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世界一素敵なゴリラと結婚します  作者: 志岐咲香
番外編:禁断のBL本編

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【最終話】母の教えと誤学習

 それは、発禁本処分の騒ぎが落ち着き始めた頃のことだった。


 自室へ資料を取りに戻ったとき、隣の寝室から物音がした。


「……リオス?」


 この時間には、すでにベッドメイキングは終わっているはずだった。

 不審に思って寝室への扉をゆっくりと開いた。


 ベッドのそばで、しゃがみ込んでいる小さな背中が見えた。

 そこにいたのは――息子のローランドだった。


「え? ローランド?」

「……」


 ローランドは返事をしなかった。

 集中している時は返事をしないのだ。


 どうやら、本を読んでいるらしい。

 書物らしきものがちらりと見えた。

 もうすぐ三歳になるローランドは、最近少し文字を読めるようになった。

 きっとおもしろい絵本を読んでいて、私の声が聞こえないのだろう。


 たしか今は、お昼寝の時間だったはずだ。

 寝付けずに私の部屋に遊びに来たのかもしれない。


(何の絵本かしら? 『蟻のアリア』?)


 ローランドの背後から、ひょいと覗き込んだ。


 そこには、きっちりと服を身につけた男が、半裸の男性をベッドの上で組み敷いている絵が描かれていた。


 ――そう、あの本だった。


「ロ、ローランドっ!?!? 何してるの!?」

「え?」

「なななぜ、その本を!?」

「これ、なんのほん?」


 有無も言わさずに私はその本を奪い、背中に隠した。


(どうしてローランドがこれを!?)


 これは発禁本だ。

 持っていることが王国風紀監察庁に知られたら回収されてしまう。

 売りに出したのは二十冊だが、記念に自分の分も用意していた。

 使用人の目に触れぬよう、ベッドの下に隠していたのだ。


 もし王国風紀監察庁に知られて捜査されると、最悪の場合、これを書いたのが私ということまで知られてしまう。


 そしてなにより、子どもの教育に悪い。

 ……かなり、特殊な内容なのだ。


 だから発禁本になったのだと、今さらながら理解してしまった。

 私は、何というものを書いてしまったのだろう。


「おかあさま! まだよんでるとちゅうなの!」

「これはっ、まだローランドには早いわっ」

「はやい?」

「そう! これはローランドは読んではいけない本なの」

「なんで?」


 ……言えない。

 何を言っても墓穴を掘りそうで、何も言えなかった。


 沈黙していると、ローランドが実力行使に出た。

 私の背中に、小さな手が伸びてくる。


「かーえーしーてー」

「だ、だめよっ」


 何を言っても、ローランドは無理やり取ろうと手を伸ばしてくる。

 もうすぐ三歳とは思えない力強さで、押し負けそうだった。


「こ、これは……愛の本なの! 最上級の愛情表現が描かれているの! ローランドは、まだ子どもだから見てはいけないの!」

「……あい?」

「そう、愛よ」


 ローランドの力が緩んだ隙に腕を引きはがし、私は本を抱えて走り出した。



「ぼくがみてたのにぃーーーっ!」



 後ろからローランドが泣き叫ぶ声が聞こえたが、振り切って走った。


(ローランド、ごめん! ごめんね……! だけど――)


「絶対に見せられないからぁぁぁ!!」




 その後、ローランドが泣き疲れて眠っている間に、本を隠した。

 お昼寝から起きたローランドに聞かれても、「まだ早い」で押し切った。


 リオスに相談し、本格的に見つからない場所に隠すことにした。

 彼も、ローランドに見せないことには大いに賛成してくれた。



 図書室の奥の人目の届かない本棚に、隠し棚の細工をしてもらった。

 ローランドの手が届かない高い棚。

 見たこともない外国の文字が並ぶ本の、そのさらに奥に、あの本たちをそっとしまった。


 ここなら、万が一にも誰にも知られないだろう。


 周囲には専門書がずらりと並び、読む気も起きない難解な本ばかりだ。

 ここに足を踏み入れようと思う者はいないだろう。

 完璧な隠し場所だった。


 念のため、隠し棚が動いたら私に連絡が来るよう、感知魔道具も設置しておいた。

 これで、いつローランドがここを探り当てても、すぐに対処できる。

 私が屋敷にいれば、即座にここへ来て、読むのを防げるだろう。

 完璧な対策だ。



***



 ――この時のナタリーは、まだ知らなかった。


 二十年後、あの本がローランド夫婦の夫婦生活そのものに、とんでもない影響を与えることになるなど。



 そして、この本が――


 ローランド夫婦に見つかってしまうなどとは。




これにて、ナタリーの物語は一旦終わります。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

ここまでお付き合いいただけたことを、心から嬉しく思っています。


もしよろしければ、一言でも感想をいただけたら嬉しいです。


または、評価やブックマークで

「最後まで読んだよ」の合図をもらえたら、とても励みになります。


皆様の反応が、次の物語を書き進める力になっています。


ナタリーのお話は前作

『ヤンデレ公爵令息の囚われ花嫁 ~外交官志望の私が公爵夫人になるまで~』

から派生した物語でした。


黒バラ本を見つけたローランドのお嫁さんのエピソードは、前作の中で描かれていますので、もしご興味がありましたら、そちらも覗いてみてください。


それでは、また次の物語でも、またお会いできますように。


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