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読書/『英国鉄道文学傑作選』

 『英国鉄道文学傑作選』のカバーとあとがきから。

「ディケンズ、ロレンス、エリオットらの傑作を収録。……世界で最初に鉄道という科学技術システムを生みだした国イギリスは、鉄道が一般の生活や至高の中に深く浸透している国であり、また鉄道を芸術に置いて見事に表現した世界最初の国でもある。鉄道と人々との交わりを描いたディケンズ、ロレンス、ハーディー、バーンズ、ワーズワーズ、エリオットらのエッセイ、小説、詩から選りすぐりの傑作を収録する」

 ものすごい文豪たちです。〝鉄道〟というテーマにしぼって、よくもまあ、贅沢に編集したものだと感心しました。――人生をたとえるなら鉄道のようなもの。始発駅から終着駅までは地平線の彼方にあって、見通すことが出来ないのに、けれどかならず終わりがあります。途中には駅があり、さまざまな人と出会いやすれ違いを繰り返し、あるときは途中下車。さまざまな街、風景の中を旅するような感慨があります。

 さて。

 これら収録作品の一つ、「おやすみ、かわいいディージー」、ジョン・ウェインの作品の要約。

.

 グリリー氏は引退した機関士。娘夫婦の家にひきとられ、鉄道博物館に通うのが唯一の楽しみです。おめあては博物館に展示してあるのは1914年製の4-6-0型機関車。まるで伴侶のように生涯の大半をともに過ごし、グリリー氏は、「ディジー」と名付けました。

 来る日も来る日も、グリリー氏は博物館に通います。その日も同じです。

 グリリー氏は「ディジー」と話しをし、勝手に機関車に乗り込んで、博物館職員に怒られたり、悪戯な兄妹に笑われたりしていました。博物館から自宅に帰ったグリリー氏は、体調を壊し、懐かしい仲間である助手と、「ディジー」を操って爽快に走る夢をみながら危篤となり、日頃は口やかましかった娘の涙に送られて、天に召されたのです。

.

 ――1999年に映画化された、浅田次郎原作の短編小説『鉄道員ぽっぽや』によく似ていますね。高倉健、大竹しのぶ、そしてまだ初々しい広末涼子が出演していました。雪降る地方駅の構内。妻(大竹)と娘に先立たれた孤独な元機関士の駅員(高倉)が、最後の瞬間にみたのは、幼くしてなくした娘(広末)が成長してあらわれた夢、というところに泣きました。……著者の「共有の無意識」なのでしょうね。「おやすみ、かわいいディジー」によく似た物語です。

     了


引用参考文献

 小池滋・編 『英国鉄道文学傑作選』(ちくま書店2000年) 760 円


ノート20100312/校正20160506

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