父の語らい
ここは魔法や魔術が存在する異世界。
知能を持つ生物が数多く存在し、それぞれがそれぞれの大陸で生きている。
人間が暮らしている賢大陸の大都市ユンドルに暮らす少年、ルーツ・ロードルは机に肘を立て、億劫そうに少し前に父に教えてもらった話を思い出していた。
「いいかいルーツ、私たちが暮らしているのはこの賢大陸だけどね、世界には他に11個の大きな大陸があるんだ。しかし、そこに人間は誰1人いない。過去にはいたかもしれないが、今はもう誰も生き残ってないだろう。」
「生き残っていない?………じゃあそこには一体何がいるんですか。」
「それはいずれわかることになるだろう。なぜならルーツはこれから通う学校で、その大陸のことについて深く学んでいくことになるからね。」
「だが、ひとつだけ教えておこう。私たち賢大陸の人たちは、他の大陸のことをーーー。」
「イスパーデビルダムと呼んでいる.......か。」
そう、ひとり呟く。
しかし、何故このような名前で呼ばれているのか、いつからこう呼ばれるようになったのか、誰も知らないらしい。それも含めて、学校で学んできなさいと父は俺を送り出した。
なぜ、父は直接教えてくれなかったのか、とても気になったが、何か理由があるのだろうし、この学校で知ることができるなら、それでいいだろう。とそんなことを考えていると、
「ちょっと!ちゃんと聞いてるの?!」
と大きめの声でいわれ、意識が現実に戻る。
「せっかくルーツのために説明してあげてるのに!」
と、頬を膨らませながら、俺に不満をぶつけているのは、クラスメイトのサティーラ・ミティリスだ。
「悪い。ちょっと考え事しててさ...」
「人に聞いておいて、考えごと?全く!だからまたこうして説明する羽目になってるんだよ!先生も言ってたのに〜。」
「先生も言ってたのか、そんな記憶はどこにもないんだが。」
「寝てるからだよ!!」
それはもっともである。ぐうの音も出ません。
サティーラとは親の交友関係で幼少期から知り合いであり、入学初日にも関わらずこうして、敬語も使わず、しゃべっているわけだ。
「で、来週から何が始まるんだって?」
「もう!この学校では年に4回試験がおこなわれるんだって。その一回目が来週から始まるの。試験に合格すると称号がもらええるみたい。」
「その称号はどんなものなんだ?」
「んーとねー。ネクタイの色が変わるみたいだよ。私たちはまだ一回も試験を受けてないから白色で、来週の試験に合格すると黒色、その次は合格するごとに、銅色、銀色、金色に変わるみたい。」
「なるほど道理でクラスが一緒なのにネクタイの色が違う人がいたわけなんだな。」
「あ、ルーツも上級生の教室見てきたの?確かにネクタイの色バラバラだったね~。」
この学校に来て最初の疑問だったが、そんな制度があったんだな。
「それと試験の内容なんだけどね。」
「当日に発表されるみたい。」
「当日?それじゃあ何の対策もしようがないじゃないか。」
「それも含めて試験ってことなんでしょ。どんな感じなのか楽しみだな~。」
それも含めて試験。つまり臨機応変に対応できる能力が試されるってことか。流石は越魔戦闘高次学校。
戦闘に関して必要な知識や技術を容赦なく試してきそうだな。これは来週の試験の前にしっかり情報を得たほうがよさそうだ。
「あ、そうだ。これからクラスのみんなと親睦会をするんだけどルーツは来る?」
「せっかくの機会だし参加したいが、あいにく学校が終わったら部屋に来いと父さんに呼ばれててな。」
「そうなんだ。相変わらず大変だね。」
「悪いなせっかく仲を深めるいい機会なのに。」
「お父さんの呼び出しなんでしょ。仕方ないよ。また大事なことなんじゃない?親睦会のことは気にしなくていいから。ほかの皆にはうまく伝えとくね。」
「ああ、頼む。」
「じゃあまた明日。」
そう言って、サティーラは約束の時間が近いのか早足で去っていった。
俺も早く帰らないとな。サティーラも言った通り、父さんに呼ばれるのは大方大事なことを伝えられる時が多い。十中八九これからの学校についてだろう。
「さて、今日はどんな任務を任されるのだろうか。」
そう一人呟いた。