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第11話:ギルド確立・新たな旅立ち

 数日後。


 サイゼリヤ。


 窓際の席に、三人が座っていた。


 みつる、キョウカ、アカリ。


 テーブルには、ピザ。


 マルゲリータ。


 三人で分け合う。


「では、今週の活動報告を」


 みつる、真顔で言う。


 キョウカ、Macbook Proを開く。


 スプレッドシート。


```

【廻呪討伐管理シート】


| 日付 | 場所 | ★ | 結果 | 担当 |

|------|------|---|------|------|

| 11/1 | コンビニ | ★★☆ | 成功 | みつる |

| 11/3 | カフェ | ★★☆ | 成功 | みつる |

| 11/5 | 駅前 | ★★☆ | 成功 | みつる+キョウカ |

| 11/7 | 渋谷 | ★★★ | 成功 | みつる+キョウカ |

| 11/9 | 公園 | ★★★ | 成功 | 3人体制 |

```


「5件の討伐、すべて成功」


 キョウカ、報告する。


「素晴らしい」


 みつる、頷く。


「ギルドとして、順調だな」


「はい」


 アカリ、スマホを取り出す。


「私からも、報告があります」


 画面を見せる。


 インスタの投稿。


---


「【ご報告】

 私、アカリは、新しい活動を始めます。


 『祓い師活動』の広報担当として、

 和歌の力を、もっと多くの人に伝えていきます。


 いいね!やフォロワーの数に縛られるのではなく、

 誰かの心を軽くするために。


 これからも、よろしくお願いします。


 #和歌おじさん #祓い師活動 #新しい私」


---


 いいね!:12,345。


 コメント:678件。


「すごい反響です」


 アカリ、嬉しそうに言う。


「でも、今は数字を気にしていません」


「ほう」


 みつる、感心する。


「君は、承認欲求の瘴気から完全に解放されたのだな」


「はい」


 アカリ、微笑む。


「今は、誰かを救いたいという気持ちだけです」


「それでいい」


 みつる、ピザを一切れ取る。


「ギルドの広報担当として、期待している」


「ありがとうございます!」


 アカリ、力強く頷く。


 キョウカ、スクロールして別のシートを見せる。


```

【ギルド体制】


みつる(Lv.3)

- 役割:戦闘担当

- スキル:鑑定Lv.7、詠唱

- 装備:ヨレヨレスーツ、指輪


キョウカ(Lv.1)

- 役割:マネジメント担当

- スキル:鑑定Lv.1、データ分析

- 装備:Macbook Pro、スプレッドシート


アカリ(Lv.1)

- 役割:広報担当

- スキル:SNS運用、影響力

- 装備:スマホ、フォロワー8万人

```


「完璧な布陣だ」


 みつる、満足げに頷く。


「だが、油断はするな」


「はい」


 二人、頷く。


 その時――


 みつるのスマホが震えた。


 通知。


 アプリ『タ・テム・エ』。


『近くに素敵な女性がいます!今すぐチェック!』


「…ん?」


 みつる、アプリを開く。


 でも――


 今までとは違う表示。


『システムアップデート完了』


 画面が一瞬、暗くなる。


 そして――


 一瞬だけ、画面の端に文字が表示される。


『CHRONO MAGARI - 時の歪み検知システム』


 0.5秒。


 すぐに消える。


 みつる、気づかない。


 キョウカも、気づかない。


 画面が明るくなる。


『新機能:エリア拡張』


『全国の瘴気を検知できるようになりました』


「…!」


 みつる、画面を凝視する。


 地図が表示される。


 日本全国。


 そして――


 各地に、マーカーが表示される。


 東京:★★☆(3件)


 大阪:★★★(2件)


 京都:★★☆(1件)


 福岡:★★★(1件)


