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世界一素敵なゴリラと結婚します  作者: 志岐咲香
番外編:新しい愛称編

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新しい愛称

今回は愛称に関する裏話をあとがきに少し書いています。

もしお時間があれば、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

 私は、天才かもしれない。

 やはり、言葉のセンスがあると言わざるを得ない。


 『グレゴリオス』――この雄オスしい名前から、素敵な愛称を思いついたのだ。


 一応、彼の意見も聞いてみよう。

 もしかすると、他にもいい案があるかもしれない。



 夜、いつものようにグレゴリオスの部屋に行くと、さっそく話を切り出した。



「ねぇ、あなたの新しい愛称――」

「ナタリー、今日は話が――」


 お互い同時に口を開き、言葉がかぶった。


「え、なに?」

「いや、俺の話は後でいい。君の話から聞こう」

「わかった! あなたの新しい愛称、何がいいと思う?」

「愛称? ……ああ、『ゴリラ』から替えてくれるのか。そうだな……『グレゴ』とか『ゴリオ』はどうだろう?」

「……」


 ……ダサすぎる。

 愛称を考え始めたときに、真っ先に却下した呼び名だった。

 特に『ゴリオ』だ。ゴリラとそんなに変わらないではないか。

 それならゴリラのままでよかったのでは?


「……そんなに『ダサい』か?」

「はっ! また口に出してた!? 私、いつもこんなに言っちゃってたの!?」

「まあ、な。俺は君の本音が聞けて嬉しいが」

「怖い! 勝手にしゃべっちゃう自分が怖い!」

「気にするな。それより、愛称はどうする?」


 ゴリラ……いや、グレゴリオスは嬉しそうに微笑んでいる。


「候補を三つ考えたの! 気に入ったのを選んでね!」


 私は勢いよく人差し指を立てた。


「一つ目、『リオリオ』! 可愛いでしょ? これが一番のおすすめ!」

「……り、リオリオ?」


 厳つい名前から、こんなに可愛い愛称を生み出した私を褒めてほしいくらいなのに、彼は困惑したような声を出した。

 私は気にせず、二本目の指を立てる。


「二つ目、『レオ』! 響きがかっこよくない? ただ切り取ったんじゃなくて、名前の文字を組み合わせてカッコいい響きを作り出したの! これも自信作!」

「レオ……?」


 さらにもう一本、指を増やした。


「三つ目、『リオス』! これはちょっと無難なんだけどね。名前をそのまま切り取っただけだから面白みはないんだけど、一応ね!」

「リオスがいい」


 彼は、迷いもなく即答した。


「え?」

「良い愛称を考えてくれてありがとう」

「ええ!? 本当に『リオス』でいいの!? ひねりも何にもないよ!?」

「ああ、以前から、名前の一部を愛称にしてほしいと思っていたんだ」

「そ、そうなの? まあ、あなたがいいなら……。えー、でも『リオリオ』って呼びたかったなぁ」

「『リオス』で頼む」

「うーん……わかった! じゃあ『リオス』に決定ね!」

「ああ。じゃあ、俺も君のことを『タリー』と――」

「絶対いや! タリー・モンスターっていう古代生物がいるんだもん!」

「……君は俺を『ゴリラ』と呼んでたのに、か?」

「ひえ!? ご、ごめん! もしかして、嫌だった? 心の中で呼ぶだけのつもりで、口に出す気はなかったんだよ」

「君に呼ばれる愛称に嫌なものはない。ただ、俺も君を愛称で呼びたいだけだ」

「『ナタリー』って、最初から短いから愛称呼びをする必要なくない? 『グレゴリオス』は舌を噛みそうだから縮めて呼びたいけど」

「君は、そういうところは合理的なんだな……。俺は、俺だけの特別な呼び方をしたいんだ。タリーがダメなら、『ナタ』? それとも『リー』?」

「なんだかそのままだと安易に感じるんだよね。……『ナリー』は?」

「名前の一部をそのまま取った呼び名がいいんだ。順序を変えずに。では最大限譲歩をして、『リィー』は?」

「ええ!? それ譲歩なの?」

「譲歩だ。語尾を伸ばすことで、語感を変えている」

「じゃあ……『アリー』は? 母音だけどギリギリ名前の一部そのままでしょ」

「……不本意だが、君がどうしてもというなら。では『アリィー』だな」

「なんで甘く伸ばすの!? 『アリー』だよ」

「より可愛らしい響きになるだろう? ……そういえば『ゴリラ』とは、巨大で乱暴なモンスターだと」

「『アリィー』でいいよ! その代わり、もう『ゴリラ』に触れるのはナシ。これでも、私なりに愛着をもった、愛情たっぷりの愛称だったんだから!」

「……そうか。わかった。だが、もう一つだけ言わせてくれ」

「なに?」

「その愛情たっぷりの愛称を、父上に使うのはナシだ。心の中でも、な」

「えっ!? なんでそれを!?」

「……父上を見た瞬間、小声で『……ゴリラ?』と呟いていたぞ」

「うそ!? わ、わかった」


 どうやら想像以上に、心の声が漏れているようだ。

 今後はもっと気をつけよう。


「ところで、リオス……の話は何だったの?」


 まだ新しい愛称を呼ぶのは、少し気恥ずかしい。

 けれど思い切って口にすると、彼はほんのり笑みを深くした。

 ……呼んでよかった。


「ああ。……アリィー。母上の淑女教育を受けてみる気はないか?」

「淑女教育? 今、受けてるよね?」


 公爵家に滞在して私が落ち着いてから、家庭教師の先生に歴史やマナー、貴族の常識を週に数時間ずつ教わっている。

 ……全然覚えられてないけど。


「おそらく、今のものよりずっと高度な内容になるだろう。結婚後の君の社交は母上が代行してくださるが、その代わり、母上が組んだ淑女教育の計画を真面目にこなすことを条件に出されたんだ」

「今よりも高度……かあ」


 今の授業すらまだ消化しきれていないのに、これより高度ってどうなるんだろう。でも、それで社交を代行してくれるなら有難い話だ。一日三時間程度なら執筆の時間も確保できる。受ける以外の選択肢はない。


「……わかった! 受けるよ」

「本当にいいのか?」

「うん。上手くできるか分からないけど、頑張るね!」



 こうして、二人の愛称は『リオス』と『アリィー』に無事決まり、公爵夫人の淑女教育も一日三時間受けることになった。


 なお、この『アリィー』という愛称が、後に夫婦の大きなもめごとの原因になるとは、この時の二人はまだ知らない。

本編の最終話を執筆していた頃から、

「あなたは世界一素敵なゴリラ」と言われても、グレゴリオスが「別の愛称を」と主張する展開は決まっていました。

ここだけは彼が妙に頑固で、まったく譲らなかったんです(笑)


そのため、結婚前に『ゴリラ』の愛称が変わることは確定事項でした。

番外編が思いのほか長くなると分かった時点で、本編に結婚までの話を含める案もあったのですが、この流れが決まっていたため見送りました。


というわけで、ここで『ゴリラ』は卒業です!

タイトルにゴリラと入っているのに!?と思われた方もいるかもしれません。

ちなみに、このタイトル「世界一素敵なゴリラと結婚します」は、本編最終話でのナタリーの意気込みを元にしています。

番外編で愛称が変わっても、あの時のナタリーの気持ちとして、タイトルはそのまま残します。

なお、完結マークを付けたまま更新しているのは、この『ゴリラ』卒業が番外編だからです。

本編は最終話で完結済みで、今はその後のエピソードを補足しています。


あくまで番外編という形にはなりますが、今後も描きたいエピソードがたくさんありますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。

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