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第12話:大阪到着・初めての挫折

 新幹線。


 のぞみ。


 東京から大阪へ。


 三人は、車内の座席に座っていた。


 みつる、窓際。


 キョウカ、通路側。


 アカリ、真ん中。


 みつる、窓の外を見つめる。


 景色が流れていく。


 富士山。


 田園風景。


 そして――


 西へ。


「初めて、東京を出るな」


 みつる、呟く。


「え?」


 キョウカ、驚く。


「みつるさん、東京から出たことなかったんですか?」


「ああ」


 みつる、頷く。


「辺境伯として、この地に配属されてから、ずっと東京だった」


「辺境伯…」


 アカリ、小声で呟く。


 キョウカと目を合わせる。


 二人、苦笑する。


(もう慣れた)


「大阪か…」


 みつる、スマホを取り出す。


 アプリ『タ・テム・エ』を開く。


 画面。


 通常のマッチング画面。


 でも――


 画面の隅、極小の文字。


 1ポイントくらいの大きさ。


『CHRONO MAGARI - 時空歪曲検知中』


 0.3秒で消える。


 みつる、気づかない。


 老眼だ。


 大阪のマーカー。


 ★★★(2件)


「レベル3が、2件」


 みつる、画面を凝視する。


「今までで最も危険な地域だ」


「でも、大丈夫ですよね」


 アカリ、前向きに言う。


「私たち、3人いますから」


「ああ」


 みつる、頷く。


「ギルドとして、必ず成功させる」


 キョウカ、Macを開く。


 スプレッドシート。


```

【大阪遠征計画】


到着:14:30 新大阪駅

宿泊:ビジネスホテル(1泊5,000円×3人)

ターゲット1:梅田周辺(★★★)

ターゲット2:難波周辺(★★★)

予算:約15万円(2泊3日)

```


「計画通りですね」


 キョウカ、確認する。


「ああ」


 みつる、真剣な顔で頷く。


 その時――


 みつるのスマホが、震えた。


 通知。


 アプリ『タ・テム・エ』。


 でも、いつもと違う。


 画面が、一瞬暗くなる。


 そして――


 文字が表示される。


『警告:高濃度の時空歪曲を検知』


『CHRONO MAGARI システム - レベル4検知』


『注意:対象は狡猾。逃走の可能性あり』


「…!」


 みつる、目を細める。


 鑑定。


 スキルを発動。


 画面を解析しようとする。


 でも――


 画面が、ブレる。


 ノイズが走る。


 そして――


『解析拒否』


 一瞬だけ表示される。


 システムが、みつるの鑑定を拒否した。


 0.5秒。


 すべて消える。


 通常の画面に戻る。


『大阪・梅田周辺にて高濃度の瘴気を検知しました』


『相性度:★★★★』


「…!」


 みつる、冷や汗が流れる。


(今の…何だ…?)


(鑑定が、拒否された…?)


(このアプリは…意思を持っているのか…?)


「レベル4…?」


 みつる、呟く。


「今まで見たことがない…」


「どうしました?」


 キョウカ、覗き込む。


 画面を見る。


 でも、すでに通常表示に戻っている。


「いや…」


 みつる、首を振る。


「気のせいかもしれん」


 でも――


 内心では、確信していた。


(大阪には、今までとは違う何かがある)


(より強大な瘴気が)


(そして…このアプリ自体が…)


---


 14:30。


 新大阪駅。


 三人、ホームに降り立つ。


「着きましたねぇ」


 アカリ、周囲を見回す。


「大阪…初めてですわ」


「俺もだ」


 みつる、真剣な顔で言う。


「新たな戦場だ」


 三人、改札を出る。


 地下鉄で梅田へ。


 15:00。


 梅田駅。


 人、人、人。


 東京以上の人混み。


「すごい人でんなぁ…」


 キョウカ、圧倒される。


「ああ」


 みつる、スマホを見る。


 アプリ。


 反応が、強くなっている。


「この辺りだ」


 三人、梅田の街を歩く。


 高層ビル。


 商業施設。


 そして――


 みつる、立ち止まる。


「…!」


 目を細める。


 鑑定。


 前方、50メートル。


 ビルの前に立つ、女性。


 三十代くらい。


 スーツ。


 疲れた顔。


 スマホを見つめている。


 そして――


 彼女の背後に、黒いモヤが見える。


 今までとは違う。


 濃い。


 大きい。


 渦巻いている。


 そして――


 モヤが、まるで生き物のように動いている。


 視界に、ゲーム風のステータスウィンドウが浮かび上がる。


```

【対象:???】

レベル:35

状態異常:過労(極度)、完璧主義、自己犠牲

目標:完璧でありたい

廻呪タイプ:仕事中毒型

危険度:★★★★

特性:狡猾・逃走・宿主防衛

