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紀行/湖畔のフレンチ弁当、ル・プール・デリカッセン

 茨城県石岡市は、水上・陸上交通の要地であり、奈良・平安時代に国府が置かれた1000年以上つづく地方都市で、蝦夷えみし反乱のたびにここで、武器製造が徴兵がなされた対北方後方基地だったという歴史があります。

 蝦夷とは東北人とアイヌ人のことをいいます。奈良平安時代の蝦夷は騎馬民族化しており、30騎の蝦夷が暴れると、鎮圧するのに徒士かち1000人で鎮圧したという記述を目にしたことがあります。国立歴史民族博物館のレポートによると、――これまで朝廷側の発明であるとされてきた日本刀は、蝦夷たちが騎馬戦に対応させるために反りをいれた結果発達したものあるとのこと。

 小難しい話はここまでとして、先日は天気も良く、近くにある霞ヶ浦周辺を散策してみました。目的地は、美浦のトレーニングセンターというところで、競走馬の訓練を行う東日本最大の施設にドライブです。

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 昼時、湖に臨んだ土浦港の岸辺にたたずむ観光ホテルをみつけ、レストランに入ろうとしたら、「結婚式につき貸し切り」となっておりました。仕方なく、土浦市郊外にいきましましたところ、一軒の洋食を扱う瀟洒なお店をみつけました。ル・プール・デリカッセン(Le Poulet Delicatessen)という看板があり、テイクアウト(taku-outo)と書かれてあります。テーブル席はなく、フレンチのお弁当屋さんだったのです。

 そこで、ほうれん草とベーコンのキシュ、ホタテとサーモンのテリーヌ(各300円相当)、それに鯉のポワレを注文しました(600円相当)。レンジであたためるものですがけっこういけます。

 店員さんにいわせると、「湖に臨んだ近くの公園でどうぞ」とのことでしたので、さっそく、そうすることにしました。白ワインがあれば最高ですけれど、運転中でしたので(涙)  。

 食事のあと、車を湖沿いに南へ進めました。

 美浦トレーニングセンタは噂通り巨大でした。広報館4階展望室から一望しましたところ、山中を開いた広大な敷地には、馬のプールやら競馬用の広場が2つもあって、おのおのの内部には大小コースがたくさんありました。競走馬専用プールまであります。

 私はカヤックをやりますのでその下見をかねて、その美浦から湖のほとりに、むかって進みますと、ススキ野の道を分け入った狭い舗装路終点に、コンクリートでスロープをつけたジエットスキーを降ろす場所がありました。老朽化したコンクリート施設で、国有地ですので無料で利用できるようです。このあたりには、昔、海軍航空隊の施設が多くあり、おそらくは飛行艇の発着場跡ではないかと想像しております。――ここならカヤックを車から直接降ろせる。 

 川辺に車を止めて、四〇キロ以上はあるであろうフジタの組み立て式カヤックを数十メーター背負って歩くのは容易なことではありません。

 なかなかいいポイントをみつけました。暖かな日だというのに、三時前で日はかなり傾いて、対岸の湖畔は白くかすみ、風おだやかな湖上をゆくフランス三色旗様のヨットはシルエットをつくっていました。

 霞ヶ浦は古代からつづく水上交通路。いつか同じような穏やかな日に、ル・プール・デリカッセンのお弁当と白ワインをもって、カヤックを降ろし、昔日の風景を妄想しつつ湖上でスケッチをしたいと考える私でした。

     了

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ノート20091108/校正20160516

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【追記】霞ヶ浦付近の水上交通と城館

 江戸時代は、水上交通が発達し、海上、湖、河川が利用され、さらに運河が日本中を網の目のよう目にめぐらされるのです。霞ヶ浦で最大の港湾都市といえば土浦でしょう。徳川家康の次男で傑物でありながら不遇であった結城秀康の城として整備され、秀康が越前60万石を与えられると、土屋氏がそのあとに入封します。城は土塁と城門くらいしか残っていません。いまは小さい江戸崎町もかつては湖上交通の要衝で栄えた町で、近くには、南北朝時代からつづく城があったとされています。古い日本の風景というのも美しいもの。失われた建造物は妄想で補うといたしましょう。


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