1 君が君を大好きになると言うこと。
ぼくが出会った不思議な動物の子供のこと。
君が君を大好きになると言うこと。
ぼくがその不思議な真っ白なもふもふした犬っぽい動物と出会ったのは小さな子供のころだった。(でもそれは犬では絶対になかった。なぜなら、その不思議な動物はふわふわと空を飛ぶことができたからだ)
真っ白ななにも絵の描かれていないキャンパスを見ていると、まるでその真っ白な絵が、真っ白な絵として完成しているように、ぼくにいろんなことを語りかけてきた。
君の見ている世界は君だけの世界なんだ。本当にね。
君は君として生きているだけで、意味があるんだよ。君に必要なことは、君を認めてあげることだよ。君自身が、君を大好きになることなんだ。
世界は変化していくものなんだよ。あらゆる人にとってね。あるいは同じ自分でも生きている間に、少しずつ変化をしていくものなんだ。
失敗しない人なんていないよ。そんな人はどこにもいないんだ。
君のこと、大好きだよ。出会ったときから、ずっと大好き。
その真っ白な絵の声を聞いて、ぼくはぽろぽろとたくさんの涙を流した。
するところんがぼくが泣いているのを見て、そっとぼくの頬をその赤い舌で慰めるようにして、舐めてくれた。
「ありがとう。ぼくは大丈夫だよ」ところんを撫でながらぼくは言った。
ぼくのものの少ないからっぽの部屋の中には、眩しい太陽の光が、カーテンの隙間から、差し込んでいる。
その光をもっとたくさん見たいと思ったから、ぼくは久しぶりにずっと閉じていたカーテンを開けようと思った。
ころんもとても喜んでくれているみたいだった。