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映画/『レッドクリフ』 

 以前、映画館でこれを見てきました。かなり面白いです。三国志のハイライト「赤壁の戦い」のみに焦点をあてているのがまたよいと思います。さりげない演出がまた素晴らしい。

 たとえば、前編ラストシーンで、曹操が兵士達にサッカーをさせているシーンがありました。あれは、「蹴鞠」といいまして、『史記・列伝』の「霍去病」に、「遠征中に兵士がふらふらなのに霍去病将軍は蹴鞠をさせていた」という記事があり、漢王朝の時代、サッカーは、軍隊における兵士を鍛える基礎体力トレーニングの一つだったのです。――これまでの日本の漫画や小説、うんちく本で、この「蹴鞠」は、日本の宮中でやっているあの「蹴鞠」と混同しているものが多く不満でした。

 思い起こせば最初に、『三国志』を読んだのは小学生の時で、コミックトムに掲載されていた横山光輝の漫画が最初です。その後、児童文学もの、陳舜臣と進みました。ここまではいわゆる『三国志演義』という京劇を土台とした物語です。大学で史学科在学中に、漢文と翻訳がセットになった歴史書の『三国志』を読みました。これははっきりいってつまらない。

 曹操の国である魏王国による日本についての記事「魏志倭人伝」という有名な項目はたった1頁しかありません。大学卒業直後、中国映画の『三国志』があり、これをみたのですが三国志演義全体のダイジェスト版のような印象でした。もしかすると現地テレビ番組の総集編だったのかもしれません。ともかくまったく感情移入ができませんでした。

 それから、コミックモーニングで、『蒼天航路』が始まり、のめりこみました。いつも悪役の曹操が、善悪を超越したスーパーマンとして描かれておりなかなかでした。そして今回の『レッドクリフ』へと至ったわけです。

 中国史の偉い先生によりますと、歴史書『三国志』をベースにした、小説『三国志演義』は、明王朝から清王朝にかけて京劇世界で成立したものだそうです。歴史書『三国志』に描かれる曹操は、こんなことやこんなことをした偉人ですという紹介で、別に悪役ではなかったのです。

 しかしながら物語は、勧善懲悪こそ、単純明快で面白い。そのようなわけで、結果的に、曹操が悪役になったというわけです。気の毒な曹操のために、私もショートショートを作ってあげましょう。

.

 ときは紀元200年頃、邪馬台国の船が魏王国に漂着しました。その船には素晴らしい美女が乗っており、報告を受けた曹操は早速、馬を走らせ彼女を出迎えました。曹操は美女に尋ねました。

「私は曹操、君は?」

「卑弥呼です」

 そして二人は恋に落ちました。夢のような日々が過ぎ去り、ある日、曹操が卑弥呼にうちあけます。「私は戦乱に苦しむ民のために平和をプレゼントしてやりたい。そのあかつきには君を妻にめとりたい」

 こうして曹操は軍団をひきいて、呉の国に遠征にいきました。けれども、呉は署くて兵士たちは体調を崩しています。やがて、魏王国艦隊対呉王国・蜀王国連合艦隊による大決戦がはじまります。はじめ、長江の川上に陣取り有利であった魏王国艦隊は優勢に戦いを進めました。

 ところが、悪い魔法使い孔明がにやりと笑って、「逆風よふけー」と妖しげな呪文を唱えます。するとどうでしょう、たちまち逆風が吹いてきたではありませんか。さらに孔明の友達の周瑜が、薪を満載した船に火を付けて魏の艦隊に突っ込ませたのです。こうして魏の艦隊は長江の藻屑となりました。

 卑弥呼はこの戦いで曹操が死んだとの誤報を受け、失意のうちに邪馬台国へ帰国しやがて没しました。卑弥呼が死ぬと大乱となりましたが、一族である登与が新しい女王が即位して静まりました。

 争乱を静めたのは、軍師荀彧。この人いは、赤壁の戦い前夜に病死したことになっていたのですが。実は曹操が愛する卑弥呼を守らせるべく邪馬台国へ派遣していたのです。

 ――なんてどうです、こんなエンターテメントは? 

.

 最後に『レットクリフ・前編』で、金城演じる孔明が行ったことをおさらいしてみましょう。

 孔明は鳩に餌をやりました。孔明は、水浴びした鳩が風邪を引かないように、羽のうちわであおいでやりました。孔明は、周瑜のお宅で馬の出産をお手伝いしまし、周瑜と楽しく琴を奏でました。友達になった周瑜と戦場に行くと、羽をぱたんぱたんと羽を表裏にして、周瑜が血だらけになって戦っていても涼しい顔です。

 けれどもなぜか格好いいのです。まさしくクール、不思議です。

     了


ノート20081213/校正20160506


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