桃太郎編開幕
「こちらC。もう少しで鬼ヶ島に到着します。」
「了解した。気を引き締めろよ。」
「よし!行くか!」
「ふぅ、やっと着いた。モーターボートが欲しいな…」
そんな心の中の本音をダダ漏れで呟いていると、明らかにボスがいそうな洞窟から鬼が現れた。
(意外とでかい…)
大きさは2メートル以上。人間より若干高いかなってぐらいだ。
(仕方ない。腹を括るか…)
俺は覚悟を決めて、前に進んだ。
「お前は何者だ!」
「私はコードネームC、繋ぎ人です。」
「おぉ、繋ぎ人さんか!どうぞどうぞ。中にはいって。」
「あぁ、ありがとう。」
俺は目の前の鬼に案内されるまま進んだ。
この鬼たちは、本来桃太郎に討伐されるはずの鬼たちだ。本来ならば。俺たちの知っているストーリーでは、鬼は悪さをしていたから討伐された。と言うのが大体の内容だ。しかし、目の前の鬼たちは、めっちゃ社交的で、この前はゴミ拾いボランティアに参加していた。そんな彼らを桃太郎は討伐するだろうか。よっぽどの鬼嫌いでない限りあり得ないだろう。もう大体わかったと思うが、俺たち繋ぎ人の役目は、こう言ったズレてしまった物語を元に戻すことだ。ときには強引な手を使い方もある。
「で、今日はどうなさったんですか?」
「いやー、お願いがありまして…」
俺は鬼たちに村を襲撃して欲しいと伝えた。すると、鬼たちの長は言った。
「彼ら人間は私たちに何もしていません。だから我々も彼らに何もしません。」
うん。正論。これを言われてはどうしようもない。
「本当に襲う気はないんですね。」
「あぁ。勿論だ。」
「そうですか…残念です。」
前にも述べたが、我々はときには強引な手段を取ることもある。だが、あまりこう言ったやり方は好みじゃない。そうなのだが、仕事なので仕方ない。
《人間は敵だ!》
「!!」
「人間…て…き…?」
「人間は…てき…だ…」
俺が鬼たちに使ったのは洗脳の能力。俺たち繋ぎ人には、物語の中でのみ、洗脳する能力が与えられる。そして、この洗脳はしばらくの間解けない。軽い洗脳、動くなとか、喋るなとかは簡単なものに分類される。そう言ったものは、任意で解くことができる。精神を書き換えるもの、今回のように、人間を敵と思わせたりするのは、しばらくの間、洗脳を解くことができない。この鬼たちも、本当ならば平和に暮らしたいだろうが、このままでは桃太郎がただの子供で終わってしまう。それは避けねばならない。理由はわからんが、避けなければならない。
「こちらC。任務完了しました。」
「了解。直ちに次のポイントに向かいたまえ。」
「了」
どうも。音坂波です。桃太郎編第一話楽しんでいただけたでしょうか。次回は多分来週です。お楽しみに。