紀行/喫茶店・磐城館
私の郷里は福島県いわき市にあります。中心市街地は平、最寄り駅はいわき駅といいます。いわき駅後背の高台が平城。伊達家に備えて、徳川家の重鎮・鳥居氏が築いた城。戊辰戦争、第2次世界大戦で市域はほとんど焼失。それでも歩いてみると、古い土蔵の商家をいくつかみることがあります。
かつて、国道6号線が通っていた本町通りは、かつてのメインストリート。少しさびれてはいますが、本屋、楽器店、文房具店が並んでおり、私が好きな通り。喫茶店「磐城館」《いわきかん》も、そこにあります。
帰省するとよく立ち寄ったもので、ある日、紅茶を注文してみました。メニューには〝キームン〟と書いてあります(誰だ、呼称をかえた御仁は!)。トワイニング社の薫製茶〝プリンス・オブ・ウエールズ〟は、〝キーマン〟がベースとあり、産地である中国語では祁門。少し離れた町に廈門というのがあり、現地の言葉でアモイというのがあるからキモイ? ──あ、失礼。
山形県の喫茶店でも訊いた〝キームン〟なる言葉(東北訛?)。 不快に感じて、声を大にしてこういいました。
「『〝キーマン〟をください!」
「え、〝キームン〟のことですね?」店長さんから当然の返事がきました。
──はい、大人げないです。……のちに、キーマン、キームンのほかにキーモンという言い回しをしる私でありました。
了
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ノート2009/校正20160507