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覚書/滅亡文明・ギリシャ

挿絵(By みてみん)

「古代オリンピック」



挿絵(By みてみん)

「ギリシャ文明」

 前13世紀にエーゲ海一帯に混乱期が生じ暗黒時代となった。ヒッタイトが独占していた鉄器文化が流出し、汎世界的に鉄器革命が始まる。その流れの中、前9世紀以降、ギリシャ各地にポリスが築かれるようになる。滅亡は1世紀のローマによる征服だ。図は古代アテネ。




 ギリシャ人そのものはいまだに存在する。古代ギリシャというのは、ローマ帝国により統治される以前のギリシャ文明のことだ。古代ギリシャ人には三系統があった。イオニア人、ドーリア人、アカイア人だ。

 まず紀元前2000年ごろ、イオニア人がエーゲ海北岸から、かつてトロヤ文明のあった小アジア(現トルコ)に住むようになる。つぎに、それから600経った紀元前1400年ごろにアカイア人が、ギリシャ南部のぺロポネソス半島・クレタ島を支配。それまであったミケーネ文明・ミノア文明の残照を根絶やしにした。  さらに200年経った紀元前1200年ごろ、ドーリア人が、アカイア人が支配していたペロポネソス半島を横取りする格好で割り込んできた。

 ギリシャ人たちは、先住民文明を取り入れつつ、さらに400年経った紀元前7・800年ごろに、都市国家群をそれぞれ築いて行く。古代ギリシャ文明はここから始まる。この文明は、やがて大いに栄え、人口を爆発的に増やした。結果、本土で収容しきれず、地中海・黒海沿岸に植民都市を次々と建設して行くことになる。

 貿易が盛んだった。交易品は穀物と錫。錫はもろい銅と合金すれば丈夫な青銅器になる。

 ギリシャ本土にあった各都市は、だんだんと有力都市に統合されて行く。 アテナイ、コリントス、スパルタなどが有名なところだ。その過程で、国王権力が弱くなって有力貴族が実権を握り、さらに市民が戦争に参加して行くと、民主制となり、逆に反動して有力者が国家の実権を握る僭主制になったりした。

 紀元前492年・449年、「世界」の覇者であったアケメネス朝ペルシャが侵入してくるペルシャ戦争が勃発。対するギリシャは、アテネとスパルタを中心に連合し撃退する。「市民」という自覚をもったギリシャの重装歩兵は、密集陣形をつかって、奴隷戦士35万前後のペルシャ軍を撃破した。

 ペルシャ戦争後、せっかく団結したギリシャ諸都市は、ペロポネソス戦争などの覇権争いをする。体力がなくなったところで、北部に割拠して兵力を温存していたマケドニアが南部に雪崩れ込んで、一気に全土を統一してしまう。以降をヘレニズム時代という。そのときの王がフィリッポス王で、息子が、あの、アレクサンドロス大王である。大王がアケメネス朝ペルシャを征服して、世界に君臨したが、三十代で没してしまう。

 後継者たちが帝国を分割。プトレマイオス朝エジプト、セレウコス朝シリア、アンティゴノス朝マケドニアに分裂。マケドニアは内紛を経ながらも辛うじて王権を保つのだが、紀元前168年にローマに敗れて四つの共和国に分割されてしまう。古代ギリシャはここで終わった。

 一見して、自民族各都市・諸国家の勢力争いがもとで古代ギリシャ文明は滅んだかのようにみえる。果たしてそれだけか? 環境考古学の立場からすればこう指摘されている。もともとギリシャは豊かな森であった。森の木々を切り出して、大きな船をつくり、地中海一帯を交易圏とした。豊かな財力で都市を築いて行く。

 森を切り払って、そのままにしておけば良いものを、彼らはそこで羊を放牧した。羊は再生しようとする木々の芽を食べてしまう。森は死滅し、半砂漠状態となる。緑豊かな天上界オリンポス山は禿山となり、土砂はアドリア海に流れ出す。すると沿岸は湿地となって藪蚊が大量発生。蚊はマラリア菌を身に帯びて、人々を刺してまわる。

 環境破壊による食糧不足、藪蚊を媒介とした疫病で、人口が激減。ローマ文明に対抗する力を失い文明は滅んだというのだ。古代文明の崩壊パターンだ。

     了

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ノート20120701/校正20160508

挿絵(By みてみん)


「滅亡文明」

~地中海沿岸を中心に繁栄した古代文明をご紹介する当ツアーもいよいよ次回で最後。次回は「ローマ」です。


御案内役 大英博物館学芸員シナモン

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