9 魔法VS鑑定スキル1
突然、黒い魔力球が現れ、王城の方に向かっていくのが見えた。
「こんな場所で攻撃魔法を……!?」
当然、重罪だ。
信じられなくて、見間違いかと思った。
けど、どう見てもそれは現実の光景だった。
「くっ……【バーストバレット・極】!」
俺は【高速詠唱】で魔法を即座に発動した。
ちなみにこの【高速詠唱】は以前は『中級』だったけど、二日ほど前に『極』ランクにパワーアップさせてある。
今までは『中級』でも問題なく勝てていたんだけど、今後もっと強力な使徒と戦うこともあるだろうし、スキルポイントに余裕があるうちに強くしておこうと思ったのだ。
というわけで、今まで以上に俺の魔法発動は高速化している。
ほとんど一瞬で出現した巨大な光球が、空中の黒い魔力球に向かっていき、
ばしゅんっ……!
二つの球はちょうど似た威力だったらしく、相殺されて両方消滅した。
「一体誰が――」
俺は魔力球が放たれたらしき場所へと向かった。
そこにいたのは一人の青年。
そして、もう一人は見知った顔だった。
「あれ? ゼルスじゃないか」
俺は怪訝に思いながら、彼らに近づく。
「エリアル……来るな!」
ん、トラブルだろうか。
「こいつはお前の『居場所』とやらの一員か、ゼルス?」
青年がニヤリとする。
「違う! 彼は関係ない!」
ゼルスは慌てたように叫んだ。
やっぱり、なんらかのトラブルっぽいな……。
「困ってるなら、手助けするぞ」
「俺にかまうな! 向こうに行っていろ!」
ゼルスが怒鳴った。
ん、『俺』?
ゼルスのしゃべり方、なんか普段と違うな……。