺の頭をガシガシと撫でる。……大雑把で、少し痛いけど、親としての優しさは伝わっていくる。


「……土が頭につくからやめて」

「あのなぁ、ここは『うん、ありがとう!』だろ」

「そういう所だよ、お父さん」


 そうして、父親は俺の頭から手を離し、地面の修復を再開する。

 父さんの手の温度が、まだ頭に残って、少しだけ名残惜しい。


……はぁ、認めるよ。

 ()()()()の子供で、本当に良かった。


―――――――――――――――


 ある森の中


「あーもう! また失敗したー! もっといい方法ないの!?」


 長髪の女性が、何かしらの研究を失敗していた。

 誰もいない、日の光すら届かない。森の中で――


――――――――――――――――――


 ある荒野


「チッ、まだまだだな。この程度で、オレは魔王に勝てねェ」

 

 家が霞むほど大きな魔獣が、何かに押しつぶされたように、全身の血を噴き出して倒れている。

 しかし、その肉塊の上に座っている赤髪の青年に喜んでいる様子は無く、ただ自分の無力さを恨んでいた。


――――――――――――――――――


 ある宮殿


「フフッ、このワインは中々だね」


 豪華な装飾を腰に掛けている青年が、無数の貴族の集まる中、優雅にワインを飲んでいた。

 あらゆる貴族の中心にいる、彼が。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