映画/『誰も守ってくれない』
現在茨城県笠間市に出張できています。水戸には関東最大といわれるイオンショッピングモールがあり、そこには映画館も入っています。夜8時を過ぎるとなんと千円に値引きして映画をみせてくれる、というので早速、『誰も守ってくれない』をみてきました。
さて内容……。
平凡な家庭。父親がエリートサラリーマン、母親が専業主婦、兄が受験生、ヒロインである妹が中学生。ヒロインの兄は、受験勉強と父親の暴力がもとでおかしくなり、幼い姉妹をナイフで刺殺してしまいます。殺到する報道陣が、「家族にも責任がある」といって、母親やヒロインを執拗に追い回し、母親を自殺にまで追い込んでしまいました。
ヒロインの護衛役を命じられた主人公の刑事は、仕事に明け暮れているため離婚寸前で、携帯電話で連絡を取り合う娘が心配して家族旅行を計画していましたのに、事件のせいで休暇返上になってしまいます。
パパラッチとのカーチェイス、ボーイフレンドの裏切り、容疑者の家族というシビアすぎる現状の中で混乱するヒロイン。逃避行の果てに砂浜で、刑事が、「誰も守ってくれないから君が家族を守ってやるんだ」といって少女に告げるシーンが印象的でした。
主演は佐藤浩一、ヒロインは志田未来、 監督脚本に君塚良一で、ジャン・レノ主演『レオン』に類似した雰囲気はありましたが、主人公が、(電話の向こう側にいる)娘とヒロインを重ね合わせている点で、男と女の関係ではなく、ヒューマンに仕上がっているところが素晴らしいです。
――人類が言語を獲得したのは、男が女にセレナーデを送るためだったのが始まりだそうで、そうなるとラブストリーは三万年から五万年も前から存在し、文字が発明されたエジプトやチグリス・ユーフラテス文明にもしっかり刻まれています。アジアの巨人チャン・イーモウ監督が、(大昔から存在するラブストリーのパターンのテーマはもう決まっている。あとは、どのように演出するかだ)とおっしゃっていますが、同感です。ラブストリー演出は、とても難しく、よほどの天才でもないと、つまらなく終わってしまいがちです。
「しらけ世代」の私を感動させるには、かっこいい主人公と可愛いヒロインの口づけぐらいでは駄目です。もちろん戦闘シーンやアクションシーンばかりの物語は論外。そういう意味で、家族や、ヒューマンといった「愛」のテーマこそが、(一観客である私を)感動させる近道なのです。
了
ノート20090221/校正20150506