「これは…」


 みつる、キョウカとアカリに画面を見せる。


「全国に、瘴気が分布している」


「全国…?」


 キョウカ、驚く。


 画面を見る。


 大阪、京都、福岡…


 各地のマーカー。


(まるで、誰かが意図的に『物語の舞台』をセットしているみたい…)


 キョウカ、内心で呟く。


 でも、口には出さない。


「ということは…」


「ああ」


 みつる、真剣な顔で言う。


「俺たちの戦いは、この渋谷だけで終わらない」


 三人、画面を見つめる。


 地図上の、無数のマーカー。


 それぞれに、救いを求める人がいる。


「…行きましょう」


 アカリが、口を開く。


「全国に」


「そうだな」


 みつる、頷く。


「ギルドとして、全国を回る」


「でも…」


 キョウカ、不安そうに言う。


「お金は…?」


「…」


 みつる、沈黙する。


 通帳残高を思い出す。


 残り1年半分の生活費。


 全国を回るには、足りない。


「…考えよう」


 みつる、真面目な顔で言う。


「ギルドの資金調達を」


「あの」


 アカリが、手を挙げる。


「私、広告収入があります」


「広告収入?」


「はい。インスタとYouTubeで、月20万くらい」


「…!」


 みつる、目を見開く。


「20万…!それは、強力な資金源だ!」


「でも、全国を回るには足りないかも…」


「いや、十分だ」


 みつる、力強く頷く。


「ギルドメンバー3人で分担すれば、可能だ」


 キョウカ、Macを開く。


 新しいシートを作成。


```

【全国旅程・予算試算】


新幹線代(往復):約3万円/人

宿泊費:約5,000円/泊

食費:約2,000円/日

その他:約1万円


月20万円 ÷ 3人 ≒ 約6.6万円/人


週末旅行(2泊3日):約5万円/人

月3回 × 5万円 = 15万円


残り:5万円(緊急予備費)

```


 キョウカ、画面を見つめる。


(新幹線代と宿泊費を考えると、月20万ではカツカツだ)


(もし大きな廻呪討伐に失敗して、予定が狂ったら…?)


 シビアな計算。


 でも、口には出さない。


「では…」


 キョウカ、二人を見る。


「旅程を組みましょう」


 三人、画面を見る。


 全国の瘴気マップ。


「まずは、東京周辺から」


 みつる、画面を指す。


「そして、西へ」


「大阪、京都、福岡…」


 アカリ、呟く。


「全部、回るんですか?」


「ああ」


 みつる、真剣な顔で言う。


「これが、俺たちの使命だ」


 キョウカ、内心で呟く。


(みつるさん、このギルドは、あなたの『勘違い』とアカリさんの『バズり』と、私の『マネジメント』という、極めて不安定な収益源で成り立っているんですよ)


 でも――


 微笑む。


(でも、まあいいか)


 三人、顔を見合わせる。


 そして――


 笑顔で頷く。


「では、出発の準備をしよう」


 みつる、立ち上がる。


 キョウカとアカリも立ち上がる。


 三人、サイゼリヤを出る。


 新たな旅が、始まろうとしていた。


---


 数日後。


 三人は、東京駅に立っていた。


 大きなバックパック。


 みつる、ヨレヨレのスーツ。


 そして、背中には大きなバックパック。


(このバックパックには、予備のヨレヨレのスーツ、携帯式詠唱ノート、そして保存食が入っている)


 みつる、内心で確認する。


(カロリーメイトと乾パン。辺境伯時代の教訓だ)


(長期行軍では、保存食が生命線になる)


