映画/『チェ・ゲバラ』
私どもの世代は、年長の世代から、「メシ」「カネ」「ウルセー」の三大用語を並び立てる「しらけ世代」といわれたものです。学生のころ、史学科に在籍していた私は、昔の歌謡曲『いちご白書をもう一度』のモチーフの人みたいに、「無精ひげと髪を伸ばして」、さらにジーンズの上下を羽織っておりましたのでゲリラ兵のようであり、同期の皆さんは私を称して「ゲバラくん」と指さしました。「ゲバラ?」、焼き肉のたれ? 謎めいた言葉じゃわい。(まあ、こ汚いということかな?)と思っていました。
さて本題。
少し前に『チェ28歳の革命』映画をみました。
「チェ28歳の革命」は英雄語録の引用という感じで、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラが栄光の階段をかけのぼるドキュメントタッチです。この物語には挿入歌というものがありませんから疲れてきます。主人公はジャングルで戦うばかりです。同席したうちの家内なぞは、あくびをなんどしたことか……。
最近になって『チェ39歳別れの手紙』の映画をみました。『チェ28歳の革命』の続編で、前売り券は前作公開日に購入しました。正直、買って失敗したなあ、と後悔していました。
今度の話しはゲバラが死にいたる展開です。
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キューバでの大臣の椅子を蹴ってボリビアに密入国し、ときのファシズム政権下、圧制に苦しむ人々のために戦うゲバラは、5年かかって周到に練り上げた計画を、部下のミスで台無しにされ、さらに守ろうとした農民たちにまで売られ、一人また一人と戦友を失っていきます。最後にはアメリカの強力なバックアップを受けたボリビア軍大隊がゲバラの部隊を包囲してついにこの人を捉えます。
囚人となったゲバラに、見張りの若い兵士が、「キューバは共産国だけど宗教はあるの?」ときくと、ゲバラは、「公式ではないけれどもあるよ」と答えました。若い兵士は続けます。「じゃああなたは神を信じる?」 「俺は人を信じる」といい残し、やがて射殺されました。
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『チェ28歳の革命』の段階では、あまりにも不親切なゲリラ映画に、私ははじめ感動しませんでした。しかしながら『チェ39歳別れの手紙』ラストシーンを思い起こしたとき、じわじわとこみ上げてくるものがあります。
私の中では、「俺は人を信じる」の一言でこの映画の評価は一変しました。最愛の弟子に売られても人を愛することを忘れないキリスト殉教のようで泣かせますよ、チェは。
了
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ノート20090220/校正20150506