随筆/もう一度妻をおとすレシピ 『プチ・ポワ・フランセ』
体調を壊してしばらく休暇をとっていましたところ、知らない間に会社が倒産していました。寒いですねえ。さらに昨日は、家内の所属するピアノクラブのコンサートがありまして、家内とその仲間達の演奏を聴くや、雪の山寺で凍えながら座禅をするような心境でした(失言)。
本日はクリスマス。寒い冬の夜を打ち破るとっておきレシピをご紹介いたしましょう。その名は「プチ・ポワ・フランセ」。フランスの小鍋という意味らしいです。
レタスをベースにしたクリームシチューといえば、なおイメージしやすいでしょうか。下記レシピで、2・3人分になり、ビールや、渋めの赤ワインによくあいます。これであなたの奥方はもういちころ。しかも、とっても簡単ですよ。
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材料は、玉ねぎ薄切り1/4個、バター大さじ1、みじん切りにしたベーコン、強力粉大さじ1、水200CC(コップ1杯分ですね)、ちぎったレタス大1個、砂糖大さじ1と2/3、塩・胡椒少々、冷凍のグリンピースを半解凍したもの150g、塩・胡椒少々。
ではつくりかた。
まず鍋にバターを熱し、玉ねぎを中火で炒めます。玉ねぎがしんなりしてきたらベーコンを加えて炒め、そこに強力粉をふりかけてからめます。次に、水を注ぎ、(具材(2): ちぎったレタス大1個、砂糖大さじ1と2/3、塩・胡椒少々)を加え、弱火で8分煮込みます。レタスがくたっとなったら、グリンピースを加え、塩・胡椒で味付けすればできあがり。
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実をいいいますと、この「プチ・ポワ・フランセ」を始めて口にしたのは、1989年の上海所在の中華料理店においてでありました。中国名は「奶油菜」、直訳すれば(クリーム料理)といったところ。おそらく戦前に上海の一部を支配していたフランス人たちが持ち込んだものでしょう。
日本でもいっとき、上海料理をうたうバーミヤンのメニューにありましたが、残念なことにすぐ消えてしまいました。もちろんフランス料理とはいっても家庭料理ですのでフレンチ・レストランにもないでしょう。
帰国したばかりのころ、レシピが判らなくて、電子レンジで温めたレタスに、レトルトのカルボナーラをかけた模造品をこしらえていたものです。それから10年以上経った2003年、本屋さんをぶらついていたところ、ついに下記に示す参考文献(大森2001年)を発見したのです。
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クリスマスだというのに、懐が寒くて、奥方をフレンチ・レストランにさそえないあなた。そんなときは、「プチ・ポワ・フランセ」で温めてやってください。くれぐれも中国風に、「ナイヨウツァイ」と叫んではなりません。なぜなら奥方が「プチ・ポワ・フランセ」を口にした途端、素敵な魔法にかけられてしまうからです。――さあ、あなたも勇気を出して一緒に魔法の世界に入っていこうではありませんか。二人、目を閉じれば銀世界にたたずむフランス古城の中庭。あなたは彼女の耳元でスイーツにささやくのです。「ジュデム、マドモアゼール……」(ぶるぶるっ、お風呂入ろ)
了
ノート20081225/校正20160506
※いま再就職してます。失業したとほぼ同時に次の就職先がすぐに決まってしまいました。年末年始の10日間が私の失業期間、もっと失業休暇していたかったよーっ(非国民め!)。
引用参考文献
大森由紀子『フランス地方のおそうざい』 柴田出版 2001年