随筆/もう一度妻をおとすレシピ 『夏野菜スープ』
「秘密の消しゴム」がもしあるのなら、あなたなら、二人が喧嘩して気まずくなったときの記憶を消しさりますか? ──などと秋らしくメランコリックに出だしを飾ってみるとしましょう。さて、本日の話題はスパゲッティーをゆでた後にのこる湯を捨てるか否かというところです。……まっ、ふつう捨てますね。さらに冷蔵庫に、レタス・トマトなんか入っていて、賞味期限スレスレだ──なんてとき──さらにスパゲッティーをゆでたばかりなんてとき、こんな一品をそえてみましょう。
晩秋の小春日和、そんなランチタイムに添える一品をご用意いたしました。本日はパスタをゆでた残りの湯でつくる「野菜スープ」です。これで、あなたの奥方は、もう、いちころ。
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レタス、トマト、玉葱 、肉またはベーコン、あるいはソーセージをご用意ください。だしが出るからコンソメは不要です。それと塩・胡椒。
調理方法は、トマト、玉葱をぶつ切りにして皿に入れ下準備 。ここから本番、強火で煮立った鍋に具材を入れる。レタスの葉をむしって鍋に入れ、しんなりしたところで火を止め、塩胡椒を振りかける。これだけ!
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さあ、いつものように奥方を呼んできてランチタイムです。おいしくお食事を済ませたら、川べりを二人で散歩するのもいいですね。そして散歩道をゆき、パリの秋空を思い浮かべてふと立ち止まり、スイーツにこうささやくのです。
──僕たちに捨てていい思い出などない(うーむ、とまりまセーヌ……)
了
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ノート20091029/校正20160506