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自作詩/傷ついた故郷に贈る詩 『海鵜のように』

 線路は途切れ町が世界の果てになっている。卒業して離れたときに送り出してくれたプラットホームが夏草がむして見えなくなって、電車は時間を止めたゲートの向こうに放置されている。半年が経って僕は帰ってきた、そう君に逢うために。

昔みんなで騒いだ浜辺に人気はなく、見た目には澄んだ海と空。誰も歩かなくなったアスファルト道路は陽炎ばかりが揺れている。

 防波堤は崩れていて、港に船はなく家に突っ込んだ光景。僕は恋人を捜す。ツルハシを振るって、「愛している」といまさら叫んでみる、瓦礫の下の眠り姫は目覚めぬということを知っているというのに。

死の灰を散りばめた水と空気、何も見えぬまま、毒と知って口にする夏野菜スープ。津波はとっくに引いた。だけど饒舌な慰めをささやく潮騒がうねる。

 ダークファンタジー。

 ダークファンタジー。

 喉で止めた人を呪う言葉。息と鼓動を止めぬことが唯一の価値、故郷はほらまだそこにある。

 だから、海鵜のように、海鵜のように、僕は生きる。

 だから、海鵜のように、海鵜のように、僕は生きる。

 ツルハシを止めてふと渚を振り返る。一羽の海鵜が魚を呑みこんでいるのがみえる。波間にもまれて翼はびしょ濡れ、でも羽ばたいて飛ぶことを消して忘れはしない。

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挿絵(By みてみん)

広野町駅/福島第一原発のある大熊町に近い町で高速道はこの町が終点になる。撮影日町は霧に覆われていた。駅員がいて現在は電車の代わりにバスが運行されている。

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挿絵(By みてみん)

いわき市四倉港/第一原発の南30キロ。難を逃れた漁船は一隻だけのようだ。

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挿絵(By みてみん)

広野町/海岸沿いの市街地 。町役場は南隣のいわき市に一時的に退避して業務を行っている。人気がないと思っていたら高台にあがると中学生の少女が散歩しているのをみかけて驚く(2011年4月現在広野町役場は避難先いわき市から移転し再開した)。

挿絵(By みてみん)

いわき市四倉海水浴場/第一原発から南に35キロ以内。そこに立つとプライベートビーチになった。

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挿絵(By みてみん)

いわき市波立はったち海岸/第一原発から南に32キロ。周囲は津波で破壊されていたのに不思議と磯にある弁天島の鳥居は残っていた。 七福神の一人である女神「弁財天」は敗けていない。

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ノート20110811/校正20160508

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