紀行/車窓にもたれて
昔、〝スポーツ根性もの〟というジャンルがあり、ヒーローたちは、血の汗を流しつつも涙をふかずに兎跳びをしていたものです。変身ヒーローたちも影響されて、仮面ライダーはオートバイの練習を怠らず、ウルトラマンレオは真剣白刃取りを修得。いつも滝に打たれて修行するレインボーマンなんていう方もいらしゃいましたねえ。
かくいう私は……。映画『フラガール』で脚光を浴びた常磐ハワイアンセンター(現ハワイアンズ)で修行。実家が近いものでよく行き、子供用プール横にあった小さな滝に打たれていたものですよ。凍てつく雪解け水ではなく、ぬるくした温泉の湯でしたけどね(だってスイーツマンだもの)。
たわけた前置きはこのくらいにしておいて、本題です。
片道百キロ程度の旅行なら自家用車での移動が多く、大半は業務で占められています。そのせいか鉄道での移動を好みます。新幹線、各種特急、みんな好きです。もっとも好きなのは各駅停車の旅。大都市近郊に限りますけれども、二階建てのグリーン席が登場してからは専らこれを使います。新幹線では防音壁で見えない風景が、ゆったり、とした椅子でみえますしね。
年間の大半を単身赴任で過ごす私は、帰省するとき、好んで普通車グリーン席に乗りました。瀟洒な車両には黒いスーツに青のスカーフをつけた女性添乗員がおり、切符の確認と飲み物販売をしてくれます。
クッションの効いたシートで足をのばしていると、添乗員の方が、飲み物とおつまみをバックにいれて歩いてくるので、ワッフルと珈琲を注文。
「重たそうですね。ハイヒールじゃ車両が揺れて歩きずらいでしょう」
「ある程度の高さが規定にうたわれてるんです」
こういった短いやりとりも好きです。
以前、添乗員を狙った婦女暴行事件が、普通車グリーン車両で連続して起き、存続が危惧されました。しかし問題は警備員が添乗員のあとを追尾護衛することで解決。やや興ざめですけれど、安全度は上がりました。なにせ目的地までうたた寝していても財布をすられることはないのですから。
私は学生時代、新宿にコンパに呼ばれて、女子後輩からしこたまつがれて、酔い潰れ、帰りは小田急でうたた寝してすられてしまった経験が二回あります(情けない)。
ここでJRに提案。イケメン草食系男子を添乗員にして、お給仕サービスなどされてはいかがでしょうか? ウケますよ~。ガードマン人件費も浮きますし、一挙両得ですよ(いっ、いかん。下世話なオチ)。.
滝に打たれて出直してきます(えっ、どうして、ぬるま湯だと判っちゃったんですか?)。
了
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ノート20100210/校正20160508