```


「レベル35…」


 みつる、息を呑む。


「今までで最高だ」


「特性…狡猾…?」


 キョウカ、画面を見る。


「これ、逃げるってことですか?」


「おそらく」


 みつる、真剣な顔で頷く。


「慎重に行くぞ」


「あの人…」


 キョウカ、女性を見る。


 そして――


 気づく。


「あれ…私…?」


 女性の姿。


 スーツ。


 疲れた顔。


 スマホを見つめる。


 かつてのキョウカと、同じ。


「キョウカはん?」


 アカリ、不安そうに見る。


「大丈夫ですか?」


「…はい」


 キョウカ、深呼吸する。


「大丈夫です」


 みつる、前に出る。


「行くぞ。だが、包囲するように」


 三人、女性に近づく。


 距離、10メートル。


 5メートル。


 そして――


 女性が、顔を上げる。


 三人と目が合う。


「…?」


 困惑した表情。


 でも――


 その瞬間、彼女の背後のモヤが激しく渦巻く。


 女性の目が、一瞬、鋭くなる。


(危険を察知した)


 みつる、確信する。


「あの…なんやろ…?」


 女性、関西弁。


 後ずさる。


 でも、その動きが不自然に速い。


 みつる、真剣な顔で言う。


「君は、『仕事中毒型』の瘴気に憑かれている」


「…は?」


 女性、さらに後ずさる。


「なに言うてはるんですか…?」


「今から、それを祓う」


「ちょ、ちょっと待ってぇな…」


 女性、急に時計を見る。


「あ、会議が…!」


「待て!」


 みつる、手を伸ばす。


 でも――


 キョウカが、前に出る。


「待ってください」


 女性を見る。


「あなた、疲れてますね」


「…え?」


「仕事、大変ですよね」


 キョウカ、優しく言う。


「完璧でいなきゃいけない。ミスは許されない。常に結果を出さなきゃいけない」


「…」


 女性、キョウカを見る。


 この人は――


 わかってはる。


「私も、そうでした」


 キョウカ、微笑む。


「でも、救われました」


「救われた…?」


「はい。この人に」


 キョウカ、みつるを指す。


 女性、みつるを見る。


 ヨレヨレのスーツ。


 四十歳くらい。


 真剣な顔。


「…あんた、誰なん?」


「俺は、祓い師だ」


 みつる、真顔で答える。


 女性、しばらく黙る。


 そして――


 小さく笑う。


「祓い師…でっか」


「ああ」


「変わった人やなぁ」


「よく言われる」


 みつる、頷く。


 女性、少し表情が緩む。


「でも…」


 小さく呟く。


「もう、限界なんですわ」


「…」


「毎日、終電。休日も仕事。完璧やないとあかん。せやけど、どんなに頑張っても、終わらへん」


 涙が浮かぶ。


「もう…楽になりたいわ…」


「大丈夫です」


 キョウカ、女性の手を握ろうとする。


 でも――


 その瞬間。


 女性の背後のモヤが、激しく膨れ上がった。


 女性の目が、再び鋭くなる。


「でも…」


 女性、急に冷たい声になる。


「まだ、資料が終わってへん」


「え…?」


「会議の準備も」


「ちょっと待って…」


 キョウカ、驚く。


「プレゼンの修正も」


 女性、後ずさる。


「メールの返信も」


 さらに後ずさる。


「まだ、仕事が残ってんねん!」


 そして――


 走り出した。


 人混みの中へ。


「待て!」


 みつる、追いかける。


 キョウカとアカリも追う。


 でも――


 梅田の人混み。


 女性の姿が、すぐに見えなくなる。


「くそ…!」


 みつる、立ち止まる。


 周囲を見回す。


 もう、見えない。


「逃げられた…」


 キョウカ、息を切らしながら言う。


「あの人…なんで…」


「廻呪だ」


 みつる、真剣な顔で言う。


「彼女の意思ではない。瘴気が、彼女をコントロールしている」


「コントロール…?」


「ああ。彼女は、救われたくても、逃げてしまう」


 みつる、拳を握りしめる。


「今までの瘴気とは、違う」


「狡猾…」


 アカリ、呟く。


「アプリに書いてありましたね」


「ああ」


 みつる、スマホを取り出す。


 アプリを確認する。


 でも――


 女性の反応は、もう消えている。


「完全に見失った…」


 みつる、悔しそうに呟く。


 その時――