 真剣な顔。


 キョウカ、カジュアルな服装、Macbook Pro。


 アカリ、白いブラウス、スマホ。


「では、行くか」


 みつる、二人を見る。


「ああ」


 キョウカ、頷く。


「はい!」


 アカリ、力強く頷く。


 三人、新幹線のホームへ向かう。


 行き先は――


 大阪。


 西へ。


 全国へ。


 祓い師として、人々を救う旅が始まった。


 そして――


 この旅が、さらに大きな出会いと、

 さらに大きな戦いへと繋がることを、


 アプリ『タ・テム・エ』の真の正体、

 『CHRONO MAGARI - 時の歪み検知システム』の意味を、


 この時の彼らは、まだ知らなかった。


---


 その夜。


 みつるは、詠唱日記を開いた。


---


【詠唱日記 10日目】


今日、ギルドの定例会議を行った。


サイゼリヤにて。


5件の討伐、すべて成功。

ギルドは順調に機能している。


アカリの広報活動も、順調だ。

彼女は、いいね!の呪縛から完全に解放され、

誰かを救うという使命に生きている。


素晴らしい。


そして、重要な変化があった。


アプリ『タ・テム・エ』が、

システムアップデートした。


全国の瘴気を検知できるようになった。


東京、大阪、京都、福岡…

日本全国に、救いを求める人々がいる。


俺たちは、決めた。


全国を回る。


ギルドとして。


資金は、アカリの広告収入を活用する。

月20万。十分な資金源だ。


キョウカが、旅程を組む。


俺たちの戦いは、新たな段階に入った。


渋谷から、日本全国へ。


祓い師として、人々を救う旅が始まる。


バックパックには、予備のスーツ、

携帯式詠唱ノート、そして保存食を入れた。


辺境伯時代の教訓だ。

長期行軍では、準備が生死を分ける。


(通帳残高を気にしなくて済むのは、

 ありがたい。

 辺境伯時代も、資金繰りには苦労した。

 ギルドの財務担当がいるのは、心強い)


---


 キョウカも、日記を書いていた。


---


【祓い師活動記録 Day 10】


今日、定例会議。


サイゼリヤで、ピザ食べながら。


これが、私たちのギルド拠点。


活動報告、順調。


アカリさんの広報活動も、すごい。


インスタのいいね!12,345。


でも、彼女は数字を気にしていない。


本当に変わった。


そして、アプリがアップデート。


全国の瘴気が見えるようになった。


一瞬、画面に変な文字が見えた気がしたけど、

すぐ消えた。


気のせいかな。


みつるさん「全国を回る」って。


正直、驚いた。


でも――


やってみたい。


全国の人を、救いたい。


資金は、アカリさんの広告収入。


月20万。


予算試算した。


正直、カツカツ。


新幹線代と宿泊費で、ほぼ使い切る。


もし討伐に失敗して予定が狂ったら、

緊急予備費も尽きる。


このギルドは、

みつるさんの「勘違い」と、

アカリさんの「バズり」と、

私の「マネジメント」という、

極めて不安定な収益源で成り立っている。


でも、まあいいか。


新しい旅が始まる。


楽しみ。


不安だけど、楽しみ。


(完璧なキャリアウーマンだった頃の私、

 想像もできなかっただろうな。

 ピザ食べながら、全国の祓い師活動の計画を立てて、

 カツカツの予算で旅に出るなんて)


---


 アカリも、日記を書いていた。


---


【私の新しい人生 Day 5】


今日、定例会議。


サイゼリヤで。


みつるさん、キョウカさんと、

ピザ食べながら活動報告。


なんか、すごく楽しい。


インスタの投稿、12,345いいね!


でも、もう数字は気にしていない。


誰かを救えているなら、それでいい。


そして、アプリがアップデート。


全国の瘴気が見えるようになったって。


みつるさん「全国を回る」って言った。


私「行きましょう」って即答した。


だって――


全国に、救いを求める人がいるから。


私の広告収入、月20万。


これを、ギルドの資金に使う。


今まで、自分のためだけに使ってたお金。


これからは、誰かのために。


それが、私の新しい使命。


明日から、旅の準備。


全国を回る。


ワクワクする。


(いいね!の数を追いかけてた頃の私、

 こんなに心が軽くなるなんて、

 思ってもみなかった)


---


(第11話・終)

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