紀行/アンコウの〝締め殺し〟
童謡「赤い靴」で有名な詩人野口雨情は、常陸国磯原の郷士の家に生まれました。屋敷は水戸徳川家別荘を譲り受けたものときいています。そのあたりの磯部は風光明媚なところ。横山大観ほか日本画画壇の重鎮たちがアトリエを構えており、私はその地が好きで、帰郷するときは寄ることにしています。
空に海もあおく岩肌は少し赤みをおびた白。波打ち際の川は海の勢いにあらがえず、北に向かってようやく岬のところで河口となります。砂岩の岬にはカモメ、海鵜が群れ、潮騒とともににぎわうのです。
磯原の冬の名物といえば、アンコウ。磯原から少し離れた平潟港には、詩人や画家たちが集った旅館があり鍋をだしているそうです。
わが実家は磯原や平潟のある北茨城市の隣町のいわき市で、隣町とはいっても県境をまたいだむこうがわ。帰るとたまに、ぶつ切りにされた、アンコウ鍋がだされたものです。
平潟には、荒縄でアンコウを吊してさばく〝締め殺し〟なる物騒な調理法があるとのことで、ちょっと興味がありみてみたいものです(ノート20100115/校正20150507)。
了
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追記
3.11地震による津波の影響で、被害を受けた旅館店舗もあり、そのまま店を閉めたところもありいます(ノート20160507)。