紀行/散歩道の喫茶室、丁子屋
仕事で滞在していた茨城県石岡市は、水戸市と土浦市の間にある古い町で、奈良・平安時代は国府が置かれていたところ。小春日和の休日、私は古い町並を楽しんで、金比羅神社がある大通りを散策していました。
神社付近には江戸期から昭和初期に築かれた商家が軒を連ねていました。商家の一つに丁子屋というのがあります。丁子屋はもともと藍染めを生業としておりましたが、現在は廃業し、幕末の建物は観光協会が管理しています。
店先には小間物や駄菓子が置かれ、私は店員さんに案内されて、中院に望んだ居間に置かれた席に座りました。障子紙は、戦後直後あたりの、書き付けがつかわれています。
しきりに感心している私をみた店員さんが微笑んで、「よろしければ、お二階もご覧ください」とおっしゃるので、お言葉に甘えて拝見させていただきました。
手すりのある急階段を昇ると二階には、通りに面した狭い寝室と、中院に面した広い客間の二室があります。客間壁際には足踏み式のミシン、桐箪笥があり、対面した床の間には有田焼風の大瓢箪が置かれていました。
宙に突き出た欄干から下を望むと、門や厨房に囲まれた中院の石畳がありました。よく見れば手漕ぎ式ポンプが置かれてあります。
階下の居間に戻りましたら珈琲が出されました。すこし濃いめでミルクをいれてちょうどいい感じ。お茶請けはクッキーでした。
入るときは気にとめなかったのですが、勘定場の横に置かれた五徳には鉄瓶二つ置かれており、珈琲はこれでいれられていたようです。
11月も終わり近くの休日、午後のお茶時間はこのように過ぎていきました。
了
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ノート20091126/校正20160507