プロローグ
俺は……俺は出来ることをすべてやったはずだ。
父親が交通事故を起こして、まだ幼い子供を殺し……母親はその報いを受け、交通事故で死んだ。
残されたのは、俺と妹の二人っきり。せめて妹だけは大学まで行けるようにしようとして、高校を中退して、働き始めてた。……いや、それだけではない。新薬の被験者にもなったし、よくわからない機械の被験者にもなった。
けれど、それは全て無駄になった。
誰よりも、何よりも、この世界よりも大切だって妹が、死んでしまったんだ。
その理由は、勇気のある自殺。
仕事を終え、家に帰った時に、置手紙と共に首を吊った死体があった。
「なんで……こうなったんだろうな」
俺は、今――近くの高層ビルに忍び込んで、この輝かしい街を見下している。
こんなにも、街は輝かしく、人間が毎日を全力で生きているのに、俺たちのような影が生まれてしまう。
そう言えば、昔……小説で読んだことがあったな。
目的のある逃避が飛行で、目的の無い逃避が浮遊。
それならば、今から俺がやろうとしていることは、浮遊しようとして、墜落するだけ。
単純
明解
これ以上なく、簡単なこと。
人類の歴史から見れば、限りなく無に近しい人生で、何一つ成し遂げることが出来なかった俺でも出来るようなこと。
俺のことなんて、誰も覚えてくれない。
俺が生きた痕跡は、この世界に残らない。
記録にも、記憶にも残らなかった偉人達とは異なり、俺は逃げるように足を踏み出し、この世界を抱擁した。
風を切る音が鼓膜を震わせ、重力という鎖から身を解き放つ。
もう、全部がどうでもいい。
そんな思いを胸に、俺は全てを捨てた。
平等で、残酷な暗闇に。
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