キラキラな魔法の使い方
とある世界の片隅に、妖精たちが暮らす森がありました。
妖精の子どもたちは、生まれた時から魔法が使えるのです。
おや? なにやら子どもたちが騒いでいるようです。
「風よ、吹き荒れなさい!」
「うわぁっ、やめてよアルト!」
「そうだぞ、花がめちゃくちゃじゃないか!」
「へっ、知らないよそんなの」
アルトと呼ばれた妖精は、口をとがらせてそっぽを向きました。
するとそこへ、キラキラのオーラをまとった、女神様がやってきました。
「アルト、皆に迷惑をかけてはいけませんよ?」
「迷惑なんてかけていません。俺はただ、魔法の練習をしていただけです」
「ほぉ、練習ですか」
「そうです」
「ならば、人間の国へ行きなさい」
「えっ、なぜですか?」
「そこで、あなたの魔法を試してみなさい」
「……わかりました。絶対いい結果を持って帰りますから!」
そう言って、アルトは姿を消しました。
「皆、大丈夫でしたか?」
「はい……でも、アルトはうまくできるでしょうか」
「さぁ……それは彼次第ですね」
★★★
アルトは長い時間をかけて、人間の国へやってきました。
もう夜になり、人々は眠りについていました。
「うぅっ、寒い……人間は、こんな寒い中暮らしているのか」
寒さのあまり、アルトは体を抱きしめました。
それも、そのはず。
夜になれば気温も下がり、この日は雪も降っていたのです。
アルトは凍えながら、とある家を見つけます。
そこには、少し大きな雪だるまがありました。
「おっ、かわいい雪だるま。そうだ!」
雪だるまを見つめていたアルトは、あることを思いつきます。
「動くようにしてここの人たちを驚かせちゃえ!」
いたずら好きなアルトは、雪だるまに魔法をかけました。
すると、雪だるまに手足が生え、庭を駆けまわります。
「ふふっ、どんな顔をするか、楽しみだ!」
アルトはいたずらな笑みを浮かべながら、近くの茂みに隠れます。
すると、雪だるまは家に近づきます。
そして、窓を数回ノックしました。
少しして、小さな女の子が窓を開けました。
「えっ、雪だるまさん?」
雪だるまは頷いて、庭を駆けまわります。
「すごい、夢みたい!」
女の子は喜び、家から出てきて雪だるまと遊びました。
「よし、楽しんでる楽しんでる」
うれしそうな女の子を見て、アルトもうれしくなりました。
やがて、遊び疲れたのか、女の子は座りこんでしまいます。
「はぁー、疲れた。そうだ、中に入って休もうよ」
女の子は立ち上がり、雪だるまの手を引いていきます。
それを茂みから見ていたアルトは、こっそり窓から覗きます。
「なっ、なにやってんだあの子!」
アルトは、小さな声を出して驚きました。
なぜなら、女の子がストーブをつけていたからです。
部屋の中はあたたまり、次第に雪だるまはとけていきます。
そして、キラキラと輝きながら、雪だるまはとけてしまいました。
悲しくなった女の子は、大きな声で泣いてしまいました。
それに両親が起きてきて、女の子をなぐさめました。
一部始終を見ていたアルトは、とても悲しくなりました。
「なんだか、悪いことしちゃったなぁ……」
自分のしたことを反省したアルトは、静かにその場を離れました。
★★★
「あっ、アルトが帰ってきた!」
「でも、なんだか様子がおかしいぞ」
妖精の子どもたちが迎える中、アルトは見向きもせず飛んでいきました。
やってきたのは、女神様のところでした。
「お帰りなさい、アルト。魔法は、うまく使えましたか?」
優しい女神様の声に、涙をこらえていたアルトは泣きだしてしまいました。
「おやおや、なにか悲しいことでもありましたか?」
「うぅ……俺のせいで、人間の女の子に、辛い思いをさせちゃったんです」
泣きじゃくるアルトの頭を、女神様は優しく撫でます。
「あなたは、その子に悪いことをしたと思っているんですね」
「はい……」
「それなら、安心しなさい」
女神様は微笑み、近くの池で杖を振りました。
すると、キラキラと水面が光り、ある光景をうつしました。
「これは……」
「この映像は、その女の子の夢の中です」
二人が見ている映像は、女の子と雪だるまがかけっこをしている夢でした。
その夢の中の女の子は、とても明るい笑顔だったのです。
それを見て、アルトはうれしくなりました。
「俺、やっとわかりました」
振り向いたアルトの顔は、もう泣き顔ではありませんでした。
「女神様、魔法はいたずらで使ったら、ダメなんですね……」
「そうですよ。私たちの魔法は、誰かを笑顔にできるものなんです」
「俺、もういたずらはしません!」
「いい心がけです。これからは、皆と仲良くするんですよ」
「はい!」
そして、アルトは仲間たちの元に飛んでいきます。
「アルト、少し成長しましたね……」
女神様は優しく微笑み、その背中を見つめていたのでした。
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