随筆/春の色といえば
画題は『タウン』。
むかし描いた展覧会用の作品です。春頃にかいたもので、桃園だった職場の前に分乗住宅が、わっ、と一斉にできあがったのです。桃園も好き。にぎやかに、金槌が響き合い、やがて、子供の歓声がきこえる路地も好きです。手元にスケッチブックがないため、たまたまハードディスクにあった作品をだしてみました。
さて。
『枕草子』は、「春はあけぼの」と述べています。私は、昼前あたりですね。明け方ほどではないのですが、山々や湖がかすみがかっているところに、白っぽい空から、やわらかな陽射しが注がれて、穏やかな色合いをかもしだしている風景にはなごまされます。クリーム系の空気、というものでしょうか。
水彩画にするときは、画用紙に水をおいて、たっぷり、と水を含めた幅広の平筆を走らせて、にじませます。山麓はあまり色をおかずに白っぽくして、立体を表現。これを遠景とします。中景には梅・桃、そして桜をいれます。もっとも手前である近景には、神社とか祠なんかをいれるのが無難。袴姿の女子学生をパーツに加えると、また、華やかになります。
水筒には紅茶、お弁当のサンドイッチ。クリーム色ににじんだ景色をもとめて、胡蝶が風に漂うがごとく、ふわふわ、と春の郊外に遊ぶのもいいものです。
了
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ノート20120621/校正20160508




