おじいさーん!
(やばい…どうしよう…)
うつ手が完全にない訳ではない。だが、その策は、前に鬼やおじいさんに使った、強引な手段。その人らしさが失われるため、あまり俺は好まない。
(うぅ…し、仕方ない。やるか。)
「悪く思うなよ」
《動くな!》
「!!」
一瞬こちらに気がついたようだが、洗脳の能力は発動した。これでこっちのもんだ。もうおばあさんが動くことはない。俺が解除するまで。
「さてと。連絡しとくか。」
もう、昼というには遅い時間帯になってきた。太陽も少しずつ赤み掛かっていく。そんな中、俺はおばあさんを拘束していた訳だが、今、Iから緊急命令が入った。何かあったらしい。
「こちらC。何があった?」
「Cか、ちょうどいい。佐刈山に向かって欲しい。」
「え?ああ、おじいさんの行った山か。分かりました。でも、なんでですか?」
「いいか、落ち着いて聞けよ。」
ゴクリ。
俺はただならぬ空気を漂わせているIに威圧され、唾を飲んだ。
「いま、おじいさんがクマに遭遇した。」
「は?」
「いいか、もう一度言うぞ。おじいさんがクマに遭遇した。」
「いや、早く言えよ!」
俺は急いで走り出した。一瞬イレギュラーすぎて、脳が停止してしまった。熊?熊いるんだあの山…
はぁ、はぁ、
「こ、こちらC、ただいま現場に到着しました。」
「あぁ。その辺におじいさんはいないか?」
「えーっと…」
俺は辺りを見回したが、おじいさんらしき人は…
「!!」
クマにやられた後のおじいさんが地面に倒れていた。
「おじいさーん!」
俺は駆け足で近寄った。手首に触れる。脈はない。もちろん息もない。
「…」
「こちらC。おじいさん、死亡。」
「そうか。了解した。」
「確かお前は…Gだったよな。」
声が変わっていたため、Iではないとわかった。それ以外で手が空いていそうだったのがGだった。俺はこの声がGであると予想した。まぁ、当たっていたが。
「は、はい。」
「アレをお願いできるか?」
「え、僕でよろしいのですか?」
「近くにお前しかいないだろ?」
「確かに。」
おじいさんの死体と友に待つこと2分ぐらい。通信が入った。
「こちらG。準備整いました。」
「おう。ありがとう。」
俺は深く息を吸い、集中を入れ直す。そして、極限まで高めた集中力を使い発した。
「リセット、発動。」
「ゔっ、」
何かしらにものすごい力で引っ張られている。姿形は見えない何かに。
目が覚めると、おじいさんは川へ行き、おばあさんは芝刈りばかりに行こうとしていた。先ほどの光景…これがリセットの能力である。
次回「どんぶらこ」