12 それぞれの居場所
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新作『仲間に裏切られた俺は魔王に転生する。俺だけの最強国家を魔界に築き上げ、最強魔族の軍団を編成したので、地上にいる仲間の領土に侵攻する。さあ、待ってろよ裏切り者ども。』を始めました!
序盤の伸びがとても大切なので、応援いただけたら嬉しいです。
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「いつもの――か」
ゼルスがつぶやく。
「今の話し方の方が偽物のはずだったんだけどね」
と、小さく笑った。
「俺にとっては、今のゼルスが『本物』だよ」
「今の、僕が――」
ゼルスは感慨深げに言って、俺を見つめた。
「そうか……そうなのかもな」
「それにゼルスが『俺』なんて言ってるの、なんか似合わないぞ」
「……そ、そうか? もともとそういうしゃべり方だったんだぞ?」
「うーん……どっか背伸び感があるというか、無理してる雰囲気があるというか……っていうか、ちょっとカッコつけてる感じもあったな」
「……なんかめちゃくちゃディスってないか、君?」
憮然となるゼルス。
「ないない」
「本当だろうな」
「本当だって! 今のゼルスの方がいいよ、絶対」
「まあ、それなら……いいが」
言って、ゼルスはまた小さく笑った。
その後、ゼルスは去っていった。
もともと仕事の方は早退だったし、ラシッドとの用事も済んだわけだしな。
俺もこれから帰るか。
俺の居場所――。
妹の待つ自宅へ。
「ただいま、フレア」
「お帰りなさい、お兄様」
フレアが奥からやってきた。
「……って、あれ? なんでメイド服?」
そう、今日のフレアはなぜかメイドの格好をしている。
「お兄様、メイドコスプレ好きじゃないんですか?」
「特別好きということは……まあ、メイドの格好は可愛らしいと思うけど」
「やった!」
フレアがガッツポーズした。
「ん?」
「お兄様に『可愛らしい』と言ってもらえたので」
フレアはニコニコしている。
「フレアはいつでも可愛いぞ」
俺の大切な妹だからな。
たとえ血のつながりがなくても――大事な、大事な妹だ。