11 日の当たる場所
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新作『仲間に裏切られた俺は魔王に転生する。俺だけの最強国家を魔界に築き上げ、最強魔族の軍団を編成したので、地上にいる仲間の領土に侵攻する。さあ、待ってろよ裏切り者ども。』を始めました!
序盤の伸びがとても大切なので、応援いただけたら嬉しいです。
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「故郷のしゃべり方が出るときは、お前が本当に動揺しているときだったな、ラシッド」
ゼルスが言った。
「まあ、確かに彼の能力は規格外だ。驚くの無理はない。俺も最初はそうだった」
「くっ、貴様は温い居場所で落ち着いているのかと思っていたが……こんな猛者がいる場所だったとは」
あ、言葉遣いもどった。
「……エリアルが特別なだけだ」
ラシッドの言葉に肩をすくめるゼルス。
「とにかく、お前は力でねじ伏せられたんだ。帰ってくれ」
「……ゼルス」
「それでもまだ断るなら、今度は俺が相手になる」
ゼルスの全身から魔力のオーラが立ち上った。
「たとえ魔術師としての実力はお前が上でも……俺は全力で抵抗するぞ」
「……よほど、今の居場所が気に入っているようだな。人付き合いの下手なお前が」
「最近、少しだけ楽しくなってきたんだ」
ゼルスが小さく笑った。
「なんなら、お前も来るか?」
「……ちっ」
舌打ちして、ラシッドは背を向けた。
「そいつのような凄腕が守ってるんじゃ、お前を連れて帰るのは無理そうだ。引き上げるとする」
「ラシッド――」
「やっぱり、お前は温いよ、ゼルス。昔のお前はそうじゃなかったのに……」
ラシッドは背を向けたまま、つぶやいた。
「今のお前が戻ったところで、やっぱり役に立たないな。俺たちの組織では……他を探すよ」
言って、彼は去っていく。
「お前はせいぜい――日の当たる場所で生きていけよ」
「……そうだな。俺はもう、陰の世界で生きるつもりはない」
ゼルスの口調には強い決意がにじんでいた。
「あ、でも戻りたくなったら、いつでも戻ってきてや! ほな!」
ラシッドの口調、また乱れてるんだが……。
「なあ、なんだったんだ、あいつ?」
俺はゼルスにたずねた。
「……古い知り合いだよ」
彼は言葉を濁した。
「いちおう礼を言っておく。君のお陰で、僕は連れ去られずに済んだ」
ん、『僕』?
「いつもの話し方に戻ったな」
俺はにっこりとゼルスに笑った。