 スマホが震えた。


 画面が暗くなる。


 そして――


 文字が表示される。


『CHRONO MAGARI システム - 警告』


『時空歪曲レベルが臨界点に到達』


『対象の廻呪は、宿主を守るために逃走します』


『本システムの真の目的:時の歪みを持つ者の回収』


『あなたは、選ばれました』


『これからの戦いは、より困難になります』


『準備を整えてください』


 その瞬間――


 みつるの脳裏に、映像が流れ込む。


 フラッシュバック。


 異世界。


 戦場。


 辺境伯として、最後に戦った相手。


 巨大な魔王。


 時を操る力。


 そして――


 その名前。


『CHRONO MAGARI - 時の大魔王』


「…!」


 みつる、息を呑む。


 スマホを落としそうになる。


(CHRONO MAGARI...!)


(それは、俺が異世界で最後に戦った『時の大魔王』の名前ではないか!?)


 記憶が蘇る。


 辺境伯時代。


 最後の戦い。


 時の大魔王との戦闘。


 そして――


 気がついたら、この世界にいた。


(まさか…)


(俺の異世界転生は…)


(勘違いではなかった…?)


 5秒。


 表示される。


 そして――


 画面が元に戻る。


 通常のアプリ画面。


 みつる、呆然とする。


「みつるさん?」


 キョウカ、心配そうに見る。


「どうしました?」


「…」


 みつる、スマホをポケットにしまう。


 手が震えている。


「何でもない」


 でも――


 内心では、確信していた。


(このアプリは、ただのマッチングアプリではない)


(俺が異世界から来たことを…知っている)


(そして、時の大魔王…CHRONO MAGARI…)


(俺は、選ばれた…?)


「今日は、もう引き上げよう」


 みつる、二人を見る。


「あの女性を見失った以上、今日はこれ以上できない」


「はい…」


 キョウカとアカリ、頷く。


 三人、ホテルへ戻る。


 初めての「失敗」。


 みつるの表情は、暗かった。


---


 その夜。


 ビジネスホテル。


 それぞれの部屋。


 キョウカは、Macbook Proを開いていた。


 新しいスプレッドシート。


```

【逃走対策マニュアル】


問題:レベル35以上の廻呪は、宿主を守るために逃走する


対策案:

1. 詠唱エリアの確保

- 事前に人混みを避けた場所に誘導

- アカリのSNSで囮イベントを開催


2. 包囲網の構築

- 3人で三角形に配置

- 逃走ルートを事前に塞ぐ


3. 初動の高速化

- 接触から詠唱まで30秒以内

- キョウカの共感フェーズを短縮


4. 心理的アプローチ

- 廻呪が逃走を判断する前に、

宿主の「救われたい」気持ちを最大化


予算影響:

- 囮イベント費用:約5万円

- 緊急予備費から捻出

```


 キョウカ、タイピングを続ける。


 徹夜で作業。


(次は、逃がさない)


(マネジメントで、必ず勝つ)


---


 アカリは、スマホを見つめていた。


 インスタ。


 投稿画面。


 でも――


 何も書けない。


(今日の失敗を、投稿する…?)


(いや、違う)


 画面を閉じる。


(この失敗をバズらせることはできない)


(祓いの力は、人を救うものでなければ…!)


 初めて。


 アカリは、「いいね!の欲求」ではなく、


 「倫理観」で行動した。


(明日、成功したら、投稿する)


(それまでは、沈黙)


 スマホを置く。


---


 みつるは、詠唱日記を開いた。


---


【詠唱日記 11日目】


大阪、梅田にて、

初めての討伐を…試みた。


『仕事中毒型』。

レベル35。


今までで最高難度の瘴気。


だが――


失敗した。


対象の女性は、逃走した。


詠唱すら、できなかった。


廻呪が、彼女をコントロールし、

俺たちから逃げるように仕向けた。


「狡猾」な廻呪。


今までとは、明らかに違う。


そして――


重大な発見があった。


アプリに、メッセージが表示された。


『CHRONO MAGARI システム』


その瞬間、俺の脳裏に、

異世界での記憶が蘇った。


辺境伯時代、最後に戦った相手。


『時の大魔王 - CHRONO MAGARI』


まさか…


俺の異世界転生は、勘違いではなかったのか?


