紀行/魂のスイーツ、オリーブ
しばらくまえに群馬県伊勢崎市米岡遺跡の調査で2週間ほど出張していました。有名な史跡の一部であるため、ちょっとした工事でもいちいち埋蔵文化財調査の対象になってしまうのです。道路のマンホール部分だけの調査で、出てきたのは土器片と石鏃(せきぞく=やじり)が少しだけという成果でした。
遺跡の所在は、小泉内閣による平成市町村大合併直前で境町と呼ばれたところです。そこの利根川自然堤防上で、縄文後期の大集落が営まれていました。狩猟採集の時代ですが、このような大きな川沿いの集落は往々にして河川交易の拠点にされがちなところです。
退屈な作業でしたけれど楽しみもありました。遺跡のメイン・エリアである米岡小学校の近くに、〝オリーブ〟というケーキ屋さんがありまして、私は昼食の後や帰りがけになると、ここで、スイーツと紅茶を楽しんだものです。
パテシエのご主人は年輩の方で、埼玉県で修行なされたとのこと。作風は、フルーツを主体にしています。秋は大きな柿をくりぬいて、そこにクリーム、キウイや木イチゴを詰めています。これは私の大ヒット。
群馬県内では、「○○賞受賞」というお店もありましたけれど、私の中でこのお店を越えるスイーツはまだ存在しません。市井の片隅には、つつましくたたずむ名店が隠れていることがあります。
了
ノート2010/校正20160507