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覚書/滅亡文明 ・トロイア

挿絵(By みてみん)

 トロイア文明イリオス遺跡。トロイア文明は、エーゲ海文明の一つで、紀元前3000年から紀元前1100年に栄えた文明だ。文明の滅亡原因は、トロイア戦争とおぼしき戦火によって、一気に滅んでしまった。ギリシャ人たちが文字を使うようになるまで、吟遊詩人たちが滅亡した文明を口承してきた。



 トロイア文明(あるいはイリオス文明)は、紀元前2600年から1200年ごろに隆盛を誇っていたといわれている。クレタ文明、ミケーネ文明をまとめたエーゲ海文明とも東地中海文明ともいわれる、ギリシャ、トルコ、クレタを結んだ海域の諸文明の一角をなしていた。

 オリエント風の専制国家で、主に小アジア西部を版図とし、最盛期にはクレタ島、キュクラデス諸島、ギリシャ半島東部・南部をも勢力圏に加えていた。

 トロイアの発掘で、都合9層の文化期が存在したことが明らかとなった。

 第1層は紀元前3000年から2500年で、城市が存在し、青銅器が用いられたいた。石の土台の上に煉瓦を積み上げた住居、穀物栽培・家畜の飼育が特筆される。

 第2層は紀元前2500年から2200年で、城壁が高くなる。王冠などの黄金装飾品が華美になる。鉱業が振興。交易が隆盛する。ここからトロイア文明とされる。

 第3層から第5層は、紀元前2200年から1800年で、集落跡がみつかる程度となる。文化がしばらく低迷する。

 第6層は、紀元前1800年から1300年である。城壁は最大に達するが、住居跡は貧弱である。

 第7層は、紀元前1300年から1100年である。ミケーネ文明末期とされる。城壁の範囲は第6層よりも狭まるのだが、激しい火災の跡があることを根拠として、ギリシャ神話「イーリアス」や「オデッセア」に描かれるトロイア戦争の舞台ではないかとされる。

 第8層・第9層は、アレキサンダー大王のマケドニア王国、その後継者である将軍たちが分割した諸国家ヘレニズム文化期、そしてローマ時代となる。イリオンという地方都市が存在。城砦がある意外は特筆するべきことはない。4世紀以降は何も築かれなくなる。

 ギリシャ神話では、当時のミュケナイ王アガメムノンが、オデッセウスの献策を受けて、壊れた船の板材で木馬を造り、トロイア城外に置いて一時海上に退去する。夜になって木馬に潜んでいた精鋭がトロイアの街に火を点けて回り、城門を開けたところに、ギリシャ連合軍が雪崩れ込んできて、10年戦争を一気に終わらせた。王城は焼け、生き残った王族や市民は奴隷になり、黄金財宝は掠奪される。奴隷は言葉を話す家畜、慰み者。人権は存在しない。

  シュリーマンは、若い時に商売をして財をなし、41歳で店じまいをし、私費を投じて発掘調査に乗り出した。1870年の発掘でアマチュア考古学者ゆえの大胆さで、ホメロスの描くところの「イーリアス」の舞台となる第7層を破壊して、一気に1000年前に遡る第2層に達し、貴金属製品を発見する。思い込みで根拠はないが、トロイア国王「プリモスの財宝」と発表する。

 昔、考古業界に脚を突っ込んだばかりのおり、「発掘は破壊だ。遺跡様が成仏するように、舐めるようにデータをとって差し上げろ」と先達にいわれたことがある。シュリーマンはデータをとらずにぶち抜いた。「トロイアを破壊したのはギリシャ人ではなく、シューリマンだ」と評される由縁である。明日は我が身だ。「○○遺跡を破壊したのは開発業者ではなく、スイーツマンだ」といわれぬよう襟を正そう。工期が迫っていても極力データをとらねばならない。

     了


ノート20120628/校正20160508



挿絵(By みてみん)

「シナモンの遺跡測量」


挿絵(By みてみん)

「ホテル・ラウンジのピアニスト」

 当ツアー、次の目的地は……。

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