このアプリは、俺が異世界から来たことを知っている。


そして、俺は「選ばれた」らしい。


何のために?


これからの戦いは、より困難になる。


だが、恐れはしない。


明日、再び梅田へ向かう。


あの女性を、必ず救う。


そして――


この「CHRONO MAGARI」の正体を、

突き止める。


(初めての失敗だ。

 辺境伯時代も、何度も失敗した。

 だが、そこから学び、成長した。

 今回も、同じだ)


(そして…もし俺の異世界転生が真実なら…)


(この戦いの意味が、変わる)


---


 キョウカも、日記を書いていた。


---


【祓い師活動記録 Day 11】


大阪、梅田での初討伐、失敗。


ターゲットは、仕事中毒の女性。


関西弁。


彼女を見た瞬間、

かつての自分を見ているようだった。


完璧主義。

自己犠牲。

終わらない仕事。


私も、そうだった。


でも――


彼女は、逃げた。


「まだ、仕事が残ってんねん!」


廻呪が、彼女をコントロールしていた。


みつるさん、詠唱すらできなかった。


彼の表情が、すごく暗かった。


初めて見る、みつるさんの挫折。


でも――


私は知っている。


挫折から、人は成長する。


今夜、逃走対策マニュアルを作成した。


次は、絶対に逃がさない。


マネジメントで、勝つ。


(大阪のたこ焼き、食べたけど、

 今日はあんまり美味しく感じなかった。

 失敗って、こんなに重いんだな)


---


 アカリも、日記を書いていた。


---


【私の新しい人生 Day 8】


大阪、初日。


梅田で、初めての失敗。


ターゲットに逃げられた。


みつるさん、すごく悔しそうだった。


キョウカさんも、落ち込んでた。


私も、何もできなかった。


インスタには、投稿しなかった。


今日は、投稿する気になれなかった。


でも、それは、

いいね!が欲しくないからじゃない。


この失敗をバズらせることは、

祓いの力を汚すことになる。


祓いの力は、人を救うものでなければ。


それが、私の倫理観。


初めて、いいね!以外の理由で、

行動を決めた。


明日、成功したら、投稿する。


絶対に、あの人を救う。


(失敗って、辛い。

 でも、これを乗り越えたら、

 もっと強くなれる気がする)


---


 深夜。


 みつるは、スマホを見つめていた。


 アプリ『タ・テム・エ』。


 通常の画面。


 でも――


 あのメッセージは、確かに見た。


 そして――


 フラッシュバック。


 異世界での記憶。


 時の大魔王。


 CHRONO MAGARI。


「時の歪み…」


 みつる、呟く。


「俺が異世界から来たのは…真実だったのか」


 そして――


 はっと気づく。


「このアプリは、俺が異世界から来たことを…知っている」


 スマホを握りしめる。


 手が震える。


(このCHRONO MAGARIは…)


(時の大魔王と、何か関係があるのか?)


(俺が選ばれた理由は…?)


(そして、より困難になる戦い…)


 窓の外を見る。


 大阪の夜景。


 光が、広がっている。


「明日、必ずあの女性を救う」


 小さく呟く。


「そして――」


「このCHRONO MAGARIの正体を、突き止める」


 拳を握りしめる。


 初めての挫折。


 だが、これは終わりではない。


 始まりだ。


 そして――


 もし俺の異世界転生が真実なら。


 この戦いの意味が、すべて変わる。


---


(第12話・最終回・終)


---


【第1章・完】


---


【祓い師みつる、全国を行く】


【次章予告】


レベル35の狡猾な廻呪。

逃走対策マニュアル。

そして、CHRONO MAGARIの真実。


みつるの異世界転生は、勘違いではなかった。

時の大魔王との因縁が、今、再び動き出す。


第2章:大阪編・逆襲の祓い師


【To be continued...】


---



とりあえず第1部は完了となります。


ご愛読ありがとうございました。


第2部は皆様の評価を参考に執筆したいと思います。

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